発表

1A-068

動機づけ困難状況における困難感と感情価の関連の検討

[責任発表者] 赤間 健一:1
[連名発表者] 高木 悠哉:2
1:福岡女学院大学, 2:奈良学園大学

目 的
 すべきことをすべき時にできるよう自分を動機づけることは必ずしも簡単ではない。動機づけ調整研究においては,自身を動機づけるための方略の特定やその影響について研究が進められてきた。しかし,方略によっては特定の状況においてのみ用いられる可能性があることも示唆されている(伊藤・神藤, 2003; 梅本・田中, 2012)。赤間(2013)は動機づけの調整が必要となるような状況の特定を行い,その中でも,やる意味が分からない,他にやりたいことがある,等6つの状況において個人差がみられる可能性,さらに動機づけが困難となる状況が異なる複数のタイプが存在する可能性を示した。本研究では,個人差の原因として状況における感情価が関係しているかどうかを検討することを目的とした。
方 法
調査対象者 大学生242名(男性83名,女性159名,平均年齢18.3(SD=0.8)歳)であった。
調査内容 赤間(2013)のやる気喪失状況リストを使用。23項目,あてはまる,から,あてはまらない,までの5件法と,回答項目を,不快,から,快の5件法のそれぞれに回答。
手続き 講義終了後に配布し,各自のペースで回答を求め回収した。一部調査者はWeb調査により各自のペースで回答を求めた。
結 果
 困難感と感情価の各下位尺度のα係数を求めたところ信頼性が確認できたので尺度得点を算出し,困難感と感情価の相関係数を算出した。その結果,時間的余裕状況以外では有意な負の相関がみられたが,.4程度までの弱いものであった。
 次に,困難感と感情価のそれぞれについて階層的クラスター分析(ward法)を行った。デンドログラムを参考に困難感は3クラスター解を,感情価については4クラスター解を採用した。困難感について各クラスターの特徴から,全体的に困難感が高い高困難度群(CL1),どの状況でも中程度の困難感を感じている中困難度群(CL2),低優先度状況と時間的余裕状況においてのみ困難感が高い低優先時困難群(CL3)と命名した。感情価については,不快が強いが,低優先度状況と時間的余裕状況に対しては快である低優先時快群(CL1),全体的に不快が強い不快群(CL2),中程度の中性群(CL3),全体的に快よりの快群(CL4)と命名した。困難感と感情価のタイプに関連があるかどうかを検討するためにχ2検定を行った。その結果,有意な関連が見られ(χ2(6)=63.46, p<.001),残差分析の結果,高困難度群では,感情価の低優先時快群と不快群が多く,中困難度群では,低優先時快群が少なく,中性群が多く,低優先時困難群では,低優先時快群が少なく,快群が多かった。
考 察
動機づけることに困難さを感じる状況では不快さも感じている傾向はあるものの,その関係は強いものではなかった。このことはもともと各状況そのものに付随する特徴,例えば低自律状況においてはその行動を行う意義を見いだせないことなどが困難さの原因であると考えれば妥当な結果とも考えられる。困難感や不快さを感じる状況に個人差が存在するかどうかについては,困難感では3つ,感情価においては4つのタイプに分類され,困難感や不快さを感じる状況や,その強さについて個人差が存在する可能性が示された。特徴として,単純な困難感や不快さの程度の違いと,低優先度状況と時間的余裕状況といった他に優先したいことがあったり,時間的な余裕がありその行動を必ずしも優先する必要がある状況ではなかったりという,すべき行動の優先度が低い時に感じる困難さと不快さの程度の違いがみられた。感情価については,全般に不快さが強いタイプは少数であり,全般的に強い困難感を感じるタイプと低優先時に困難感を感じるタイプは,低優先時に快を感じるタイプが多く,感情価で快を経験しているタイプは低優先時のみ動機づけることが困難なタイプがほとんどであった。中程度の困難さを経験しているタイプは低優先時のみ快を感じるタイプと感情としても中性を感じるタイプが多く,低優先時以外は動機づけの困難さと不快さはある程度比例しており,状況における不快さを減らすことで困難さを低減することも可能かもしれない。しかし,低優先時については,快であっても動機づけが困難であり,異なるアプローチが必要となるだろう。

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