発表

1A-066

脱感作 vs. 鋭敏化?暴力的ゲーム経験と情報処理−事象関連脳電位と心拍数データによる検討−

[責任発表者] 栗田 聡子:1
[連名発表者] 片山 順一:2, [連名発表者] Annie Lang#:3
1:三重大学, 2:関西学院大学, 3:インディアナ大学

■目的
 青少年による銃撃事件が続発している米国では、暴力的ゲームで遊ぶ習慣が心理や行動に与える影響に関する研究が過去20年以上に渡り継続されている。そこでは現実世界の暴力に対して生理的・感情的・認知的な反応が低下する脱感作(desensitization) という現象に焦点が当てられ、そのメカニズムを生理心理的なレベルで理解しようとする研究は日本でも行われてきた。だが、先行研究の中には、脱感作とは逆に、暴力的ゲームの経験値が高いほど暴力を含む不快な刺激に対して「鋭敏になる」(sensitization)ことを示唆する結果も見られるなど、そのメカニズムが完全に解明されているとはいえない。栗田・福島・室橋 (2013) による情動的画像を使用した事象関連脳電位(ERP)実験の結果は、「脱感作」「鋭敏化」両方の説を否定せず、「脱感作」は主観的感情と関連している後期で顕著に現れる現象であり、初期の注目段階ではむしろ「鋭敏化」している可能性を示唆した。
では、情動的な情報処理中の自律神経系の反応には、暴力的ゲームの影響はどのようにあらわれるのであろうか。本研究では、上記研究と同様に情動的画像を使用し、ERPと心拍数を同参加者から計測した。同時計測ではないが、ERP結果の再現性を確認するとともに、初期段階の注目と情動反応の関連から両指標を解釈して暴力的ゲームで遊ぶ習慣の影響を検討することを主な目的とした。

■方法
 関西の大学から学部生58名がプリテストに参加し、ゲームを含めたメディア嗜好について回答した。その結果をもとに「暴力的ゲーム経験値」(VG)に基づき高群・低群を抽出した。約1か月後、58名の中から26名(高群12名・低群14名:平均年齢19.8歳)が本実験に参加した。

<手続き>
 第1セッションでは、IAPS画像(Lang, Bradley, & Cuthbert, 2008) 36枚(3 Arousal × 2 Valence (positive, negative) を6回反復)を刺激として各6秒間呈示した。画像呈示中の心電図をInput Monitor(ニホンサンテク社製)で計測、同社Map1060で修正して心拍数(BPM)を算出、baseline(画像呈示前の0.5秒間を平均)からの変化値を求めた。心拍数変化は「覚醒」と「注意資源」(注目)の指標として使用した。
第2セッションでは、第1セッションとは異なるIAPS画像120枚(3 Arousal × 2 Valence を20回反復)を3秒ごとに各2秒間呈示。画像呈示中の脳波(ERP)をNuAmps(NeuroScan社製)を用い、32個の電極(両耳朶平均基準)から1kHzで計測した。成分解析では、0.1 − 30 Hz バンドパスフィルタを適用後、各刺激呈示前200 msから1000 ms後の区間を対象に、加算波形を算出した。

■結果
 第1セッションにおいて、ゲーム経験値(VG)高群の心拍はネガティブ画像呈示後に(VG低群よりも)大きく減速し、約2秒間で安定した。対して、ポジティブ画像呈示中は減速を続けた。一方、VG低群の心拍はネガティブ画像呈示中約5秒後まで減速し続けた (Figure 1. 参照)。
第2セッションのERPにおいて、P200とLPP(後期陽性成分)は、全般的にポジティブ画像呈示中よりもネガティブ画像呈示中に小さな振幅を示し、その差はVG高群の方が顕著であった。ただし、ネガティブ画像呈示中の振幅においてVG両群の差はほとんど見られなかった(Figure 2. 参照)。

■考察
 本実験での心拍データは、予測どおり「日常的に暴力的ゲームで遊ぶ参加者らは(遊ばない参加者よりも)ネガティブ画像の呈示後瞬時に注目するレベルが高い(鋭敏)」ことを示唆した。そして、ネガティブ画像呈示後約2秒間で安定した心拍数とネガティブ画像呈示中の小さなLPP振幅は、「暴力的ゲームで遊ぶ習慣による脱感作の現象は、top-down処理に関わる後期に反映されやすい」という仮説を否定しなかった。今後はポジティブ画像呈示中の大きな情動反応と脱感作との関連も含め、さらに包括的な理解を目指す。

詳細検索