発表

1A-062

大学生における地域の音環境の特色と印象

[責任発表者] 松本 じゅん子:1
1:長野県看護大学

目的
 これまで騒音などの音に関する問題が少ない地域においては,音環境は特に調べられてきていない.松本他(2009)は,自然の多い地域で聞こえる複数の音の印象を調べたところ,「懐かしさ」といった特徴が示唆された.しかし,そこで使用された音に関しては,それらがそのような地域の代表的なものであるかどうかは確認されていない.
 そこで,本研究では,自然の多い地域で聞こえる代表的な音の種類を調べ,地域の音環境の特色と音から受ける印象を明らかにすることとした.加えて,他地域で聞こえる音についても調べ,比較検討した.
方法
1.調査対象者
 自然が多い地域の大学に通う大学生138名(男性11名,女性125名,不明2名),平均年齢20.46歳(SD = 1.90,18-31歳).都市部の大学に通う大学生108名(男性36名,女性72名),平均年齢19.04歳(SD = .68,18-21歳).
2.質問紙
 岩宮・岡(1998),岩宮・柳原(1999)を参考に,質問紙を作成した.自然が多い地域の大学に通う大学生に対しては,当該地域ではよく聞こえるが,他地域ではあまり聞くことができない音,他地域ではよく聞こえるが,当該地域ではあまり聞くことができない音をそれぞれ最大5つまで記入させ,それらの音に対してどのように感じるか回答させた.また,当該地域の音環境についても,どのように思うか自由記述により回答を求めた.都市部の大学に通う大学生に対しても同様の質問紙を作成した.
結果と考察
1.自然が多い地域
(1) 自然が多い地域で聞こえ,他の地域では聞こえない音
 延べ229の回答が得られた.最も多い回答は「風の音」であり,『寒い』,『強い』,『怖い』という意見がみられた.次に多く得られた回答は,「鳥の声」であり,『心地よい』という意見がみられた.3番目に多い音は,「川の音」であり,同様に『心地よい』という意見が得られた.
(2)他の地域でよく聞こえ,自然が多い地域では聞こえない音
 延べ176の回答が得られた.最も多い回答は,「車の音」であった(21.98%).『うるさい』,『不快』といった意見がみられたが,当該地域は『静か』であることも報告されていた.2番目に多い回答は,「人の声」であった(18.13%).『うるさい』,『にぎやか』という意見がみられたが,地域の人のにぎわいの少なさからか,『寂しい』という意見もみられた.次に多い回答は,「電車の音」であり(8.79%),『うるさい』という意見がみられた.
(3) 自然が多い地域の音環境に対する意見
 107の回答が得られ,「静か」という意見が非常に多く得られた(Table1).また,「自然の音が多い」といった意見も多く,上記でよく聞こえる音やあまり聞くことができない音とも対応していた.一方,「静寂」という意見が一部でみられた.
 さらに,意見を肯定的または否定的に大まかに分類すると,全体の76.64%の回答が肯定的であった.したがって,自然が多い地域の音環境は概ね肯定的にとらえられており,音環境における問題は少ないものと考えられた.
2.都市部
(1)都市部でよく聞こえ,他の地域では聞こえない音
 延べ175の回答が得られた.最多の回答は,「古紙回収の音」であった(8.57%).『うるさい』,『しつこい』といった意見がみられた.次に多い回答は,「人の声」であり(7.43%),『うるさい』という意見が得られた.
(2)他の地域でよく聞こえ,都市部では聞こえない音
 延べ109の回答が得られた.最も多い回答は,「海の音」と「鳥の声」であった(いずれも12.73%).どちらについても,比較的肯定的な意見がみられた.次に多い回答は,「虫の声」であり(7.27%),肯定的な意見がみられた.
(3)都市部の音環境に対する意見
 77の回答が得られた.「静か」,「うるさい」といった意見が一部みられたが,特徴的な記述は見当たらなかった.意見を肯定的または否定的に大まかに分類したところ,肯定的な意見は全体の36.36%であり,否定的意見はその半分程度であった(18.18%).また,肯定的意見と否定的意見の両方が含まれた回答も同程度であった(18.18%).
 以上の結果より,自然が多い地域で聞こえる音は,自然環境音や住民の生活に密着した音が多く,都市部と比較しても,人工的な音,騒音は少ないといえる.また,音環境としては,全体的に静かと認識されており,多数の対象者が音環境を肯定的にとらえていた.なお,音はヒトの生活とは切り離せないものであるため,そこに生活する人々の健康に少なからず影響を及ぼしていると考えられる.しかし,ここで挙げられた音には,不快に感じると思われる音も含まれており,不快な音も含めて音環境と地域住民の健康との関連を今後検討することも必要と考えられる.

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