発表

1A-060

効果的に“ほめる”には? 個人特性を媒介したほめ言葉と共行動の効果の検討

[責任発表者] 池田 和浩:1
[連名発表者] 川崎 弥生:2, [連名発表者] 西浦 和樹:3, [連名発表者] 小泉 嘉子:1, [連名発表者] 飯島 典子:4
1:尚絅学院大学, 2:専修大学/日本学術振興会, 3:宮城学院女子大学, 4:聖和学園短期大学

 ほめとは、「円滑な人間関係形成のために話し手と聞き手の間で使用されるポジティブかつシンボリックな言語情報」である(池田・小泉・飯島・川崎・西浦、2014)。従来、ほめに関する心理学的な効果は、動機づけの側面から検討されることが多い。Deci, et al(1999)によるメタ分析では、言語的報酬は物質的報酬に比べ動機づけに肯定的な影響を与えることが示されている。しかしながら、Brummelman, et al.(2014)では、自尊心の低い子どもに対する誇張的なほめが、後の動機づけ行動に対して否定的な影響力を与えることを示唆している。つまり、ほめの受け手側の心理特性が、その後の内発的動機に対して媒介的な作用を及ぼすことが推察される。そこで本研究では、ほめの効果に影響力を持つと予測される自尊心および自己愛が、ほめの効果を如何に媒介しうるのかについて実験的な検証を行った。

方 法
実験計画:実験は、ほめ(3:共行動ほめ・共行動・単独)×自尊心(2:高・低)×自己愛(2:高・低)の3要因被験者間計画であった。共行動ほめ条件の参加者は、参加者と実験者が共行動で作業をする途中で、参加者に対してほめを与えられた。単独条件の参加者は、単独で作業に従事するよう求められた。なお、共同条件および単独条件の参加者には、ほめは与えられなかった。
参加者:大学生189名に対して、事前に、(1)Rosenberg自尊心尺度改訂版(内田・上埜, 2004)、(2)自己愛人格傾向尺度(NPI-35)(小西ら, 2006)への回答を求めた。各要因の尺度平均をもとに、参加者を高低に振り分け、実験への参加を求めた。本実験に参加した学生は59名(男性23名、女性36名)、平均年齢は19.8歳(SD = 1.55)であった。
手続き:参加者は、個別に実験に参加した。参加者には「話すことと装飾能力の関係性を測定すること」を目的とした実験であることが教示された。
 続いて、参加者は、15分間クリスマスツリーの飾りつけ作業に従事した。参加者は、3つの条件の作業(共行動ほめ・共行動・単独)のいずれかに振り分けられた。なお、共行動ほめ条件および共行動条件では、2名の実験者のうちの一人が、参加者と同じ机でツリー飾りつけ課題に従事した。また、共行動ほめ条件の参加者には、飾りつけ作業を行う過程で3分おきに5回(開始3分後・6分後・9分後・12分後)、および作業終了後(開始15分後)に1回、できるだけ自然な状況でほめ言葉が実験者から与えられた。時間の計測はストップウォッチで行なわれた。ほめ言葉は、先行研究を参考にしつつ(青木, 2005; Anderson, et al., 1976; Kelly, et al., 2000; 桜井, 1984; 高崎, 2002)、日常生活でも使用される作業に適した言葉を選出した。ほめの種類は、結果へのほめ、過程へのほめ、人物(能力)へのほめの3種類であった。なお、ほめ言葉をより自然なかたちで用いるため、および、条件間の会話量を統制するため、実験者は、予め作成されたリストの中から選ばれたトピックを用いて、参加者としばしば雑談を行った。
作業終了後、参加者は4つの視点から作品を評価するよう求められた(1: 独自性評価 (9項目; 南, 2012), 2: SD法による印象評定 (19項目; 園田, 2006), 3: 展示希望日数, 4: 被閲覧希望者数)。

結 果
 独自性に対する影響を確認するため、ほめ(3)×自尊心(2)または自己愛(2)の分散分析を行った。その結果、共行動作業では自尊心および自己愛の高さが独自性評価を高めることが確認された。作品印象については、実験要因による顕著な影響は認められなかった。
 続いて、ほめと共行動作業が、課題の展示希望日数に影響を与えたかどうかを検証するため、希望日数を対数変換し、ほめ(3)×自尊心(2)または自己愛(2)の分散分析を行った。その結果、ほめを与えない共行動作業条件において、自己愛の低さが展示希望日数を短縮させることが確認された。また、被閲覧希望数についても同様の分析を行った。その結果、共行動ほめ条件で自尊心の高さが閲覧人数を増加させること、自尊心が高い参加者が単独作業に従事した場合、閲覧人数が減少すること、が確認された(図1)。

考 察
本研究は、作業中のほめと作業の共同性が作品評価を変化させる際に、自尊心及び自己愛がどのように媒介するのかについて検討した。実験の結果、自己内で完結する評価(独自性・作品印象)については、自尊心・自己愛の高低による大きな違いは認められないが、他者評価が付随する変数(展示日数・被閲覧人数)については、個人特徴で特異的な変化が生じやすいことが確認された。この結果は、他者評価が付随する自己評価で、ほめや共行動作業が個人の特性によって動機を高めたり低くしたりする現象を実証するものである。

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