発表

1A-059

カテゴリ識別における中心視と周辺視の機能差に関する検討 -自然シーンを中心・周辺視野に時間差を設けて短時間提示したときの正答率の差異-

[責任発表者] 田邊 喜一:1
1:松江工業高等専門学校

シーンに対する人のカテゴリ識別能力について,視野依存性の観点から検討した研究事例は少ない.Larson(2009)は,Window/Scotoma提示パラダイムを用いて,シーンを中心視野と周辺視野に個別に短時間提示し,周辺視の有用性を示した.更にLarson(2013)は,シーンの提示後100ms以内は注意が中心視野に向けられ,その後,周辺視野へと広がるズームアウト仮説を提示した.著者は,Larson(2009)と同様の提示手法を用いて,中心・周辺両視野にシーンを同時に提示すると,50msの提示時間では注意が周辺視に向けられていることを示した(田邊,2017).本稿では,両視野への提示タイミングに時間差を設けたときの両視野の機能差について調査する.
方 法
実験参加者:学生10名(男性,平均年齢:20.7歳)
課題:カテゴリは自然(海岸,海,川,山,森,野原)と人工(台所,居間,寝室,ロビー,レストラン,図書館)の2種類とし,上位レベルのカテゴリ識別実験を計画した.中心視野は半径視角5°の円内,周辺視野は5°~16°の範囲に収まるドーナツ状の領域とした.周辺視野には各シーンから切り出した部分画像を提示した.中心視野には,皮質拡大係数を考慮した上で元画像を圧縮して提示した.図1の上段は中心視野先行提示条件における試行の流れを表す.注視点を3s間提示した後,シーンを中心視野に50ms間提示する.続く50ms間では中心視野をマスクする.次の50ms間では周辺視野に提示する.最後の50ms間では,両視野共にマスク画像を提示する.同図の下段は周辺視野先行提示条件を表す.各提示条件の試行回数は48回であった.提示条件,カテゴリの種類をランダムに組み合わせ,計96回の試行を構成した.
機材:LCDディスプレイ(XL2410T, BenQ製,駆動周波数120Hz)を用いた.DirectXを用いて提示タイミングを制御した.
手続き:視距離は50cmであり,あご台により頭部を固定した.実験参加者のキー押しにより1回の試行を開始した.実験参加者には,両視野共に答えるようにと教示した.各視野に対する注意については特に指示しなかった.提示終了後に,両視野に示された画像がそれぞれ属するカテゴリ名を回答用のボックスより入力させた.事前に練習を16試行課した.
結 果
中心視野と周辺視野に対する正答率をカテゴリ毎に算出した結果を図2に示す.提示条件(中心視野先行提示,周辺視野先行提示)×視野(中心視野,周辺視野)×カテゴリ(人工,自然)の3元配置による分散分析を行った.視野とカテゴリの主効果が有意であった(視野:F(1,9)=12.56, p<.01,カテゴリ:F(1,9)=6.32, p<.05),提示条件の主効果に有意差は認められなかった.また,いずれの要因間においても交互作用は有意ではなかった.シーンの提示タイミングに時間差を設けても,周辺視の優位性(田邊,2017)に変化はなかった.
考 察
中心視野先行提示条件では最初の50ms間は中心視野のみにシーンが提示されるため,中心視野に対する識別処理が先行すると考えられる.その結果,中心視野先行提示条件における中心視の正答率は周辺視野先行提示条件よりも上昇すると予想される.しかし,提示条件間で有意差は認められなかった.シーンの提示開始時点において,周辺視野に対して注意の処理資源がより多く配分されているため,中心視野への50ms程度の先行提示では,中心視野に対するカテゴリ識別処理が十分に進行しなかったのではないかと推察される.
謝辞
本研究の一部はJSPS科研費17k00289の助成によるものである.記して感謝します.
引用文献
Larson, A. M., Loschky, L. C.(2009). The contributions of central versus peripheral vision to scene gist recognition. Journal of Vision,9,10,1-16.
Larson, A. M., et al.(2013). The spatiotemporal dynamics of scene gist recognition. J. exp. psychol: Human Perception and Performance, 40, 2, 471-487.
田邊喜一(2017).自然・人工シーンの識別における中心視と周辺視の機能差に関する一検討.電子情報通信学会論文誌A, J100-A, 1, 66-69.

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