発表

1A-055

性格を手がかりに,人形とその作り手を判断する?

[責任発表者] 植月 美希:1
[連名発表者] 木村 美佐子:2
1:青山学院女子短期大学, 2:函館短期大学

目 的
 ペット(犬)と飼い主(Roy & Christenfeld, 2004),人形とその作り手(木村・植月, 2012)の間には,類似性が認められることが確認されている。Nakajima(2013)は飼い主と犬の顔の一部の領域を隠した刺激を用いた実験を行い,飼い主と犬は目の領域が似ており,これを手がかりに類似性の判断が行われていると説明した。Nakajima(2013)と同様の手続きを用いて検討した結果,目を隠しても人形と作り手を正しくマッチングできることが示された(木村・植月, 2014)。そこで,木村・植月(2016)では,人形の後ろ姿でも作り手を正しくマッチングできるか検討したところ,後ろ姿であっても人形とその作り手を有意に正しくマッチングできることが示された。後ろ姿でもマッチングが可能であるということは,人形と作り手に関しては,顔の物理的な類似性を手がかりとして活用せずに,例えば「明るい人に見える」「この人形を作った人は神経質そうだ」といった性格の印象などを手がかりにマッチングしている可能性が考えられる。そこで本研究では,この可能性について検討した。

方 法
 実験参加者として,東京都内の短期大学生35名(平均年齢19.74,標準偏差1.25;全員女性)と,同大学生28名(平均年齢19.68,標準偏差0.60;男性15名,女性13名)が授業の一環として参加した。このうちの32名が正面の人形と作り手について,31名が後ろ姿の人形と作り手について回答した。
 パーソナリティを5つの因子(外向性,協調性,勤勉性,神経症傾向,開放性)で捉えるBig Fiveのモデルに基づき,これを計10項目で測定するTIPI-J(小塩・阿部・カトローニ, 2012)を予備調査として行い,性格特性の5つの評定値を得た。性格特性の評定値間に有意な相関が見られ,性格特性が良い手がかりになりうるペア(正ペアでは正,誤ペアでは負の相関),相関は見られず中立的なペア,有意な相関は見られるものの性格特性が悪い手がかりになりうるペア(正ペアでは負,誤ペアでは正の相関)を2ペアずつ抽出した(ただし,後ろ姿については,誤ペアで負の相関が見られたペアが1つしかなかったため,中立手がかりの1ペアを加えて実験に使用した)。実験参加者はこれらの2ペアずつの選択肢から構成される3問について,正面と後ろ姿のいずれかについて,二肢強制選択法で正しいと思うペアを選択した。

結 果
 正しくマッチングできた正答者数・率を表1, 2に示した。正面に関しては,性格特性が良い手がかりになる問題で正答者数よりも誤答者数が有意に多かった(χ2 = 9.788, p < .01)。一方,後ろ姿に関しては,良い手がかりの問題で誤答者数よりも正答者数が有意に多く,また,悪い手がかりの問題で誤答者数が正答者数よりも有意に多かった(χ2 = 8.462, p < .05)。

考 察
予備調査で得られた各ペアの性格特性の相関係数から,性格特性が良い手がかりになりうるペア,中立的なペア,悪い手がかりになるペアの3条件を設定したところ,後ろ姿に関しては,良い手がかり条件の正答率が高く,悪い手がかり条件の正答率が低く,人形と作り手から推測される性格特性を手がかりにマッチングをしている可能性が示された。一方,正面についてはこの傾向は得られなかった。したがって,顔がある正面の姿の場合には,顔の類似性といった手がかりを使ってマッチングを行い,顔がない後ろ姿といった場合には,顔の類似性が使えないために性格特性といった手がかりを使ってマッチングを行っていると考えられる。

引用文献
木村美佐子・植月美希 (2016). 人形の後姿を見れば,作り手が分かる? 31st International Congressof Psychology.
木村美佐子・植月美希 (2012). 人形は作り手に似ている? 日本心理学会第76回大会.
Nakajima, S. (2013). Dogs and owners resemble each other in the eye region. Anthorozoös, 26(4), 551−556.
小塩真司・阿部晋吾・カトローニ ピノ. (2012). 日本語版Ten Item Personality Inventory (TIPI-J)作成の試み. パーソナリティ研究, 21, 40-52.
Roy, M.M. & Christenfeld, N.J.S. (2004). Do dogs resemble their owners? Psychological Science, 15, 361−363.

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