発表

1A-054

左右空間と時間的順序表象の関連に内容的つながりは必要か

[責任発表者] 山城 大地:1
[連名発表者] 兵藤 宗吉:1
1:中央大学

目 的
 直接みることのできない時系列順序は心的表象としてどのように捉えられているのだろうか。Santiago, Román, Ouellet, Rodríguez, & Pérez-Azor (2010)は日常の活動内容を表した一連の画像刺激(活動画像シーケンス)を学習させた後,それらの画像刺激に関して左右のキー押しによる順序判断課題を行わせた。その結果,順序判断の基準点よりも“時間的に前”を左側キー,“時間的に後”を右側キーで判断する方がその逆のキー押し条件よりも反応が速くなることを示した。
 しかしながら,Santiago et al. (2010)で得られた結果は活動画像シーケンスが示す活動内容のストーリーの時系列順序を考えたことによって生じたものなのか,あるいは活動内容のストーリーの内容に依存せず,画像刺激の呈示順序を考えた結果生じたものなのか,という2つの可能性が交絡していた。
そこで本研究では刺激が示すストーリーの内容のつながりがなくとも画像シーケンスの呈示順序の影響だけでSantiago et al. (2010)と同様の結果が得られるのかどうかを検討した。
方 法
 実験参加者 右利き26名(男性7名,女性19名,平均年齢20.57歳,SD = 2.30)が実験に参加した。
 実験刺激 「プラモデルを作る」や「電車に乗る」といった活動内容を6枚の画像刺激で表した活動画像シーケンス6種類×2リストをもとに作成された。一連の画像シーケンスの内容的つながりを無くすために,リスト内の活動画像シーケンスの同じ呈示位置にあたる画像刺激6枚を1つの画像シーケンスとして,各リスト6種類ずつ新たに作成した。
 実験デザイン 2(反応側:左側・右側)×6(呈示位置:1-6)の2要因参加者内計画であった。
 手続き 実験は2つのブロックで構成されていた。各ブロックにおいて実験参加者は学習課題と順序判断課題を各画像シーケンスに対して交互に行った。
 学習課題では画像シーケンスが2度呈示された。Santiago et al. (2010) と同様,呈示位置3番目と4番目の間に参照点(●)が呈示された。画像シーケンスを構成する各画像刺激および参照点はそれぞれ2000ms呈示された。
 順序判断課題では,学習課題で呈示された画像刺激が無作為に2度ずつ呈示され,学習課題時に参照点よりも前に呈示された刺激か後に呈示された刺激かをできるだけ速く正確に判断するよう求められた。参加者は右手の人差し指と中指を用いて左右のキー(n, mキー)を押すことで判断を行った。反応が記録された後は500msのブランク画面を挟んで次の試行に移った。また,画像刺激が呈示される前に注視点が500mセ呈示された。ブロック間の違いは順序判断課題における左右のキーの割り当てであった。ブロックの実施順およびリストの使用順は参加者間でカウンターバランスがとられた。
結 果
 実験プログラムのエラーが生じた実験参加者2名のデータを分析対象から除いた。エラー試行および,参加者内の平均反応時間±2SDを超える正答試行を分析から除外した。
 図1は各条件の反応時間を示したものである。反応時間について,2(反応側)×6(呈示位置)の2要因参加者内分散分析を行った結果,反応側の主効果が有意傾向であり(F(1,23)=3.23, p = .084, ηp2 = .12),呈示位置の主効果(F(3.5,80.49) = 7.87, p < .001, ηp2 = .26)および交互作用(F(3.24,74.44) = 10.46, p < .001, ηp2 = .31)が有意であった。
単純主効果検定の結果,呈示位置1(F(1, 23) = 3.90, p = .061, ηp2 = .14),呈示位置2(F(1, 23) = 3.71, p = .066, ηp2 = .14),呈示位置3(F(1, 23) = 9.71, p = .005, ηp2 = .30)は左側キーの方が右側キーよりも反応が速い傾向にあった。一方,呈示位置4(F(1, 23) = 14.97, p = .001, ηp2 = .39),呈示位置5(F(1, 23) = 12.02, p = .002, ηp2 = .34),呈示位置6(F(1, 23) = 11.82, p = .002, ηp2 = .34)は右側キーの方が左側キーよりも反応が速かった。
また,左側条件における呈示位置の単純主効果が有意であり(F(3.39, 77.89) = 15.97, p < .001, ηp2= .41),Holm法による多重比較の結果,左側キーについては,呈示位置1,呈示位置2,呈示位置3は呈示位置4,呈示位置5,呈示位置6よりも反応が速かった。加えて,呈示位置1は呈示位置3よりも反応が速かった。右側条件における呈示位置の単純主効果も有意であり(F(3.68, 84.66) = 3.52, p = .013, ηp2= .13),Holm法による多重比較の結果,右側条件においては呈示位置6が呈示位置3よりも反応が速かった。
考 察
実験の結果,反応側と呈示位置の交互作用が認められ,キー押しの左右空間座標と時系列順序の関連が示された。また,図1に示されるその傾向はSantiago et al. (2010)と類似したものであった。この結果は,先行研究で示された結果が一連の刺激が有する内容的つながりがあってはじめて生じるものではなく,内容的つながりがなくとも刺激の呈示順序を考えるだけで生じることを示している。このことは,我々が時系列順序を考える際,方略の1つとして左右空間表象上に記憶対象を並べている可能性を示唆するものであるといえよう。

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