発表

1A-048

改良型ホイートストーン式ステレオスコープによる奥行知覚

[責任発表者] 太田 雅夫:1
1:金沢大学名誉教授

目 的
 ホイートストーン(Wheatstone)式ステレオスコープを用いて得られる刺激の奥行知覚とブリュースター(Brewster)式ステレオスコープで得られる同一刺激の奥行知覚を比較すると異なるものになる。その理由はホイートストーン式スコープでは鏡が左右反転した刺激像を映すため、鼻側の位置の刺激が耳側の像に、逆に耳側の位置の刺激が鼻側の像に代わる。このような刺激像によって融像がなされる結果、眼に接近するはずの刺激像が眼から遠隔化し、眼から遠隔化するはずの刺激像が眼に接近して知覚されるというシュードスコープ視になると考えられる。従って反転しない像のステレオスコープ視が得られるブリユースター式のものとは異なる結果になる。そこで本研究では改良型のホイートストーン式スコープを試作し、それを使用した奥行知覚実験を実施してその結果としてステレオスコープ視が得られることを検証しようとした。単純に比較することはできないのであるが、この結果をブリュースター式スコープの結果と比較するとともに、併せてホイートストーン式のスコープ(W型)が実際にシュードスコープ視となることを確かめることにした。
方 法
実験装置;改良型ホイートストーン式ステレオスコープと従来のホイートストーン式ステレオスコープ(W型)および半田屋製のブリュースター式ステレオスコープを用いた。改良型ホイートストーン式スコープの構成は右図に示されている。なお、図ではステレオグラム刺激として便宜的に線分刺激を用いた場合が例示されている。
ステレオグラムには半田屋発行の湖崎 克選のNO13絵図を用いたが、刺激の内で比較的小さい蝶と蜂等を削除し、5個の動植物より成る絵図刺激として使用した。
被験者;従来のホイートストーン式スコープによる実験は33名、ブリュースター式スコープによる実験は34名。改良ホイートストーン式スコープを用いた実験は29名であった。
実験期日;従来のホイートストーン式スコープおよびブリュースター式スコープによる実験は2015年12月22日および2016年12月13日、改良ホイートストーン式スコープを使用した実験は、2016年3月8日および同年12月13日に実施した。
結 果
半田屋製の絵図No.13の刺激部分の凹凸順序を基準に、各被験者の奥行知覚を判定し、Kendallの順位相関係数を用いて比較した。表1をみると、改良型ホイートストーン式スコープでは、基準となる順位に対して総ての者が正の相関係数を示しており中央値も0.95とかなり高い値であった。ブリュースター式のものでは総ての者が高い正の相関係数を示し、中央値は改良型ホイートストーン式のものと同程度であったが、ブリュースター式では相関係数が改良型ホイートストーン式のものより高い者が若干多かった(表2)。これに対して従来のホイートストーン式のものではほとんどの者が基準となる順位に対し負の相関係数を、特に3割強の者が高い負の相関を示してシュードスコープ視となり、中央値も-0.48で対照的であった(表3)。
考 察
本研究では絵図を刺激として用い、改良型ホイートストーン式スコープ、ブリュースター式スコープおよび従来のホイートストーン式スコープ(W型)による奥行知覚実験を行い、それらの結果を比較検討した。改良型ホイートストーン式スコープによる奥行知覚ではステレオスコープ視が得られることが確かめられた。この結果はブリュースター式スコープによるものと類似していた。これに対して従来のホイートストーン式スコープを用いた場合の奥行知覚はシュードスコープ視となることが確認された。

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