発表

1A-040

行動決定心的過程による反社会的行動の予測—高校生を対象としたいじめ加害経験・非行への態度・友人非行行動に基づく検討—

[責任発表者] 吉澤 寛之:1
[連名発表者] 吉田 琢哉:2
1:岐阜大学, 2:岐阜聖徳学園大学

 近年,反社会的行動を導く心的過程が注目され,環境が行動決定に影響するモデルにおいて重要な媒介要因に位置付けられている(Dodge & Pettit, 2003)。こうした反社会的行動に至る心的過程を先行研究を概観して整理すると,行動決定の際の意図性や意識レベルが異なる3つの弁別的過程が示唆される。意図的,道具的になされる意識的行動決定(e.g., Crick & Dodge, 1994),衝動的,無計画で統制感が欠如した機能欠陥行動決定(e.g., Raine, 1993),そして自覚なく習慣的,自動的になされる無意識的行動決定(e.g., Berkowitz, 2008)である。
 吉澤他(2015)は3つの行動決定心的過程を包括的に測定する方法を開発し,一般少年,少年鑑別所の初入所者,再入所者の3群の予測性を比較検証した。その結果,各過程の個別の説明力が見出され,なかでも無意識的行動決定の予測力の高さが確認された。吉澤・吉田(2016)は大学生を対象に行動決定心的過程を測定し,非行や問題行動からなる社会的逸脱行為の予測性を検証した結果,機能欠陥行動決定過程の刺激興奮性に加え,無意識的行動決定における独自の有意な予測力が確認された。本研究では,より多様な反社会的行動に対する予測性を検証するため,高校生を対象に,いじめ加害行動,非行への態度,友人の非行行動との関連を検討する。
方 法
対象者 A県内の複数校の男子高校生205名と女子高校生100名(Mage = 16.28,SD = 0.65)を対象に以下を測定した。
測定内容 (1) 意識的行動決定過程:規範意識の高さに対応するルール適切性(吉澤・吉田, 2004)を指標化するため,3葛藤状況ごとに用いる社会的ルールを選択させ,適切性得点が付与されたリストと対応づけて得点化した。吉澤・吉田(2004)の認知的歪曲尺度短縮版(15項目6件法)と,規範的攻撃信念における一般攻撃信念を測定する吉澤他(2009)の尺度を併せて用いた(8項目4件法)。(2) 機能欠陥行動決定過程:原田他(2008)の社会的自己制御尺度における自己抑制(16項目5件法)と,日本版BADS遂行機能障害症候群の行動評価(鹿島, 2003)の質問紙尺度DEX(20項目5件法),共感性や罪悪感の欠如をあらわすCallous-Unemotional特性の測定尺度(Frick & Hare, 2001)の邦訳版(6項目3件法),非行への接近・抑制傾向の測定尺度(近藤, 2004)における刺激興奮性と非行抑制性の下位尺度(18項目4件法)を用いた。(3) 無意識的行動決定過程:反社会的行動への絶対的な潜在態度を測定する紙筆版の反社会性Single Category IAT(SC-IAT; 吉澤, 2014)を実施した。(4) いじめ加害行動:関係性攻撃,非身体的直接攻撃,身体的攻撃の2~3学期間における加害経験を測定した(3項目4件法)。(5) 社会的逸脱行為への態度:非行への態度として,自己影響型(SDDB)と他者影響型(ODDB)の社会的逸脱行為からなる吉澤・吉田(2004)の尺度(14項目)を用いて,各行為の悪質性(5件法)と処罰性(3件法)を軽視する程度を測定した。(6) 友人の非行行動:友人や仲間が逸脱行為を行っている程度を測定する吉澤・吉田(2010)の尺度を用いた(6項目3件法)。
結果と考察
 反社会性SC-IATでは,反社会性・快(快連合)と反社会性・不快(不快連合)の各テストブロックの平均反応時間の相対的な差により潜在的反社会性を指標化した。社会的逸脱行為への態度については,SDDBとODDBそれぞれにおいて,悪質性(軽視)得点と処罰性(軽視)得点の各平均値を乗算し,SDDB傾向得点とODDB傾向得点を算出した。
 行動決定心的過程指標を説明変数,他の指標を従属変数とした重回帰分析を実施した結果(Table 1),いじめ加害行動の3指標に対しては意識的行動決定や機能欠陥行動決定の各過程の有意な影響がおおむね認められた。SDDB傾向に対しては刺激興奮性や非行抑制性の影響が有意であり,ODDB傾向に対しては一般攻撃信念や自己抑制の影響が有意であったことから,吉澤・吉田(2016)と部分的に一貫する結果が得られた。友人非行行動に対してはCU特性の有意な影響がみられ,冷淡さや情緒性の欠如が非行仲間との共存を促していた。
 以上の結果から,潜在的反社会性による有意な予測力は見いだされず,先行研究と比較していじめや非行への態度など軽微な反社会的行動を対象としたことが影響したと考えられる。今後は,再犯性の高い性犯罪などを含めたより多様な反社会的行動を対象とした検討や,各行動決定心的過程の発達軌跡に沿った相互関連や形成要因の解明が求められる。

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