発表

1A-038

家庭裁判所在宅少年のYLS/CMIによる再犯リスク査定

[責任発表者] 嶋田 美和:1
[連名発表者] 森 丈弓:2
1:東京家庭裁判所, 2:甲南女子大学

目 的
 我が国では,Youth Level of Service/Case Management Inventory (Hoge & Andrews, 2002:以下YLS/CMI)の信頼性及び妥当性は,少年鑑別所に収容された非行少年(以下「身柄少年」)を中心に確認されてきた。しかも,その場合の再犯は,少年鑑別所への再入と定義され,少年鑑別所に収容されるほどではないレベルの再犯をYLS/CMIによって予測できるかどうかは十分に検討されていない。それでも,嶋田・森(2015)は,少年鑑別所に収容されない非行少年(以下「在宅少年」)を対象に,在宅事件として再送致されるリスクを予測できることを示唆した。ただし,サンプルサイズは132人と少なく,一般化には不十分であった。そこで,本研究では,嶋田・森(2015)よりもサンプルサイズを増やした上で,在宅少年が再び在宅事件として送致されるリスクをYLS/CMIによって査定することを目的とした。
方 法
1 調査対象者 平成22年から平成26年までにA及びB家庭裁判所(以下「家裁」)に送致された在宅少年213人(男子182人,女子31人,平均16.5歳 (SD =1.6))であった。
2 調査内容
(1)YLS/CMI 家裁調査官による通常の面接調査の中で得られた情報に基づき,YLS/CMIの8領域42項目(非行歴,家庭状況・養育,教育・雇用,仲間関係,物質乱用,余暇・娯楽,人格・行動,態度・志向)をチェックした。
(2)再犯の有無 調査対象者が家裁調査官の調査を受けた後,再び事件(罪種は問わない。)を起こして家裁に送致された場合を再犯と定義した。事件が調査前のもの(いわゆる「余罪」)であった場合には再犯とは見なさなかった。
(3)観測期間 再犯ありの場合,家裁調査官の調査を受けた後,再び事件を起こした日までの日数を観測期間とした。再犯なしの場合,調査後,平成25年3月(A家裁の場合),平成28年3月(B家裁の場合)又はそれまでに20歳の誕生日を迎えた場合には20歳の誕生日前日までの日数を観測期間とした。
3 倫理的配慮 本研究で使用した情報には研究用のIDを設定し,個人を特定できない形で解析を行った。データの使用については,それぞれの勤務先の許可を受けた。
結 果
1 213人中39人が再犯に及んでおり,素再犯率は18.3%であった。カプランマイヤー推定法による累積生存確率は.742(標準誤差.038)で,推定再犯率は25.8%であった。
2 本調査対象者のYLS/CMI合計リスク得点(平均6.2,SD =4.9)は,森他(2009)による身柄少年(平均10.8, SD =5.4)に比べて全体的に低く,分布は低得点側に偏る傾向が見られた。
3 Table 1 に終局処分ごとのYLS/CMIの合計リスク得点の平均と標準偏差(SD)を示した。交通短期保護観察が不処分よりも平均が低くなっている以外は,重い処分を受けるほどYLS/CMIの合計リスク得点が高かった。
4 決定木分析の結果,3つの条件分岐が示された(Figure1)。最低リスク(0点,再犯率0%),低リスク(1-10点,再犯率14.8%),中リスク(11-13点,再犯率31.3%),高リスク(14点以上,再犯率52.3%)の4群に分類できることが示された。
5 決定木分析による分類に基づいて設定した4つのリスク群の生存関数をカプランマイヤー推定法で求めた。Log Rank検定の結果,4群の生存関数に有意差が認められた(p<.001)。
考 察
本研究では,嶋田・森(2015)よりもサンプルサイズを81人増やした上で,在宅少年を対象とした場合でもYLM/CMIを適用できるかどうかを再確認した。その結果,家裁の終局結果が重いほど,YLM/CMIの合計得点が高いことが明らかになった。また,YLS/CMIの合計得点によって4つのリスク群を設定できる上,それによって在宅少年が再び在宅事件として送致されるリスクを査定できることも示された。
 本研究ではサンプルサイズを増やしたとはいえ,依然として200人程度の小規模なものであり,検証を続ける必要がある。その場合,女子少年に特有のリスク要因があるのか,あるいは,リスク要因だけではなく,保護要因を加味した方が予測精度が向上するのかどうかの検討も必要と考える。
引用文献
森丈弓他(2009). 3Gリスクツールによる非行少年のリスクアセスメント(3) 犯罪心理学研究特別号, 47, 126-127.
嶋田美和・森丈弓 (2015). YLS/CMIによる家庭裁判所係属少年の再犯リスク査定 犯罪心理学研究特別号, 53, 76-77.

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