発表

1A-036

日中女子大学生の主体性に関する比較研究

[責任発表者] 友納 艶花:1
1:九州女子大学

目 的
近年,学校教育では,急激な社会変化への対応ができる人材育成への期待が高くなっている。文部科学省(2012)により,大学生が主体的に学習するための知識・技能・態度を獲得することを学士課程教育の質として,その評価及びサポートを行うことを大学に求められている。しかし,これまでの主体性に関する研究においては小学生から中学生を対象とした教育学的視点からの検討が主で,心理学的視点からの検討は非常に少ない(浅海,1999)。また,「大学改革実行プランにおいて,国が目指すべき社会には,高齢者・女性の参画が一層拡大した社会があり,そのため,大学および大学を構成する関係者には,主体的に学び,自らの人生と社会の未来を切り拓く学生の育成が求められる(文部科学省,2012)」と提示されていることから,女子大学生の主体性について検討する必要があると考えられる。
 主体的に学習するという場合には,他者との関係は考慮されず,学習する本人があくまで中心にあって自分のために自分が学習するという意味を持つとし,浅海(1999)は心理学的視点から主体性を「他のもの(周囲の人の言動,自己の中の義務感(こうしなければならないといった考え)にとらわれず,行為の主体である我として自己の純粋な自由な立場において自分で選択した方向へ動き,自己の立場において選択し,考え,感じ,経験すること,また,そういった,心の構えがある状態」と定義している。
一方,大学生の主体性の育成は同じアジア文化圏にある中国も重視している。中国では,学生の主体性を伸ばすことが「素質教育」の一環として国家研究開発プロジエクトに取り込まれている(裴,1990)。そこで,本研究では,日本と中国の女子大学生の主体性について質問紙による調査を行い,比較検討を行う。

方 法
調査対象と調査時期 
平成27年7月から9月にかけて,日本と中国の大学に在籍している女子大学生を対象として質問紙調査を行った。日本の女子大学生255名(平均年齢21.27歳,SD=.06),中国の女子大学生219名(平均年齢21.34歳,SD=.08)のデータを分析対象として採用した。
調査の内容
フェイスシートでは,年齢,学年などを尋ねた。質問紙は,主体性を測定するために浅海(1999)が開発した尺度を用いた。本尺度は,「積極的な行動」「自己決定力」「自己を方向付けるもの」「自己表現」「好奇心」の5因子32項目で構成されたもので,最初は小中学生を対象に研究が行われていたが,その後高校生など対象者を増やして追調査を行い「積極的な自発的行動」「自己決定力」「自己表現」の3つに集約される結果が得られ信頼性と妥当性が検討されている。

 結 果
1.尺度の因子構造の検討
日本と中国のそれぞれの回答から得られたデータを主因子法,プロマックス回転による因子分析を行った。共通性が2.0以上の項目を選択し,固有値1.0以下及び因子付加量.40以下の項目,複数の因子に高い負荷量を示した項目を除外しながら解釈可能性を検討しつつ項目を採用した。因子分析から日本と中国ともに共通した4因子構造が抽出された。各因子の信頼性係数を算出したところ,日本は.66から.78の値が得られ,中国は.64から.82までの値が得られ,信頼性が確認された。
2. 日本と中国女子大学生の主体性の比較
次に,主体性の差を検討するため,二つの国の女子大学生の主体性尺度及び4つの下位因子についてそれぞれ平均値を算出し,t検定を行った。その結果,主体性尺度全体については,t(472)=4.44,P<.001が得られ,日本と中国では有意差が示された。日本の女子大学生が中国より主体性が有意に高いことがみられた。4つの下位因子においてもそれぞれ有意差が示され(「自己判断・決定性」t(472)=-4.03,P<.001,「思考・表現性」t(472)=5.48,P<.001,「自発的行動・対応力」t(472)=5.34,P<.001,「自己挑戦・継続力」t(472)=4.37,P<.001),日本の女子大学生の主体性が高いことが示された。

考 察
主体性の因子構造は,日本と中国ともに「自己判断・決定性」「思考・表現性」「自発的行動・対応力」「自己挑戦・継続力」の4因子が得られた。各因子に含まれる項目が共通していたことから,因子項目上,違いはないことが示され,日中ともに主体性に対する認識が類似していることが考えられる。
そこで,t検定を行い両国の差異の検討を行った結果から,主体性は日本が中国に比べて高いことが明らかになった。本研究結果からは,主体性を育む教育として,教員のかかわりなど教育方法としての研究や主体性教育観を教育の目標としたのは,中国が日本より10年以上遅れているという李霞(2010)の教育学的視点と同じ結果が得られたと言える。そして,心理学的視点からみると,日本の親は受容性が高い一方で,忙しすぎること,親のソーシャルサポートが一般的に他国に比較して低い(右馬ら,1997)ことが,子どもの主体性を高めていることが考えられる。中国は,親の子どもへの教育に対する熱心さ,出世させるための過剰な支配性の高さや過剰な期待と干渉が強く(候,2002),子どもの主体性を妨げていることが推測される。


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