発表

1A-034

多母集団分析による日本語版SATAQ-4の因子構造の検討

[責任発表者] 田中 勝則:1
1:北海学園大学

目 的
 ボディイメージ障害や食行動異常に関連する社会文化的背景要因として,メディアが発する痩身美に関する情報をその個人がどの程度重視し内在化しているか,および痩身へのプレッシャーをどの程度感じているかといった要因が指摘されている (Thompson et al., 2004) 。これらを定量的にアセスメントするツールとして,SATAQ (Heinberg, Thompson, & Stormer, 1995) が開発された。その後,改訂版のSATAQ-3 (Thompson et al., 2004) が作成され,我が国でも山宮・島井 (2012) による短縮版SATAQ-3や浦上・小島・沢宮 (2015) による日本語版の検討が行われている。
一方,Schaefer et al. (2015) は内在化されるボディイメージを痩身および筋肉質,プレッシャーをもたらす対象を家族,友人,メディアと明確化し,新たにSATAQ-4を作成した。SATAQ-4はこれらの5因子を測定する22項目で構成され,信頼性と妥当性が確認されている。スペイン語版 (Llorente et al., 2015) やフランス語版 (Rodgers et al., 2016) も開発済みであり,SATAQ-4は急速に世界水準で広まりつつある。
我が国では,Yamamiya et al. (2016) がSATAQ-4の検討を行っている。日本語版SATAQ-4が原版同様の5因子構造であることが確認されたが,調査対象が女子高校生のみに留まっており,その心理測定学的特徴について検討の余地を残している。そこで,本研究では調査対象の性別や年代を拡大し,多母集団確証的因子分析 (MGCFA) を用いて,日本語版SATAQ-4の因子構造の男女間での均質性を検討することを目的とした。

方 法
 2015年1月にインターネット調査会社 (株式会社マクロミル) を通じ,webによる全国調査を実施した。調査対象は同社に登録されたリサーチ専用モニタ約120万名 (調査時点) であり,web画面上で調査の趣旨に同意した者が回答を行った。なお,調査協力者の男女比および年代構成 (20代~60代) が同等になるように統制を行った。また,過去に発表者が同社を通じて行った研究目的の調査に参加した者は今回の調査対象から除外した。更に,調査時には同一回答者が複数回解答することのないよう,回答制限を行った。最終的に520名のモニタから回答を得た。調査に参加したモニタの平均年齢は男性45歳 (SD = 14) ,女性44歳 (SD = 14) であった。日本語版SATAQ-4には5件法(1「全くそう思わない」-5「とてもそう思う」での回答を求めた。
日本語版SATAQ-4の5因子モデルの男女間での均質性を検証するためにMGCFAを実施した。モデルの評価には,適合度指標としてCFI,RMSEA,SRMRを参照した。なお,モデル間の比較においてはChen (2007) が提唱するこれらの適合度指標の差分の基準を参照した。

結 果
 配置不変モデルにおける適合度指標の値はCFI = .905,RMSEA = .074 (90% CI; .070 - .078),SRMR = .073を示した。したがって,このモデルへのデータの当てはまりが良好であることが確認された。
次に,弱測定不変モデル (各項目の因子負荷量が男女間で均質) ではCFI = .904,RMSEA = .073 (90% CI; .069 - .077) ,SRMR = .075の値が得られた。配置不変モデルと弱測定不変モデルを比較した結果,ΔCFI = .001, ΔRMSEA = .001, ΔSRMR = .002の値が得られた。これらの値はChen (2007) の基準 (ΔCFI ≦ .010 , ΔRMSEA ≦ .015 , ΔSRMR ≦ .030) を満たしていたことから,弱測定不変モデルのデータへの当てはまりの良好さ,および,このモデルの男女間での均質性が確認された。
次に,強測定不変モデル (各項目の因子負荷量と切片が男女間で均質) における適合度指標の値はCFI = .891,RMSEA = .076 (90% CI; .072 - .080) ,SRMR = .076を示した。弱測定不変モデルと強測定不変モデルを比較した結果, ΔCFI = .013, ΔRMSEA = .003, ΔSRMR = .001の値が得られた。これらはChen (2007) の基準 (ΔCFI ≦ .010 , ΔRMSEA ≦ .015 , ΔSRMR ≦ .010) を満たさなかった。

考 察
 調査対象者の性別や年代を拡大し,MGCFAにより日本語版SATAQ-4の因子構造を検討した結果,先行研究で示された5因子構造が支持された。この結果より,日本語版SATAQ-4の因子的妥当性が幅広い調査対象において十分な水準にあることが推察される。
更に,日本語版SATAQ-4は弱測定不変モデルにおいて男女間で均質であることが確認された。この結果は,SATAQ-4で測定される5因子の平均得点の男女間での比較が可能であることを示唆するものである。
一方,今回の結果はweb調査に基づくものである。調査対象者がメディアに親和性が高い存在である可能性があるため,その影響を統制した今後の検討が必要である。

引用文献
Schaefer et al. (2015) Development and validation of the Sociocultural Attitudes Towards Appearance Questionnaire-4 (SATAQ-4). Psychological Assessment, 27, 54-67.
Yamamiya et al. (2016) Psychometric properties and validation of the Sociocultural Attitudes Towards Appearance Questionnaire-4 (SATAQ-4) with a sample of Japanese adolescent girls. Body Image, 19, 89-97.

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