発表

1A-033

箱庭制作者と評定者における心理学的タイプと作品の印象評価

[責任発表者] 佐藤 淳一:1
1:武庫川女子大学

目 的
児童思春期の心理査定において描画や箱庭を用いられることが多いが,それらの評価・理解においては制作者(クライエント)側の要因だけでなく,評価者(セラピスト)側の主観的,印象的評価も重視される。しかし,これまで印象評価に関わる評価者側のパーソナリティ要因は十分に検討されてこなかった。たとえば,これまで箱庭作品の評価において,評価者の性差,臨床経験,心理学的タイプが関与することが報告されている(木村,1985)。しかし,具体的な印象評定の違いまでは明らかにされていないこと,心理学的タイプの判定にQ分類を用いていること,制作者側の心理学的タイプも含めて検討されていないことが課題として残されていた。そこで本研究は,箱庭作品の制作者と評価者のパーソナリティ特性が作品の印象評価にどのような影響を与えているのかを明らかにする。

方 法
箱庭制作の調査は,箱庭制作,心理学的タイプの測定尺度(佐藤,2005)の順で,すべて筆者が個別法により実施した(佐藤,2016)。JPTSは,「外向−内向」(Extraversion-Introversion; E-I), 「思考−感情」(Thinking-Feeling; T-F),「感覚−直観」(Sensation-Intuition; S-N)の下位尺度から構成され,各9項目対,計27項目からなる(佐藤,2005)。調査協力者は臨床心理学を専攻としない大学院生32名(男性16名,女性16名;平均年齢24.3歳)である。一方,箱庭作品の評定者は,箱庭について基本的な研修を受けた臨床心理学専攻修士課程院生18名(女性,平均23.1歳)とした。手続きとして,作品ごとに箱庭評価尺度を用いて評価し,その後JPTSに回答した。各作品の評定については,箱庭作品の印象評定尺度(岡田,1969)12項目,箱庭作品の了解尺度(木村,1985)3項目を用いた。

結 果
制作者の心理学的タイプの判別は,判別不可の人を除くと,E群/I群では12名/17名,T群/F群では4名/28名,S群/N群では13名/16名であった。評価者の心理学
的タイプの判別はE群/I群では2名/6名,T群/F群では3名/5名,S群/N群では4名/4名であった。印象評定尺度得点にバリマックス回転の因子分析を行い,「エネルギーイメージ」因子4項目(α=0.89),「柔らかさ・まとまりイメージ」因子5項目(α=0.83)を抽出した。
次に,制作者と評定者における一般態度を独立変数,印象評定尺度と了解尺度を従属変数とした分散分析を行った(Table 1 参照)。その結果,「エネルギー」「まとまり・柔らかさ」「箱庭作品の了解」については制作者の一般態度の主効果が認められ,E群の制作者がI群よりも有意に高かった(F(3,518)=42.08, p<.001; F(3,518)=5.52, p<.05; F(3,518)=8.81, p<.01)。また,「箱庭作品の了解」については評価者の一般態度にも主効果が認められ,I群の評価者がE群よりも有意に高かった(F(3,518)=6.98, p<.05)。

考 察 
箱庭作品の印象評価には制作者の一般態度が関連し,作品の理解度には制作者とともに評価者の一般態度も関連していることが明らかになった。作品の印象評価においてE群の作品はI群よりも「エネルギー」や「まとまり・柔らかさ」のイメージを高く示した。これは,内的世界の表現をねらいとしながらも玩具を選び砂箱の中に表現するという箱庭制作の行為は外界への心的エネルギーが求められたためと考えられる。一方,作品の了解においてI群の評価者はE群よりも作品を理解しやすいと評価していたのは,I群は内的世界の表現に親和性を抱きやすく,それが箱庭作品の理解しやすさにつながったと考えられる。
(SATO Junichi)

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