発表

1A-029

大学生から見た学生相談機関のウェブサイト(その2)—学生相談機関のウェブサイトの閲覧は利用の促進に効果があるのか—

[責任発表者] 伊藤 直樹:1
1:明治大学

目的
今やほとんどすべての大学の学生相談機関が大学の公式ウェブサイトの中に学生相談機関のページを開設するなどして,利用の促進を働きかけている。しかし,ウェブサイト上の情報を閲覧した学生の利用がどの程度促進されるのか,また,利用の促進に寄与するウェブサイト側の要因は何かという点についてはほとんどわかっていないのが現状である。閲覧による利用促進の効果があまり期待できなければ,大きな労力を割いてウェブサイトを整備する必要性は低いといえるだろう。逆に,利用の促進に効果的であることが明らかになれば,次の段階として,利用の促進に効果的な情報掲載のあり方等について研究を進めることへの証左が得られることになる。
そこで,本研究は,学生相談機関のウェブサイトの閲覧および利用に寄与する要因について,探索的な研究を行うことにより,基礎的な知見を得ることを目的として行われた。

方法
調査時期 調査は2015年10月から2016年2月に行われた。
調査対象者 研究に協力が得られた9大学(国立1,私立8大学)の大学生・大学院生528人を対象とした。
調査内容 質問紙は本研究のために作成され,回答者の性別・年齢・学年,インターネット・スマートフォンの利用の程度,学生相談機関の役割や存在・場所についての理解,学生相談機関のウェブサイトの閲覧の有無,学生相談機関の利用の有無,学生相談機関イメージ,学生相談機関の利用意思をたずねる項目等から構成された。また,調査は原則として無記名式の質問紙による一斉調査によって行われた。
倫理的配慮 明治大学「ヒトを対象とした研究等に関する研究倫理委員会」の審査を受け,承認を得た。調査実施に際して,回答は任意であり成績評価には関係ないこと,個人の回答が公表されることはないことを伝え,書面にて承諾を得た。

結果
分析対象 研究への協力に同意し,回答に不備がなく,学生相談機関の役割を正しく理解していた大学生371人(男性152名,女性219名,1年生212名,2年生56名,3年生83名,4年生20名,平均19.6歳)を分析の対象とした。
学生相談機関イメージ尺度および利用意思尺度の構成
学生相談機関イメージ項目について,因子分析(重み付きのない最小2乗法,プロマックス回転)を行い,先行研究および因子の解釈のしやすさから4因子を抽出し,因子負荷の高い項目から尺度を構成した。構成された尺度名およびCronbachのα係数は,「学生生活全般に対する支援の場」(α=.91),「危機的状況にある学生に対する支援の場」(α=.89),「悩みの解決のための支援の場」(α=.82),「不利益・否定的対応の場」(α=.78)であった。次に,利用意思項目について因子分析(主因子法,バリマックス回転)を行い,先行研究および因子の解釈のしやすさから3因子を抽出し,因子負荷の高い項目から尺度を構成した。構成された尺度は,「心理的問題利用意思」(α=.86),「進路就学的問題利用意思」(α=.91),「全般的利用意思」(α=.82)である。
学生相談機関のウェブサイト閲覧の予測
性別,学年,学生相談機関イメージおよび利用意思を独立変数,ウェブサイトの閲覧の有無を従属変数として,2項ロジスティック回帰分析を行ったところ,統計的に有意なモデルは得られなかった(x2(9)=4.31, p=.890)。
学生相談機関の利用の予測
性別,学年,学生相談機関イメージおよびウェブサイトの閲覧の有無を独立変数,学生相談機関の利用の有無を従属変数として,2項ロジスティック回帰分析を行ったところ,統計的に有意なモデルが得られ(x2(7)=26.00, p=.001),学年(β=.48, OR=1.62, 95%CI[1.15, 2.2], Wald'z=7.65, p=.006),ウェブサイトの閲覧の有無(β=1.21, OR=3.36, 95%CI[1.40, 8.09], Wald'z=7.35, p=.007),「不利益・否定的対応の場」(β=-.84, OR=.43, 95%CI[.24, .79], Wald'z=7.41, p=.006)が統計的に有意な指標として得られた。
考察
学生相談機関のウェブサイトの閲覧の予測について
ウェブサイトの閲覧の予測に寄与する要因は見られなかった。特に悩みを抱えていない学生も含め,学生全体に学生相談機関のウェブサイトを閲覧することを促すことは難しい可能性もある。ただし,本研究で用いた変数以外に有効な変数がある可能性もあり,引き続き検討が必要である。
学生相談機関の利用の予測について
学年が上がるほど,学生相談機関のウェブサイトを閲覧しているほど,「不利益・否定的対応の場」イメージが弱いほど,学生相談機関を利用した学生が多かった。学生相談機関の利用の促進には,学年の低い段階での広報を充実させること,広報の際には学生相談機関のウェブサイトの周知と閲覧の呼びかけにも重点を置くこと,「不利益・否定的対応の場」イメージの改善を目的とした学生への働きかけを積極的に行うことが効果的である可能性が示唆されたといえる。
本研究の限界と今後の課題
本研究により得られた知見は調査対象となった学生の影響を強く受けている。また,変数間の直接的な因果関係について十分にはモデル化されてはいない。本研究で用いられなかった変数を組み込んだ調査を行うことや,実際の学生相談機関のウェブサイトを対象にした実践的な研究を行うことにより,今後も知見を検証していく必要がある。

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