発表

1A-028

写真刺激を用いた可視的変形者に対する印象・評価の検討

[責任発表者] 深谷 悦子:1
[連名発表者] 岩滿 優美:1
1:北里大学

目 的
 可視的変形とは、他者から観察可能な身体外表にある差異を意味する。現在、可視的変形については、当事者の語りを分析する研究を中心に、当事者に焦点を当てた研究が主として行われている(松本、2009)。しかし、現在、当事者以外の人々の可視的変形者に対する印象・評価に関する研究はほとんど行われていない。そこで、本研究では一般人の可視的変形者に対する印象・評価について検討する。

方 法
参加者 参加者は、関東地区の3つの大学に通う20代の大学生・大学院生120名(男性46名、女性74名、平均年齢(SD)=21.92(0.17)歳であった。
写真刺激 可視的変形に関する活動を行っているイギリス国家公認のチャリティ団体Changing Facesが2010年に行ったThe Children’s Face Equality Campaignのポスターに使用されている写真4枚を使用した。写真の提示順序をランダムにすることで、カウンターバランスに留意した。
質問紙 予備調査と関連文献・書籍等から検討を行い、以下の質問項目を独自に作成した。可視的変形者に対する「印象」として「不幸な—幸福な」「非社交的な—社交的な」「近づきがたい—ひとなつっこい」などの12項目(7件法のSD法)、可視的変形者の将来や生活、対人関係などに関する「評価」として15項目(「1=そう思わない」~「5=そう思う」の5件法)とした。また、独自に作成した9項目の質問と自由記述にて可視的変形に関する認識を調査した。また、各写真についての感想を回答するよう求めた。
手続き 無記名の質問紙にて実施した。4枚の写真を質問項目とともに1枚ずつ提示し、各質問項目に回答するよう求めた。その場で質問紙を回収後、可視的変形に関する知識を記載したプリントを用いて情報提供を行うことで、可視的変形者を見たことで感じる恐れやショックを和らげるよう配慮した。なお、本研究は北里大学医療衛生学部倫理委員会の承認を得ている。
分析の概略 可視的変形者に対する「印象」と「評価」の各々の得点の平均値とSDを算出し、それぞれ参加者の性差の影響を検討するため、群(男性・女性)におけるt検定を行った。なお、分析において、回答に1項目以上の欠損があった場合、その参加者を分析から除外した。

結 果
「印象」(男性45名、女性72名)12項目について、t検定を行った結果、すべての項目で男女間の有意差は認められなかった(t(115)≦1.78,n.s.)。また、全ての項目が3.86点以上であった。男女の平均点が共に4点以下だったのは、「親しみにくい—親しみやすい(平均±SD点=3.86±0.64(男性)、3.93±0.86(女性))」のみであった。4.5点以上だったのは、「卑屈な—堂々とした(平均±SD点=4.64±0.72(男性)、4.87±0.80(女性))」、「自信のない—自信のある(平均±SD点=4.52±0.69(男性)、4.65±0.78(女性))」、「感じのわるい—感じのよい(平均±SD点=4.40±0.57(男性)、4.60±0.63(女性))」であった。
「評価」(男性43名、女性65名)15項目について、t検定を行った結果を表1に示す。3項目に有意差が認められ、2項目に有意傾向が認められた。男女の平均点が共に3.5点以上だったのは、「他者や周囲からの視線を向けられやすい」「出会ったときに驚く」の2項目であった。2.5点以下だったのは、「性格がゆがんでいる」「他者や周囲とのコミュニケーションが苦手」「将来のために努力をするべき」であった。

考 察
 「印象」において、「親しみにくい—親しみやすい」の1項目を除いた11項目は、やや良い印象であり、可視的変形者は堂々としており、自信があり、感じが良いという印象が形成される傾向が見られた。「評価」において、可視的変形者が抱える困難として指摘されていた「他者や周囲からの視線を向けられやすい」「出会ったときに驚く」といった項目の得点がやや高く、一部の項目では、男女で得点の差が認められた。本研究では、写真刺激の表情や態勢の統制が取れていないため、今後は表情や態勢がもたらす影響も考慮し、可視的変形者の印象・評価について検討していきたい。

引用文献
松本学(2009)口唇裂口蓋裂者の自己の意味付けの特徴、発達心理学研究、20(3)、234-242

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