発表

1A-025

アレキシサイミア空間からみたADHD・失敗傾向

[責任発表者] 後藤 和史:1
1:愛知みずほ大学

目 的
後藤(2005)は,アレキシサイミア傾向と自己認知との関連について検討するために,大学生を対象として自己概念記述課題(20答法)を実施し,アレキシサイミア傾向のうち空想内省困難は,自己概念記述課題に対して的外れな反応をしやすく,自己認知処理に関する課題そのものに対して困難を示すことに影響していることを見出した。
また,一般的な認知的特性との関連について,後藤・安念 (2015)は,大学生を対象とした質問紙調査を通して,アレキシサイミア空間を視野に置いた分析の結果,感情認識言語化困難と空想内省困難がともに高い領域において批判的思考的態度が有意に低いことを見出した。加えて,空想内省困難は回答態度に対する疑義と関連しており,回答指示項目に正しく回答しない傾向が示唆された。
さらに後藤 (2013)は,注意の狭さ・固着が概念の一部となっている自閉症スペクトラムとの関連を検討するために,AQの概念的妥当性を考慮しながら分析を進めた結果,自閉症スペクトラムが感情認識言語化困難および空想内省困難の双方に正の影響を与えていることを見出した。
これらのことから,アレキシサイミアは全般的な認知的活動の脆弱さに関連していることが示唆される。
そこで本研究は,認知的活動(とくに注意)の脆弱さと関連の深いADHDおよび失敗傾向とアレキシサイミア傾向との関係を検討し,アレキシサイミア空間上に布置することを目的とする。このような自記式質問紙で測定されるメタ認知には全般的な自己効力感が交絡変数として考えられるので,自己効力感の統制を考慮した調査計画とした。

方 法
調査参加者 大学生・専門学校生131名(女性90名,男性40名,未記入1名,平均年齢20.25歳)が調査に参加した。そして以下に記した回答指示項目に正しく答えるなど,回答態度に疑義が認められなかった104名(女性73名, 男性31名)を分析対象者とした。
質問紙構成 それぞれ以下の尺度を用いた:アレキシサイミア傾向:Gotow Alexithymia Questionnaire(GALEX; 後藤・小玉・佐々木, 1999);ADHD傾向:ASRS(Kessler, 2005);失敗傾向:失敗傾向質問紙(山田, 1999);特性的自己効力感:SMSGSE (三好, 2003)。また回答態度を検出するために「ここでは2に回答してください」のような回答指示項目を4項目配置した。
調査手続き・倫理的配慮 Google Formsを用いたウェブ調査を行った。まず,学内情報配信システムや講義授業内で調査への協力依頼を文面で行い,回答フォームのURLを案内した。依頼文およびウェブ調査フォームの1ページ目には,調査の趣旨,調査は匿名で行われること,調査参加および中止の任意性,プライバシー保護,不参加・中止による不利益のなさなどを明記し,調査に能動的に同意した参加者のみが調査質問紙に回答する形式とした。

結 果
指標の処理 各尺度はオリジナルにしたがって尺度平均点を算出したものを分析に用いた。
相関分析 自己効力感を統制した上で,アレキシサイミア傾向と失敗傾向・ADHDとの間の偏相関係数を算出した。その結果,GALEXの2尺度のうち,感情認識言語化困難と失敗傾向(r=.453, p<.01),ADHD傾向 (r=.429, p<.01)との間に中程度の正の相関が認められた。
ADHD傾向がアレキシサイミア傾向に与える影響 独立変数をASRSの2尺度(不注意,衝動・多動性)および交互作用項,SMSGSE(特性的自己効力感,※統制変数),従属変数をGALEXの2尺度(感情認識言語化困難,空想内省困難)とした重回帰分析を行った。その結果,ASRSの不注意尺度が感情認識言語化困難,空想内省困難尺度に対して正の影響を及ぼしていることが見いだされた(それぞれ,β=.311, p<.01; β=.245, p<.10)。
アレキシサイミア傾向が失敗傾向に与える影響 独立変数をGALEXの2尺度(感情認識言語化困難,空想内省困難)および交互作用項,SMSGSE(特性的自己効力感,※統制変数),従属変数を失敗傾向質問紙の総得点および3尺度(アクションスリップ,認知の狭小化,衝動的失敗)とした重回帰分析を行った。その結果,認知の狭小化については感情認識言語化困難が直接的な正の影響(β=.363, p<.01)を及ぼしていたが,総得点,アクションスリップ,衝動的失敗については交互作用項が有意な影響を及ぼしていた。そこで単純傾斜分析を行ったところ,感情認識言語化困難と空想内省困難がともに強い場合,失敗傾向・アクションスリップ・衝動的失敗が強くなる傾向が見いだされた(図1)。

考 察
アレキシサイミア傾向を構成する感情認識言語化困難と空想内省困難がともに強い場合,認知的活動の脆弱さ~失敗傾向~が顕著となることが示唆され,その背景にADHDの不注意症状が関連していることが示唆された。この結果パターンは批判的思考態度の弱さ(後藤・安念, 2015)や自閉症スペクトラム(後藤, 2013)と同様のものであり,全般的な認知的活動の弱さ(あるいは動機づけの低さ)が示唆される。
 これは従来指摘されてきた精神力動的心理療法への不適合(Sifneos, 1972)のみならず,認知的再構成法をはじめ内的情報処理をクライエントに課す認知行動療法においてもアレキシサイミアを留意すべきであると思われる。

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