発表

1A-016

レズビアンに対する女性異性愛者の態度に仮想接触が及ぼす効果

[責任発表者] 堀川 佑惟:1
[連名発表者] 岡 隆:1
1:日本大学

目 的
仮想接触とは,「外集団のメンバーとの社会的交流のメンタルシミュレーション(Crisp & Turner, 2009)」と定義される,社会的マイノリティに対する態度をポジティブにする手続きのひとつである。外集団のメンバーとのポジティブな交流のイメージは,その外集団との「うまくいった交流」をプライミングするものであり,それゆえに「その外集団との交流の成功」と関連する概念—その外集団に対するより強い快の感情,その外集団との将来の接触に対するより小さな不安など—を活性化させるものであると考えられる(Turner, Crisp, & Lambert , 2007)。同性愛者を扱ったこれまでの仮想接触研究では,ゲイ男性との仮想接触を行った異性愛者は行わなかった異性愛者よりも,ゲイ男性に対してポジティブな態度を示すことが実証された(Turner, Crisp, & Lambert, 2007; Turner, West, & Christie, 2013)。本研究では,この仮想接触の効果が,女性であり社会での扱われ方もゲイ男性とは異なるレズビアンを外集団とした場合にも同様にみられるかを検討する。
方 法
 分析対象となった女性異性愛者の参加者50名は,「女性同性愛者」との仮想接触を行う接触群と,「女性」との仮想接触を行う非接触群の2群に,25名ずつ割り振られた。
仮想接触の手続きは,Turner, West, & Christie (2013) を基に構成された。参加者はまず,自身が休日に誰かとしたいことをリストアップした。その後,その自身の趣味を初対面の女性同性愛者(接触群)または女性(非接触群)と一緒にし終えた,という内容の,ポジティブでリラックスした心地良い交流のイメージを行うよう求められた。
この仮想接触の手続きの後,参加者は,これから女性同性愛者と対談してもらう旨を伝えられ,隣の部屋に移動した。そこで,対談で参加者と対談相手とが座るための椅子を2脚,平行に置かれた2枚のパネルの間に向かい合わせで設置することを求められた。この対談は実際には行われず,2脚間の距離はレズビアンに対する行動の指標として用いられた。2枚のパネルの間隔は,(椅子の縦幅)×2+100cmであった。
椅子を設置した後,参加者は質問紙に回答した。質問紙の構成は,(1) 3項目7段階評定(1:非常に反対−7:非常に賛成)でレズビアンに対する態度を測定するATL-J(Horikawa & Oka, 2016),(2)11項目10段階評定(1:あてはまらない−10:あてはまる)のレズビアンに対する集団間不安の尺度(Stephan & Stephan, 1985),(3)フェイスシート,であった。
最後に,対談は実際には行われないことが参加者に伝えられ,質問等が受け付けられた。
結 果
接触群と非接触群との間に,集団間不安の尺度得点,ATL-J得点,椅子の距離それぞれについての有意な差がみられるかを調べるため,t検定を行った(Table)。接触群は非接触群よりも,集団間不安の尺度得点が有意に低く(t=2.24, p=.03),椅子の距離が有意に狭かった(t=2.27, p=.03)。しかし,ATL-Jの得点に有意な群間差はみられなかった(t=0.32, n. s.)。
考 察
レズビアンとの仮想接触によって,レズビアンに対する集団間不安が低減され,行動がポジティブになるという,ゲイ男性との仮想接触と同様の効果がみられた。ただし今回の実験デザインでは,実験群のみが仮想接触段階でレズビアンについて考えていたため,単なるカテゴリプライミングあるいは要求特性による解釈の可能性を棄却できない。今後,単に外集団のことを考える群を加え,追試を行う必要がある。
一方,レズビアンに対する態度については,2群間の有意差はみられなかった。その理由として,両群の参加者ともに「これから女性同性愛者と対談する」というレズビアンとの接触予期を受けたことにより,レズビアンに対する顕在的態度が大きくポジティブに歪んだことが考えられる。そのため,今後,本研究のパラダイムに接触予期のタイミングの操作を加えた検討を行うことが求められる。
引用文献
Crisp & Turner (2009). Am. Psychol., 64, 231-240. / Horikawa & Oka (2016). Int. J. Psychol., 51, 1005. / Stephan & Stephan (1985). J. Soc. Issues., 41, 157–175. / Turner, Crisp, & Lambert (2007). Group. Process. Interg., 10, 427-441. / Turner, West, & Christie (2013). J. Appl. Soc. Psych., 43, E196–E205.

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