発表

1A-015

新しい育種技術(NBT)に関する説明資料が消費者の態度に及ぼす影響

[責任発表者] 田中 豊:1
[連名発表者] 笹川 由紀#:2, [連名発表者] 佐々 義子#:2
1:大阪学院大学, 2:くらしとバイオプラザ 21

目 的
 近年、NBT(New plant Breeding Techniques)と呼ばれる植物の新たな品種改良技術(育種技術)の研究開発が、世界中で進められている。NBTにはいくつか利点があり、また遺伝子組換え農作物(GMO)と異なり、最終的な農作物には理論上、遺伝子の改変のために使用した遺伝子が残らない特徴がある。NBT利用農作物の安全性については、科学的には従来農作物と同等であると考えられる。しかしながら消費者は、遺伝子の改変を伴う技術であるNBTに対して、GMOの場合と同様の不安や否定的感情を示すと予測される。これまでのリスク領域の研究において、リスク認知などの認知的要因と、信頼や不安などの感情的要因とが、科学技術や遺伝子組換え食品などに対する消費者の受容に影響を及ぼすことが報告されている(Tanaka, 2004; 2013)。本研究では、(1)消費者向けの分かり易い説明資料を用いて説明することにより、NBT利用農作物に対する消費者の理解が深まり、また受容度が向上する、(2)上述の効果は、説明を行った直後だけでなく、数ヶ月後においても持続する、(3)リスクに対する基本的な考え方であるリスクリテラシーに関する情報を提供した上で、NBT利用農作物に関する情報を提供することにより、NBT利用農作物に対する消費者の理解がより深まり、受容度がより高まる、という3つの仮説を検証することを目的とする。

方 法
実験参加者 首都圏在住の20代~40代で高校生以下の子どもを持つ主婦100名を、調査会社のモニター登録者から抽出し、募集を行った。
手続き 実験参加者100人を、第1群30名、第2群35名人、第3群35名にランダムに振り分けた。第1群は統制群であり、NBTや科学技術とは無関係な講義を50分間行った。第2群では、NBT利用農作物に関する説明資料を利用した講義を50分間行った。第3群では、まずリスクリテラシーに関する講義を15分間聴いた後で、NBT利用農作物に関する説明資料を利用した講義を35分間行った。なお、NBT利用農作物に関する講義については、NPO法人くらしとバイオプラザ21の主席研究員が講師を務めた。
質問紙 実験の前後、および追跡調査におけるNBT利用農作物に対する態度変化を測定するため、受容に関係する各因子(リスク認知、ベネフィット認知、信頼、生命倫理観、不安、怒り、個人的受容、社会的受容)に基づく質問項目を各因子につき3項目ずつ設定し、さらに「講義の分かり易さ」および「説明内容の十分さ」の2項目を加え、合計26項目の質問紙を作成した。各質問項目について、リッカート尺度(6点尺度)を用いて測定を行った。
追跡調査 本実験から3ヶ月後に、質問紙と同一の質問項目を用いて、Webによる追跡調査を実施し、各群における情報提供の持続効果について検証した。

結 果
 まず今回の説明資料を利用した説明に対する参加者の評価として、度数分布表の結果から、分かり易く、聞きたい内容が十分に盛り込まれていた、と多くの者が評価していた。次に、各因子の因子得点を用いて、群(第1群、第2群、第3群の3水準)×段階(情報提供前、情報提供直後、情報提供3ヶ月後の3水準)の2元配置分散分析(対応のない因子と対応のある因子)を行った。その結果、全ての因子について、群と段階の間で交互作用に有意差が見られた(p<.05)ため、群についての単純主効果の検定、および段階についての単純主効果の検定を行った。その結果、今回の説明資料を用いて説明を行ったことにより、全ての因子について、参加者の態度は肯定的な方向へ変化し(p<.05)、またこの効果は、説明を行った直後だけでなく、3ヶ月後においても持続している(p<.05)ことが示された。以上の結果より、第1の仮説と第2の仮説は検証された。一方で、リスクリテラシーに関する情報提供の効果は示されず、第3の仮説は検証されなかった。これらの内、個人的受容因子(食べてもよいか)に関する結果をFigure 1に示す。

考 察
 対象が一般の消費者であっても、彼らにとって本当に分かり易い情報を提供すれば、消費者はNBT利用農作物について理解し、より肯定的な態度を取るようになり、しかもその態度はある一定の期間持続し得ることが示された。リスクリテラシーに関する説明効果が示されなかった理由として、抽象的な概念を含む内容を、かなり短時間で説明しようとしたため、参加者をかえって混乱させ、むしろマイナスの影響を及ぼした可能性や、単純にNBT利用農作物に関する説明時間の長さが効果の違いを生み出した可能性も考えられる。この点については今後の課題として残された。

謝 辞
本研究は、平成28年度内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」の助成により実施された。

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