発表

1A-007

Dark Triadの短期配偶は配偶者保持行動に媒介される

[責任発表者] 喜入 暁:1
[連名発表者] 越智 啓太:1
1:法政大学

目 的
 社会的に望ましくないパーソナリティの集合体であるDark Triadは,マキャベリアニズム,ナルシシズム,サイコパシーから構成され,冷淡さや他者操作性がその中核である(Paulhus & Williams, 2002; Furnham et al., 2013)。しかし,進化的観点からは,Dark Triadは繁殖において有利な戦略をとる可能性が指摘されている(Jonason et al., 2009)。繁殖のための戦略は,単純化すれば,資源を子どもの生殖に割り振るか,子どもの養育に割り振るかというトレードオフにある。このように,資源の割り当ての個人差を,遺伝的基盤と幼少期の環境的キューによる進化的な戦略の個人差であるとして理論化したものは,生活史理論(life history theory: LHT)と呼ばれる(Figueredo et al., 2006)。生活史理論は,戦略の個人差をK-factorという一次元で捉える(Rushton, 1985)。次元の両極は,早い生活史戦略(fast-LHS)と遅い生活史戦略(slow-LHS)である。遺伝的基盤に加えて,将来の見通しが立つ安定的な環境に置かれた場合には戦略の個人差はslow-LHS,具体的には,長期的な計画性や他者との協力などが有利な行動パターンである。一方で,将来の見通しが立たない不安定な環境は,戦略の個人差としてfast-LHS,具体的には,衝動的で自己中心的行動が有利である。先の繁殖のための戦略は,生活史理論に照らせば,slow-LHSは長期的配偶により少数の子どもを確実に生存させる(養育する)ことが,fast-LHSは短期的配偶により多くの子どもを生殖することが,繁殖可能性を高める適応的な行動パターンである(Figueredo et al., 2006)。
 一方で,Dark Triadが高いものは低いものに比べて配偶者保持行動をより行なうことが示されている(Jonason et al., 2011)。配偶者保持行動は,パートナーとの関係維持のための行動である(Buss et al., 2008)。したがって,短期配偶を特徴とするというDark Triadの知見と矛盾するように見える。
 しかし,Dark Triadの配偶者保持行動は,長期的な関係維持というよりもむしろ,生殖を行なうための一時的に強力な束縛の可能性が示唆されている(Kiire, 2017)。これによれば,生殖を重視する,特に男性でDark Triadが高い者にとって,父性不確実性の問題は特に大きな適応課題である。そのため,過剰な配偶者保持行動を行ない,一時的であっても強力なパートナー関係維持を行なう反面,比較的短期に関係が終了する可能性が考えられる。そして,このことがDark Triadの短期配偶を促進している可能性が考えられる。これらを踏まえ,本研究では,Dark Triadが高い者ほどこれまでのパートナー数が多いことを示し,その関連を配偶者保持行動が媒介するかどうかを検証する。
方 法
 参加者 大学生540名(女性313名,Mage = 18.84, SD = 1.41)を分析に使用した。
 測定 参加者は,Short Dark Triad(SD3; 下司・小塩,2017; 27項目,7件法),配偶者保持行動目録日本語版(寺島, 2010; 38項目,4件法)に回答し,これまでのパートナー数を報告した。それぞれ,平均得点を尺度得点とした。なお,参加者は,本研究では用いない尺度も含めて142項目に回答した。
結 果
 進化的観点において,性別と年齢は注意深く扱う必要がある。そのため,本研究では,すべての分析において性別と年齢を統制変数として投入した。はじめに,SEMにより,パートナー数を目的変数,Dark Triad因子を説明変数とした回帰分析を行なった。分析の結果,有意な正の効果が示された(b = 1.55**)。次に,この関連を配偶者保持行動因子が媒介するかどうかを5000回のブートストラップ法により検証した。分析の結果,Dark Triadからパートナー数への効果は配偶者保持行動に完全媒介された(χ2(39) = 177.29, p < .001; CFI = .922; SRMR = .046; RMSEA = .081, 90% CI = [.069, .093]; Fig. 1)。
考 察
結果より,Dark Triadはパートナー数と正の関連を示し,この関連は配偶者保持行動に媒介されることが示された。これらのことから,Dark Triadの強力な配偶者保持行動が比較的短期的にパートナー関係を終了させ,それに伴いパートナー数が増える可能性が示された。しかし,本研究の知見からでは,Dark Triadの強力な配偶者保持行動が実際に関係の終了に影響しているかどうかは不明瞭である。また,生殖のためには正式な交際宣言をしたパートナーの人数ではなく,性関係を持った人数が重要である。そのため,今後の研究では,性関係を持ったパートナー数と,配偶者保持行動の結果に着目することが必要であると考えられる。
主要な引用文献
Buss et al. (2008). Personality and Individual Differences, 44, 322-334.
Figueredo et al. (2006). Developmental Review, 26, 243-275.
Furnham et al. (2013). Social and Personality Psychology Compass, 7, 199-216.

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