発表

1A-006

自己高揚的呈示に対する反応 −セルフ・モニタリングとコミュニケーション・スキルに注目して−

[責任発表者] 野口 直樹:1
[連名発表者] 三宮 真智子:1
1:大阪大学

目的
 意図的な印象操作行動である自己呈示の中でも,自己の価値の高さを示そうとする行為は自己高揚的呈示と呼ばれ,我が国においては否定的に捉えられやすい言動とされる。しかし,自分自身の自己高揚的呈示に嫌悪感を抱いている場合は呈示者を否定的に評価しやすい一方で,自身の自己高揚的呈示に受容的な場合は,共感的な反応を示すことが明らかになっており(酒井,1996),日常的な会話場面で他者から自己高陽的呈示を受けた場合の反応は,被呈示者の様々な個人特性が影響すると考えられる。
本研究は,自己高揚的呈示に対する反応に影響を及ぼし得る個人特性として,セルフ・モニタリング傾向とコミュニケーション・スキルに注目する。石原・水野(1992)によれば,セルフ・モニタリングとは対人場面において状況や他者の行動を観察し,自己表出や自己呈示が社会的に適切かどうかを考慮し自分の行動を統制することを指す。またコミュニケーション・スキルとは,言語・非言語による直接的コミュニケーションを適切に行う能力を指す(藤本・大坊,2007)。これらは他者の行動に対する捉え方や感情的反応に大きく影響し,適切なコミュニケーションを促す個人特性であると言える。そのため,セルフ・モニタリング傾向が強い,またはコミュニケーション・スキルが高いと,否定的な感情反応を抑え適応的なコミュニケーションに備えると考えられる。

方法
調査対象者
大学生及び大学院生42名(男性17名,女性25名,平均年齢18.76歳,SD=0.66)であった。
使用尺度
・対他者用自己高揚的呈示反応尺度(酒井,1996):全20項目で3因子構成(批判的分析・感情的動揺・共感)。「1:当てはまらない~5:当てはまる」の5件法。
・改訂セルフ・モニタリング尺度(石原・水野,1992):全13項目で2因子構成(他者の表出行動への感受性・自己呈示の修正能力)。「1:全くそうではない~6:非常にそうである」の6件法。
・ENDCOREs(藤本・大坊,2007):全24項目で6因子構成(自己統制・表現力・解読力・自己主張・他者受容・関係調整)。「1:かなり苦手~7:かなり得意」の7件法。
手続き
場面想定法によって,他者が自己の価値の高さを示すような発言を行っているシナリオを想起させた後,各尺度への回答を行った。
結果
 改訂セルフ・モニタリング尺度の2因子及びENDCOREsの6因子に関して,平均値をもとに低群と高群に分け,対他者用自己高揚的呈示尺度の3因子をそれぞれ従属変数とするt検定を行った。その結果,「無理している,見栄を張っている」などの批判的分析に関して,改訂セルフ・モニタリング尺度における自己呈示の修正能力の高群,またENDCOREsにおける自己統制の高群が,それぞれ低群より平均値が有意に高くなった(自己呈示の修正能力:t(40)=2.44,p<.05 自己統制:t(40)=2.14,p<.05)。感情的動揺や共感においては,セルフ・モニタリングおよびコミュニケーション・スキルによる違いは見られなかった。
考察
 本結果から,自己呈示の修正能力や自己統制という,自分の感情や言動をコントロールする能力が高いほど,自己高揚的呈示に対して批判的に捉えるということが明らかになった。本来このような能力は,抱いた否定的な感情の抑制や,そのまま表出することが不適切な感情を制御するために働くものであり,批判的な捉え方そのものが強くなるという結果は仮説に反するものであった。この理由として,自己高揚的呈示に関する規範を強く抱いていることが影響していると考えられる。自己呈示の修正能力や自己統制のスキルが高い人は,「自己高揚的呈示は否定的に捉えられ不適切である」という強い規範を抱いている可能性がある。そのため,他者の自己高揚的呈示に対して,規範に反した不適切な行動という批判的な捉え方が強くなると考えられる。

引用文献
藤本学・大坊郁夫(2007). コミュニケーション・スキルに関する諸因子の階層構造への統合の試み パーソナリティ研究,15,347-361.
石原俊一・水野邦夫(1992). 改訂セルフ・モニタリング尺度の検討 心理学研究,63,47-50.
酒井恵子(1996). 自己高揚的呈示の否定的側面に対する反応の個人差 心理学研究,67,314-320.

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