発表

3C-094

職場パワーハラスメント尺度の新規開発

[責任発表者] 鄧 科:1
[連名発表者] 津田 彰:2, [連名発表者] 仁位 百雲子:2, [連名発表者] 山廣 知美:2, [連名発表者] 入江 正洋#:3
1:久留米大学比較文化研究所, 2:久留米大学, 3:九州大学健康科学センター

目 的
 パワーハラスメント(以下、パワハラと略)が社会問題化している。解雇問題や自己都合退職といった他の職場問題を抑えてトップとなっていることからも明らかである。
厚生労働省のパワハラ定義によれば、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義させている。しかしながら、どのような行為、状態、態度がパワハラに相当するのかなど具体的ではないことより、パワハラの認識について実態的な検討が急務となっている。また、パワハラの実態についての研究も決定的に不足している。これらのことにより、労働者がパワハラを受けた事実とパワハラを受けたことに対する認識性が必ずしも一致せず、早期発見を促すことが実施しにくい。
そこで本研究では、厚生労働省のパワハラ定義に従い、パワハラの認識性と体験を両方測定できるパワハラ尺度を作成し、妥当性と信頼性を検討することにした。

方 法
一般企業、病院、市役所など複数の企業の労働者 460 名(男性 195 名、女性 265 名、年齢 41.8±10.9 歳)を対象とした。パワハラ資料や判例などから、パワハラに関係する36項目を試作した。基準関連妥当性を検討するためには、Negative Acts Questionnaire-Revised 日本語版(以下、NAQ-Rと略)(津野ら,2010)を用い、人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高めることのできる社会組織の特徴(パットナム,1993)を測定するソーシャル・キャピタル(以下、SCと略)質問票を利用して構成概念妥当性を検討した。

結 果
パワハラ尺度の作成には、項目分析の結果、削除項目がなかった。そして、因子数を固定せずに最尤法による探索的因子分析を行い、固有値1を超えた基準に沿ったところ、3因子解となった。全項目のうち、因子負荷量が0.4 以下となった項目を削除し、残りの項目を用いて、再度3因子を固定し、最尤法により確証的因子分析を実施した。
結果、表 1 に示めしたように、パワハラ行為12項目とパワハラ状態4項目およびパワハラ態度2 項目で構成された3因子18項目が得られた(GFI=0.887、AGFI=854、CFI=962、RMSEA=0.074)。各因子の内的一貫性の値も妥当である。
パワハラ尺度とNAQ-R日本語版との基準関連妥当性を検討するために、ピアソンの偏差積率相関係数を算出した。パワハラ尺度因子得点とNAQ-Rとの間には、総得点(r=0.580)とパワハラ行為(r=0.583)、パワハラ状態(r=0.456)、パワハラ態度(r=0.432)において、 NAQ-R日本語版と有意な相関が得られた(いずれも p<.001)。また、パワハラの回答より、過去半年間にパワハラ体験のある者(405名)とパワハラ体験なし者(51名)を分類し、その結果、前者のSC得点は後者と比較して、有意に低かった [t(454)=9.47、p<.001]。
表1 パワーハラスメント尺度

考 察
今回作成したパワハラ尺度を評価するとともに、その体験についても同一人物に同時に測定できる点でユニークである。また、パワハラ行動をパワハラ行為と状態および態度の認識性の3つの側面から評価可能な尺度である。本尺度の信頼性と妥当性にも問題がなかった。信頼性は項目の内的一貫性より、パワハラ体験者はNAQ-Rと相関したことと、SC得点が低いことから、パワハラ尺度が開発されたことにより、社内関係に着点する必要性が示唆された。管理者はこれらの行為を防止するよう職場に働きかけ、パワハラ防止に向けた職場環境の改善に向けての活用が期待できる。また、パラハラの体験とパワハラ認識性を両側面で測定ができることから、今後現場では一定の判断基準として期待できる。
本研究は,平成 26−27 年度日本学術振興会科学研究費助成基盤研究(C)パワー・ハラスメントに関する標準的チェックリストの作成とその応用に関する研究」(研究代表者:入江正洋,課題番号:24500819)の助成を受けた。

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