発表

3C-092

職場パワーハラスメントの認識性と体験の年代差,職種差

[責任発表者] 仁位 百雲子:1
[連名発表者] 津田 彰:1, [連名発表者] 鄧 科:2, [連名発表者] 山廣 知美:1, [連名発表者] 入江 正洋#:3
1:久留米大学, 2:久留米大学比較文化研究所, 3:九州大学健康科学センター

目 的
 職場におけるパワーハラスメント(以下,パワハラ)は,メンタルヘルス悪化だけでなく,職場環境を悪化させ,企業全体の生産性や経営にも関わる雇用管理上の問題にもなりうる(入江,2015)。国は,パワハラの概念を正式に定め,指針などを整えつつある(厚生労働省,2012)。
一方で,都道府県労働局等に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は,平成24年以降増加の一途をたどっている(厚生労働省,2016)。厚生労働省の実態調査(2013)では,パワハラの相談が減らない理由として,従業員のパワハラに対する理解の不足や捉え方の複雑化などが指摘されているが,実証的研究は決定的に不足している。
パワハラは職場内の優位性が背景にあると考えられており(厚生労働省,2012),年齢は職位や勤続年数などの優位性と関連する。パワハラは上位者から下位者への行為が大半を占めていることより(厚生労働省,2013),パワハラに関連する行為や状態,態度に対しての認識性には年代差があると考えられる。また,パワハラの認識性と体験が職種間で異なるのかは明確ではないが,開発部門は非開発部門に比べ,職業性ストレスが高いと報告されている(下光,2008)。
そこで本研究では,年代と職種に焦点を当て,パワハラの認識性と体験の実態について調べた。
方 法
1.調査協力者:複数の企業(一般企業・病院・市役所など)の勤労者384名(男性172名,女性212名,年齢44±25歳)。
2.質問紙:1)個人的属性:年齢・職種など8項目。分析に際して、年齢を20代以下・30代・40代・50代以上の4群に,職種を生産技術系・事務営業系・その他の3群に分けた。2)職場パワーハラスメント尺度:「行為」「状態」「態度」の3因子,18項目の質問紙である(鄧・津田他,2016)。パワハラの該当性・関連性(「パワハラの認識性」と称する)と過去6ヶ月間の言動の体験の有無(「パワハラの体験」と称する)について3段階で回答を求めた。得点が高い値であるほど,「パワハラの認識性」ならびに「パワハラの体験」が高い。
3.分析手続き:年代と職種を独立変数,職場パワーハラスメント尺度の各因子得点を従属変数とした一元配置の分散分析を行った。
結 果 と 考 察
1.パワハラの認識性と体験の年代差
 分散分析の結果,パワハラの認識性得点のうち,行為(F(3,382)=5.64,p<.01,η2=.040)と状態(F(3,382)=3.83,p<.05,η2=.030)に有意な主効果が認められた。対比較検定により,50代以上群の行為に対するパワハラの認識性は 20代以下群と30代群に比べて有意に低値を示し,状態に対するパワハラの認識性は他の3群に比べて有意に低値であった。
この結果は,50代以上の就労者ほど,過大・過少な要求,精神的な攻撃といった行為や,部下が上司の顔色を見て行動,上司に部下が萎縮といった状態がパワハラに値すると認識していないことを明らかにした。
パワハラの体験については,各因子得点に有意な年代差が認められなかったことから,年代の優位性だけでは,パワハラ発生の背景として説明がつかないことが明らかとなった。今後,パワハラが起りやすい個人的属性や職場状況について,多面的に検討する必要がある。また,過去6ヶ月のパワハラの体験に関わらず,パワハラの認識性に相違があることが示唆された。
50代以上の就労者は,パワハラに匹敵するような行為や状態を体験してもパワハラと捉えにくいと考えられる。この世代は,高度成長期に生まれ,バブル期以降に成人し,好況期に育ってきている。各世代の社会状況の違いが,働き方や就業意識の世代間の違いに大きく影響していると考えられている(厚生労働省,2011)。本研究の結果は,50代以上の上位者が下の世代に対して,無自覚にパワハラを行っている可能性を示唆している。
2.パワハラの認識性と体験における職種差
 パワハラの体験得点のうち,状態に有意な主効果が認められ(F(3,358)=9.59,p<.001,η2=.051),生産技術系群が事務営業系群とその他群に比べて有意に高値であった。生産技術系の職場では他の職種に比べ,部下が上司に委縮する職場状況を多く体験していることが明らかとなった。苦痛を与える言動の有無に関わらず,先述の職場状況が起こりうることが示唆された。
パワハラの認識性については,各因子得点に有意な職種差が認められず,研究開発職のパワハラへの理解が他の職種に比べ不足しているとは考えにくく,職種の相違がパワハラの認識性の相違に関係しないことが示唆された。

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