発表

3C-091

実走場面での動作本位反応の生起メカニズムに関する実験的研究(1)—確認・合図とハンドル操作との差分に着目して—

[責任発表者] 木村 年晶:1
[連名発表者] 今井 靖雄:2, [連名発表者] 森泉 慎吾:3, [連名発表者] 湯本 麻子#:4, [連名発表者] 太子 のぞみ:3, [連名発表者] 中井 宏:5, [連名発表者] 蓮花 一己:2
1:同志社大学, 2:帝塚山大学, 3:大阪大学, 4:富士通研究所, 5:東海学院大学

目 的
促迫した場面で動作の一部が適切な認知を経ないまま突出する現象を動作本位(優位)反応(Drake,1939-1940)という。Maruyama & Kitamura(1961)はこの理論をもとに速度見越し検査を行い,事故多発者は認知的能力よりも動作的能力が優位となる傾向を明らかにした。しかしながら,この動作本位反応については,ドライバーが実際に置かれている状況の影響を強く受けると考えられる。つまり,通常運転時には認知優位のドライバーであったとしても,促迫の程度が高い状況であれば,動作優位のドライバーと類似した行動パターンが表出する可能性がある。この点について実証的に検討した研究はない。
そこで本研究では,実走場面において促迫状況を実験的に設定し,その際の運転行動を通常状況と比較することを目的とした。もし,動作本位反応が見られるなら,通常条件より促迫条件において,確認(ミラー確認,目視)や合図(指示器)よりハンドル操作が早く生じるだろう。
方 法
実施場所と日時 平成28年11月に京都府京田辺市にある山城田辺自動車学校にて実走実験を実施した。
参加者 19歳から22歳までの男子大学生10名(平均年齢20.50歳, 標準偏差0.85歳)を対象とした。
走行コース 教習所周辺の一般道路を使用した。片側2車線の往復路を2周,全長は約2km,所要時間は約20分であった。
実験機材 ドライブレコーダー(川崎興業株式会社製)を使用し,「顔」「前方」「速度計と時刻」の映像を記録した。
分析 記録された映像をもとに,車線変更の際の(1)バックミラー(2)サイドミラー(3)目視の確認開始時間(4)指示器の合図開始時間(5)ハンドル操作の開始時間を算出し,ハンドル操作開始から±5秒内の行動を分析対象とした。
行動指標 確認と動作の時間差として,「バックミラー」「サイドミラー」「目視」のそれぞれの「確認開始時間」と「ハンドル操作開始時間」との差分を,合図と動作の時間差として,「合図(指示器)開始時間」と「ハンドル操作開始時間」の差分をそれぞれ算出した。符号が負の場合,動作より確認・合図の方が(認知優位),符号が正の場合,確認・合図より動作の方が(動作優位),それぞれ早いことを意味している。
手続き 参加者には,信号を目印に8セクションに分けたコースを2周走行することを求めた。車線変更時において,ドライバーの好きなタイミングで車線変更を求める条件(通常条件)とすぐに車線変更を求める条件(促迫条件)を設け,助手席に添乗する指導員の判断により,その時々の状況でセクションごとに各条件の教示がランダムになされた。各条件の試行数は各条件で左と右の変更をそれぞれ1回ずつ最低限行うこととし,突発条件より通常条件が多くなるよう実施された。
結 果
動作優位の確認および合図割合の条件間比較
通常条件の平均実施回数は,11.40回(範囲8~14回),促迫条件の平均実施回数は,3.10回(範囲2~5回)であった。実施試行ごとに行われた認知優位および動作優位の3つの確認回数(サイドミラー,バックミラー,目視)を加算し,合計確認回数とした。条件ごとに動作優位の合計確認回数および合図回数を総確認回数で除し,動作優位の確認割合および合図割合をそれぞれ算出した。
動作優位の確認および合図割合平均値の条件間比較を行うために参加者内によるt検定を行った。有意な差が示された動作優位の確認割合平均値のみFigure 1に示す。分析の結果,通常条件(24.75%)より促迫条件(33.49%)における動作優位の確認割合平均値が有意に高かったものの(t (9) = 3.23,p < .05),合図割合では有意な差は見られなかった(通常条件=14・78%,促迫条件=17.50%,t (9) = 0.75,n.s.)。
考 察
結果より,合図において仮説は支持されなかったものの,確認においてDrake(1939-1940)の動作本位反応説が支持された。丸山・加藤・桜井(1987)の場面想定法による実験では初心者ドライバーにおいて動作本位反応は示されなかった。本研究は添乗した指導員の指示に従い一般道路を運転してもらう実験であり,運転経験が比較的少ない大学生において動作本位反応が認められたことは,本研究で示された新しい知見といえるだろう。
付 記
本研究は富士通研究所から帝塚山大学心理学部応用心理学研究室(蓮花一己教授)への平成27・28年度委託研究『「良き運転行動」の定義と評価手法に関する基礎的研究』の研究成果に基づいている。
引用文献
Drake, C.A. (1939-1940). Accident proneness: A hypothesis, Character & Personality, 8, 335-341.
丸山欣哉・加藤健二・桜井研三 (1987). 急ぎ運転の行動分析 交通心理学研究, 3, 7-15.
Maruyama, K. & Kitamura, S. (1961). Speed anticipation test: A test for discrimination of accident proneness in motor driver, Tohoku Psychologica Folia, 20, 13-20.

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