発表

3C-090

実走場面での動作本位反応の生起メカニズムに関する実験的研究(2) -一時停車とバック行動を対象として-

[責任発表者] 今井 靖雄:1
[連名発表者] 木村 年晶:2, [連名発表者] 森泉 慎吾:3, [連名発表者] 湯本 麻子#:4, [連名発表者] 太子 のぞみ:3, [連名発表者] 中井 宏:5, [連名発表者] 蓮花 一己:1
1:帝塚山大学, 2:同志社大学研究開発推進機構, 3:大阪大学, 4:富士通研究所, 5:東海学院大学

目 的
促迫した場面で動作の一部が適切な認知を経ないまま突出する現象を動作本位(優位)反応(Drake,1939-1940)という。実験的研究(1)では,車線変更時の動作本位反応を検証したが,この反応はハンドル操作以外にブレーキやアクセルにも生じる(吉田, 2006)。特に,一時駐車やバック運転は,それぞれ「車を止める」「後方確認しながら運転する」など,車線変更と異なる技能が求められるため,これらの行動から動作本位反応メカニズムの新たな知見を示唆できる可能性がある。
そこで,本研究では「一時停車」と「バック運転」において,確認(ミラー確認,目視)および合図(指示器)とハンドル操作のタイミングのギャップを検討し,どの程度の割合で,動作優位の運転行動が生じるのかについて検討した。
方 法
実施場所と日時 平成28年11月に京都府京田辺市にある山城田辺自動車学校にて実走実験を実施した。
参加者 19歳から22歳までの男子大学生10名(平均年齢20.50歳, 標準偏差0.85歳)を対象とした。
走行コース 教習所および教習所付近の一般道路を使用した。
実験機材 ドライブレコーダー(川崎興業株式会社製)を使用し,「顔」「前方」「速度計と時刻」の映像を記録した。
分析 記録された映像をもとに,一時停車の際の1 バックミラー, 2サイドミラー, 3目視の確認開始時間, 4指示器の合図開始時間, 5ハンドル操作の開始時間を算出し,ハンドル操作開始の5秒前から停車時までの行動を分析対象とした。また,バック行動は,バック行動が始まる時点から車が停車するまでの行動を分析対象とした。
行動指標 確認と動作の時間差として,「バックミラー」「サイドミラー」「目視」のそれぞれの「確認開始時間」と「ハンドル操作開始時間」との差分を,合図と動作の時間差として,「合図(指示器)開始時間」と「ハンドル操作開始時間」の差分をそれぞれ算出した。符号が負の場合,動作より確認・合図の方が(認知優位),符号が正の場合,確認・合図より動作の方が(動作優位),それぞれ早いことを意味している。
手続き 一時停車は,助手席に添乗する指導員の指示により,片側一車線の往路と復路においてそれぞれ1回ずつ計2回実施された。また,また,バック運転に関しては,教習所内にて,駐車措置の際に実施された。車を駐車したのち,指導員により「少し下げて駐車する」ように指示がなされた。
結 果
各運転時における動作優位の確認および合図割合の比較
実施試行ごとに行われた認知優位および動作優位の3つの確認回数(サイドミラー,バックミラー,目視)を加算し,合計確認回数とした。動作優位の合計確認回数および合図回数を総確認回数で除し,動作優位の確認割合および合図割合をそれぞれ算出した。「一時停車時」「バック運転時」の動作優位の確認割合に,実験的検討(1)の促迫条件における「車線変更時」の動作優位の確認割合を加え,1要因(3水準)の分散分析を行った。また,動作優位の合図割合と促迫条件における「車線変更時」の動作優位の合図割合を比較するために,被験者内t検定を行った。分析の結果をFigure 1に示す。何れの分析にも有意な差は示されなかった。
「一時停車時」と「バック運転時」の動作本位反応の関連
「一時停車時」と「バック運転時」における動作優位の確認割合の相関係数を算出した。分析の結果,有意な相関は示されなかった(r=.06, n.s.)。
考 察
分散分析およびt検定の結果から,「一時停車時」や「バック行動時」と促迫条件における「車線変更時」の動作本位反応に違いは示されなかった。これは車線変更と比較して,ブレーキを使用することや状態を後方に向けて確認しなくてはならないなど,行動が複雑になると動作優位になりやすいことを意味しており,今後は促迫した場面に加え,行動の複雑さの要因も加味しながら,検討していく必要がある。
また,一時停車時とバック運転時における動作優位の確認割合間に関連が示されなかったことは,それぞれの動作本位反応が異なるメカニズムによって生じている可能性を示唆している。


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