発表

3C-078

リハビリパンツ着脱介助時の被介護者の動作解析

[責任発表者] 廣川 聖子:1
[連名発表者] 南岡 政宏#:2, [連名発表者] 矢田 幸博#:2,3
1:岡山県立大学, 2:花王サニタリー研究所, 3:筑波大学

目 的
 介護者の介護負担感に関して,要介護者のトイレ動作への介助および排尿コントロールへの介助に負担を感じている介護者は介護負担感が有意に高くなるとの報告(堀田・奥野・深作・柳,2010)があり,トイレや介助指導の必要性が示唆されている。介護者へ必要な支援のあり方や方向性は明らかにされつつあるが,介護技術方法についての研究は少なく,要介護者のみならず,介護者の負担を軽減する意味でも,具体的な介護技術方法の指導が急務であると考える。
そこで本研究では,介護者と要介護者ともに安全安楽な介護技術方法を提案するために,まずは,介護を受ける者(以下,被介護者とする)の動作に着目し,介護者のリハビリパンツ着脱における介護技術が,被介護者の動作に及ぼす影響について検討した。今回は,介護負担感と関連が高いとされるトイレ動作に着目し,リハビリパンツ着脱介助時の被介護者の重心動揺を調査した。また,介護者による技術提供は,看護師として病院等で勤務経験のある看護教員と,技術習得過程にあり技術提供経験のない看護学生との比較から,被介護者の動作への影響を調べた。
方 法
対象:4年制看護系大学1・2年生(以下,学生群とする)16名(平均19.63歳,SD =2.13),および看護師免許を有する大学教員(以下,教員群とする)8名(平均48.75歳,SD =12.60)が実験に参加した。
評価サンプル:市販のリハビリパンツ(以下,パンツとする)5種類(A-E)を用いた。
実験手順:対象である介護者に,重心動揺計に設置された椅子に座っている被介護者にパンツをはかせて,脱がせる介護技術を行ってもらった。その技術を評価サンプル毎に計5回,サンプル間に休憩をはさんで実施してもらい,着脱介助時の被介護者の重心動揺を測定した。実験前・中と対象者の体調変化を確認し対応した。なお,被介護者は1人を固定で置き,全対象者から介護技術を受けた。
動作の切り分け:一連の動作をビデオ撮影し,画像解析によって動作を切り分けた。パンツを着用させるために被介護者の足が重心動揺計から離れた時点から,両方の足がパンツの足ぐり部に通るまでを「足入れ」,介護者がパンツを持ち,被介護者を立たせてはかせるまでを「はき上げ」,パンツを引き下げる「はき下げ」,両方の足がパンツから抜かれ,足が地面についたときまでの「足抜き」として解析を行った。
使用機器:アニマ社製の重心動揺計を用い,総軌跡長を解析の指標とした。
結 果
 各動作時の重心動揺の群間比較についてt検定を用い分析した。結果,足入れ時の被介護者の総軌跡長は,学生群は平均53.89cm,SD =16.97,教員群は平均61.54cm,SD =20.45で,t(118)=-2.17, p<.05となり有意差があった。画像では,学生群は全員がウエストや足ぐり部を広げてはかせており,教員群は足ぐり部に手を通し被介護者の足を迎えに行くものとウエスト部を広げるものが50%・50%であった。
また,各動作時の各評価サンプルにおける重心動揺の郡内比較に分散分析を行った。結果,教員群は各動作時ともサンプル間に有意差は認められなかった(足入れ:F (4,35)=.604, p =.662 はき上げ:F (4,35)=1.201, p =.328 はき下げ:F (4,35)=2.211, p =.088 足抜き:F (4,35)=0.995, p =.423)。一方,学生群は足入れ:F (4,75)=1.615, p =.179,足抜き:F (4,75)=1.508, p =.208に有意差は認められなかったが,はき上げとはき下げに有意差が認められた(はき上げ:F (4,75)=5.106, p <.01 はき下げ:F (4,75)=6.468, p <.01)。学生群の,はき上げ時のサンプルA(平均67.94cm,SD =14.22)はB(平均50.68cm,SD =12.27),C(平均49.41cm,SD =13.60)より,また,E(平均66.11cm,SD =21.85)はCよりも総軌跡長が長かった。はき下げ時は,A(平均38.81cm,SD =15.52)はC(平均25.80cm,SD =7.70),D(平均21.86cm,SD =8.34)より,また,E(平均34.88cm,SD =10.97)はDよりも総軌跡長が長かった。
考 察
技術提供経験のない学生と経験のある教員とでリハビリパンツ着脱介助時の被介護者の動作への影響を検討した。その結果,教員介助による足入れの方が被介護者の重心動揺が有意に大きかった。足入れの際,教員は被介護者の足を迎えに行きはかせる方法をとるものが半数おり,被介護者の足を持ちはかせているため動揺が大きくなったと考える。一方,ウエスト部やレッグ部を広げはかせる方法は,重心動揺は小さいが,被介護者自ら足を足ぐり部に通すこととなる。高齢者は高い位置の足入れで不安定になるのを恐れ,手首や頭の位置を低くして低い位置で足を通し揺れに対応するとの報告(須藤他,2008)があり,介護技術として,頭や手首の位置にも注意を払い転倒予防につなげる必要がある。また,各動作時の評価サンプルにおける比較で,教員はパンツによる差はないが,学生は使用するパンツによって被介護者の重心動揺に有意差があり,はき上げで最大約18cm,はき下げで最大約17cmも重心動揺に差があることが確認された。はき上げ,はき下げとも被介護者は立位の状態である。一般の介護者が介助した場合,使用するパンツによっても被介護者の重心動揺が異なり,転倒リスクが高くなることが示唆された。今後は介護者の重心動揺もあわせて検討する必要がある。
引用文献
堀田 和司・奥野 純子・深作 貴子・柳 久子(2010).老老介護の現状と主介護者の介護負担感に関連する要因 日本プライマリ・ケア連合学会誌,33,256-265.
須藤 元喜・大野 洋美・上野 加奈子・小山 貴夫・矢田 幸博・土屋秀一(2008).下着とパンツ型おむつの着脱動作における若年者と高齢者の動作解析 日本生理人類学会誌,13,25-30.

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