発表

3C-066

笑顔のフィードバックが内発的動機づけに与える影響

[責任発表者] 余根田 耕:1
[連名発表者] 真島 成美#, [連名発表者] 松下 戦具:2, [連名発表者] 赤井 誠生:1
1:大阪大学, 2:大阪樟蔭女子大学

目 的
 人がある行動をする際,そこには何らかの動機づけが存在する。中でも,“楽しいからテニスをする”など行動そのもの自体が目的や報酬であるような動機づけのことを内発的動機づけと呼ぶ。Deci(1971)によれば,正のフィードバックを与えられた際には,内発的動機づけは高まるが,負のフィードバックを与えられた際には内発的動機づけは低下する。
また,人は日常生活において,他者から様々な形でフィードバックを得ている。例えば,対面して口頭でフィードバックを得ることもあれば,メールの文面で得ることもある。また,言語以外にも,笑顔といった表情によるフィードバックもある。特に笑顔は,報酬的価値に対して反応する脳の領域を活性化させ(O’Doherty et al., 2003),笑顔のようなポジティブな情動は心的レベルで情動の感染を誘発する(市川・牧野, 2004)ことが示唆されている。本研究では笑顔そのものが報酬となる可能性について検討した。
 内発的動機づけに影響を及ぼすフィードバックには様々な状況が想定されるにも関わらず,フィードバックを与える状況や与える方法に関する研究は比較的少ない。この目的を検証するため,正の言語的フィードバックと笑顔を両方提示した時,どちらか一方しか提示しなかった時と比べて,内発的動機づけは促進され,また,
負の言語的フィードバックと笑顔を両方提示した時は,どちらか一方だけを提示するよりも,内発的動機づけは促進されると仮説を立て,これを検証した。

方 法
 実験参加者は大学生26名(平均年齢21.9歳,SD = 0.81,うち男性11名,女性15名)であった。実験は,言語的なフィードバック3水準(ポジティブ,ネガティブ,なし)×フィードバックを与える人の表情2水準(笑顔写真あり,笑顔写真なし)で行った。実験参加者は,パソコン上に表示されている9つの白色の四角形が赤色に変化した際に四角形をマウスでクリックし,白色に戻す動作を繰り返すという課題を約30間取り組んだ。四角形が赤色に変化している時間は約0.5秒であり,その間にクリックされなかった場合は,自動的に白色に戻るようになっていた。次に各条件によって,言語的フィードバックと笑顔の有無が表示された。最後に課題に対する質問紙にパソコン上で回答し内発的動機付けを測定した。これを6条件繰り返し,参加者間でカウンターバランスをとった。

結 果
 課題に対する質問紙の結果について, 参加者内2要因分散分析を行った。内発的動機づけ測度の合計評定値におけるフィードバックの内容と笑顔の効果を分散分析した結果,フィードバック内容の主効果では有意差がみられ(F (2,50) = 4.78, p < .05),笑顔とフィードバック内容の交互作用に有意差がみられた(F (2,50) = 22.52, p < .001)。笑顔とフィードバック内容の交互作用における単純主効果の検定を行った結果,フィードバックなし条件における笑顔の効果では有意差はみられなかったが(F (1,75) = 0.49, p = .48),ネガティブフィードバック条件における笑顔写真の効果,ポジティブフィードバック条件における笑顔写真の効果では有意差がみられた(それぞれF (1,75) = 29.42, p < .001; F (1, 75) = 25.41, p < .001)。
考 察
本研究の結果,負の言語的フィードバックが提示されると内発的動機づけは低下し,言語と共に笑顔の写真が提示されると内発的動機づけは低下しないことが示された。また,正の言語的フィードバックが提示されても内発的動機づけは変わらないのに対し,言語と共に笑顔の写真が提示されると内発的動機づけが低下するという結果になった。これは仮説の一部を支持するものであった。これらの結果は,行動に対し負の言語的フィードバックを与えると内発的動機づけは低下するが,同時に笑顔を提示することで内発的動機づけの低下を抑制できることを示唆する結果であった。負のフィードバックであっても,笑顔が報酬となって内発的動機づけの低下を抑制するということが示唆された。

引用文献
Deci, E. L. (1971). The effects of externally mediated rewards on intrinsic motivation. Journal of Personality and Social Psychology, 18, 105-115.
市川寛子・牧野順四郎(2004). 刺激表情に対する観察者の同調的表情 心理学研究, Vol.75, 2, 142-147.
O’Dohertya,J.,Winstona,J.,Critchleya,H.,Perrettb,D.,
 Burtb,D.M.,& Dolana,R.J.(2003). Beauty in a smile: the
 role of medial orbitofrontal cortex in facial attractiveness.
 Neuropsychologia, 41, 147-155

詳細検索