発表

3C-048

異なる長さの立体に対する視覚的二等分課題の左右差

[責任発表者] 高橋 憲司:1
[連名発表者] 鈴木 直人:1
1:同志社大学

目 的
 健常者に線分二等分課題を実施すると,参加者の判断した二等分点(主観的二等分点)の平均は真の位置よりも左に逸脱し,わずかながら左が小さくとられるpseudoneglectと呼ばれる現象が知られている(Bowers & Heilman, 1980)。この現象についてはJewell & McCourt (2001) のメタ分析などにより頑健さが報告されている。一方で高橋・鈴木(2015)は線分に対する二等分課題で先行研究と同様の左への逸脱が見られた実験参加者が,棒に対する二等分課題では逸脱を生じなかったことを報告している。このことは,線分二等分課題でみられるpseudoneglectが,三次元的な視覚刺激に対しては同様に生じず,何らかの違いが存在する可能性を示唆している。
 先行研究において,pseudoneglectが水平方向のイメージ上の長さと関連することが明らかになっている(e.g. Darling, Logie, Della Sala, 2012)。よって,三次元的な刺激であっても全体の長さが視野に収まらず,二等分点の決定に全体の長さをイメージする必要がある課題を用いればpseudoneglectが生じる可能性がある。本研究では高橋・鈴木(2015)と同様の線分二等分課題とともに,長さの異なる棒刺激を同じ位置に呈示する二等分課題を実施し,主観的二等分点の逸脱量を比較した。
方 法
実験参加者 大学生18名 (男性4名、女性14名) が参加した。平均年齢は18.4歳 (SD=0.61歳)であった。参加者は全員が右利き(字を書く側の手を利き手とした)であった。
材料 線分条件では幅2mm,長さ20cmの線分をA4白紙の中央に印刷して刺激とした。棒条件では,直径2mm,長さ20cmの短い棒刺激と,同じく直径2mm,長さ50cmの長い棒刺激の2種類をアルミニウム棒から作成し,それぞれ机の上に直接呈示した。棒に繰り返し主観的二等分点を記入するための二等分課題の筆記具として,書いたものを消すことができるパイロットコーポレーション製フリクションカラーズ(赤)のサインペンを線分と棒の両条件で用いた。
手続き 実験はすべて参加者内条件で実施し,すべて参加者の正面の机の上に水平方向で呈示した。参加者には目を閉じて待機させ,実験者の合図で目を開け呈示された刺激を見て,二等分点だと思う位置(主観的二等分点)を決めてから記入するよう教示した。また,合図の時点で左手と右手のどちらで主観的二等分点の記入を行うか指示し,指示した側の手でサインペンを使い,主観的二等分点を記入させた。記入を終えた刺激を実験者が回収した後,参加者には次の試行開始の合図まで再び目を閉じて待機させた。
試行は線分条件および棒の2条件ごとに右手で5試行,左手で5試行を行った。刺激の条件,および左右どちらの手で回答するかの順序はランダムとし,計30回実施した時点で実験を終了した。また,10試行ごとに2分間の休憩を設けた。
結 果
 条件ごとの逸脱量(刺激全体の長さに対する主観的二等分点と真の二等分点の距離の比(%)。逸脱量が負の値の場合,二等分点が真の位置より左へ逸脱したことを示す)の平均を図1に示した。
図1 各条件における二等分点の平均逸脱量 (エラーバーは標準誤差を示す)

1サンプルt検定を行った結果,線分条件では左右どちらの使用手でも有意差がなく(ts(17)<0.92, n.s.)主観的二等分の逸脱が見られなかった一方,棒条件ではすべての条件で有意差があり(ts(17)>3.18, p<.01),棒に対する主観的二等分点は長さ,使用する手に関わらず真の位置から右へ逸脱した。
考 察
 比較の結果,線分と棒では視覚的な主観的二等分点が異なることが明らかになったことに加え,長い棒に対しても主観的二等分点の左への逸脱は生じなかったことから,三次元の刺激に対する視覚的な二等分課題は二次元の刺激に対する場合と異なる特性を持つ可能性が考えられる。加えて、棒の二等分課題では使用する手に関わらず右への逸脱が見られたことから、対象刺激の視覚的な三次元性は、二次元の線分二等分課題においてpseudoneglectを生じるものとは異なる認知基盤を活性する可能性が考えられる。
引用文献
Bowers, D. & Heilman, K. M. (1980). Pseudoneglect: effects of hemispace on a tactile line bisection task. Neuropsychologia, 18, 491-498.
Darling, S., Logie, R. H., Della Sala, S. (2012). Representational pseudoneglect in line bisection. Psychonomic Bulletin & Review, 19, 879-883.
Jewell, G. & McCourt, M. E. (2001). Pseudoneglect: a review and meta-analysis of performance factorsin line bisection tasks. Neuropsychologia, 38, 93-110.
高橋憲司・鈴木直人 (2015). 棒の二等分課題における大きさ知覚の左右差の検討. 日本心理学会第79回大会発表論文集.

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