発表

3C-029

邦訳版Stress Mindset Measureの因子構造と信頼性・妥当性の検討

[責任発表者] 米田 健一郎:1
[連名発表者] 津田 彰:1, [連名発表者] 堀内 聡:2, [連名発表者] 伏島 あゆみ:3, [連名発表者] 三原 健吾:4, [連名発表者] 田中 芳幸:5, [連名発表者] 岡村 尚昌:4, [連名発表者] 松田 英子:6, [連名発表者] 津田 茂子#:7, [連名発表者] 内村 直尚#:4
1:久留米大学, 2:岩手県立大学, 3:金沢工業大学, 4:久留米大学高次脳疾患研究所, 5:京都橘大学, 6:東洋大学, 7:茨城キリスト教大学

目 的
トランスアクショナルモデル (Lazarus & Folkman, 1984)によれば,ストレッサーによってストレス反応が生じるストレス過程では,ストレッサーに対する認知的評価とコーピングが重要な役割を果たすと主張されている。近年,ストレス過程に影響する新しい要因として,ストレスマインドセット(Crum & Achor, 2013)が注目されている。ストレスマインドセットはストレスの健康等に対する影響性に関する捉え方であり,ストレスは健康等に有用であると信じるストレス有用信念と,有害であると信じるストレス有害信念がある。
Stress Mindset Measure (SMM)(Crum & Achor, 2013)は,ストレスマインドセットを測定する1因子8項目の尺度である。ストレス有用信念を測定する4項目とストレス有害信念を測定する4項目で構成されており,ストレス有害信念因子の項目得点は逆転処理され,合計点が算出される。
わが国においては,大久保・竹橋 (2016) の邦訳版SMMが存在するものの,邦訳版SMMの信頼性と妥当性については検討の余地がある。まず,再検査信頼性は検討されていない。また,大久保・竹橋 (2016)は,邦訳版SMMは2因子構造であることを見出しているが,妥当性を1因子で検討しているため,各因子のいずれもが原版と同程度の妥当性を有するか否かは不明である。
よって本研究では,邦訳版SMMのストレス有用信念因子とストレス有害信念因子の信頼性と妥当性を検討した。
方 法
手続き 邦訳版SMMの質問項目は,McGonigal (2015 神崎訳 2015)の邦訳を用いた。大久保・竹橋 (2016)の邦訳と若干の相違点は認められるものの,概ね同質であると考えられる。
参加者 分析対象者は大学生384名 (男性153名,女性231名,年齢(平均±SD)20.4±1.74)。なお,再調査の対象者は90名 (男性24名,女性66名,年齢 (平均±SD)20.4±.87)。
調査尺度 1.邦訳版SMM:ストレス有用信念4項目,ストレス有害信念4項目の2因子。2.ストレスの量と深刻度尺度:Crum & Achor (2013)に基づき作成。各1項目。3.大学生用ストレス自己評価尺度 (尾関,1993)からコーピング尺度:問題解決型コーピング7項目,情動焦点型コーピング5項目,回避・逃避型コーピング8項目の3下位尺度。
4.日本語版PANAS (佐藤・安田,2001):ポジティブ情動8項目,ネガティブ情動8項目の2因子。


結果と考察
 ストレス有用信念因子とストレス有害信念因子のα係数はそれぞれ.81と.74であった。これらの値は大久保・竹橋(2016)の報告と一致していた。また,再検査信頼性はそれぞれ.80と.84であり高い信頼性が示された。よって邦訳版SMMは時間的に安定した尺度であり,介入研究や縦断調査にも利用できることが示された。
 次に両因子の弁別的妥当性を検討するため,ストレス有用信念因子およびストレス有害信念因子とストレスの量,ストレスの深刻度,問題解決型コーピング,情動焦点型コーピング,および回避・逃避型コーピングとの相関係数を求めた。認められた相関係数はr = .13またはそれ以下であり,十分な弁別的妥当性が示された。
 次に基準関連妥当性を検証するため,階層的重回帰分析を行った。ネガティブ情動を目的変数とした場合,Step 1ではストレスの深刻さ( β = .47, p < .00)のみがネガティブ情動の有意な予測因子であった。ストレス有用信念因子とストレス有害信念因子を投入したStep 2では,ストレス有害信念因子 ( β = .11, p = .02)がネガティブ情動と有意に関連していた一方で,ストレス有用信念因子 ( β = .08,p = .20)は有意な関連を示さなかった。なお,adj R 2は.23であった。また,両因子を投入することによって,adj R 2は有意に上昇した (⊿R 2 = .01, p = .02)。このことから,ストレス量・深刻度とコーピングを統制した上でも,邦訳版SMMのストレス有害信念因子がネガティブ情動と関連していることが示された。
本研究の結果から,測定の基準関連妥当性を高めるためには,ストレス有用信念因子を含めずにストレス有害信念因子のみを用いる必要があることが示唆された。
引用文献
Crum, A. J. & Achor, A. (2013). Rethinking Stress: The Role of Mindsets in Determining the Stress Response. Journal of Personality and Social Psychology, 104, 716-733.
Lazarus, R. S. & Folkman, S. (1984). Stress, Appraisal, and Coping. New York, Springer Publishing Co.
McGonigal, K. (2015). The Upside of Stress: Why Stress Is Good For You, and How to Get Good at It. New York Penguin Random House.
(マクゴニガル,K. 神崎 朗子(訳) (2015). スタンフォードのストレスを力に変える教科書 大和書房)
大久保 慧悟・竹橋 洋穀 (2016). 邦訳版ストレスマインドセット尺度の信頼性・妥当性の検討 日本社会心理学会第57回大会発表論文集,2142

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