発表

3C-009

集団主義と個人主義に関するステレオタイプの検討 -日・中・英・米の典型的な人物像のイメージによる調査-

[責任発表者] 西村 光一:1
[連名発表者] 岡 隆:1
1:日本大学

目 的
 集団主義と個人主義に関する言説が存在するといわれる。「日本人はアメリカ人よりも集団主義的(アメリカ人は日本人よりも個人主義的)である」という見解は通説となっている(高野・纓坂, 1997)。実際に,集団主義的な文化をもつとされるアジアと個人主義的な文化をもつとされる欧米との国際比較も実施されている(村本, 2004)。しかしながら,実際の文化差が多く検討されてきた一方で,見かけ上の文化差,すなわち文化差に関する言説を実証的に扱った研究は少ない。
 本研究では,集団主義と個人主義に関するステレオタイプを扱う。前述の言説が根強いとされる日本人とアメリカ人に加えて,アジアと欧米にそれぞれ属する,そのような言説が比較的乏しい中国とイギリスをも含め,実証的に検討する。
 仮説として,集団主義に関する尺度と質問項目について,各国の典型的な人物像を想定した際に,日本人を想定して回答した場合には,アメリカ人を想定して回答したときと比較して,より集団主義的であるという回答が得られることを予測する。そして,中国人およびイギリス人を想定して回答したときの得点は,日本人とアメリカ人との間に布置されることを予測する。すなわち,各国の典型的な人物像を想定したときには,日本人,中国人,イギリス人,アメリカ人の順に,より集団主義的であると判断されることを予測する。
方 法
 デザイン 1要因4水準(想定する人物像:日本人・中国人・イギリス人・アメリカ人)を被験者間要因として操作した。各条件の回答者数をカウンターバランスした上で,回答者を各条件に対してランダムに割り付けた。
 調査回答者 大学生180名(男性71名,女性107名,不明2名,M=19.17歳,SD=1.49)を対象とした。各条件の人数は44名から48名の間であった。
 質問紙 集団主義尺度改訂版(Yamaguchi, Kuhlman, & Sugimori, 1995)14項目(5件法),相互独立的‐相互協調的自己観尺度短縮版(高田, 2000)10項目(5件法),高野・纓坂(1997)を参考に独自作成した集団主義と個人主義に関連する4項目(「集団主義的‐個人主義的」「集団の目標や利益を優先‐個人の目標や利益を優先」「協調的‐競争的」「同調的‐自律的」,いずれも7件法)のそれぞれを用いた。
 手続き 講義時間中に質問紙を配布して回答を求めた。質問紙の各尺度・質問項目に対して,典型的な人物像を想定して回答するよう求めた。さらに,集団主義尺度改訂版と相互独立的‐相互協調的自己観尺度短縮版のそれぞれで,回答者自身についても回答を求めた。フェイス項目のほか,回答者の国籍,外国での居住や留学の経験についても尋ねた。
結 果
 尺度の信頼性 集団主義尺度,相互独立性尺度,相互協調性尺度のそれぞれについて信頼性を確認し(α=.89,.88,.87),すべての項目を以降の分析に用いた。
 得点の算出 各尺度・質問項目のそれぞれで各参加者の回答を得点化した。集団主義尺度では全14項目の合計得点,自己観尺度では「相互独立性」の全4項目と「相互協調性」の全6項目それぞれの平均得点を求めた。独自作成項目は4項目それぞれで得点を求めた。以降,各尺度・質問項目について,欠損のないデータのみを対象として分析した。
 条件別の各尺度と各質問項目の得点 各条件での各尺度・質問項目の得点をTable 1に示した。
 各尺度・質問項目のそれぞれについて,その合計得点または平均得点を条件別に算出し,条件間で独立したサンプルによる一元配置の分散分析を実施した。その結果,すべての尺度と質問項目で有意差がみられた(いずれもp<.001)。Tukey法による多重比較をそれぞれ実施した結果,すべての尺度と質問項目で,日本人条件はほかの3条件のすべてと比較して得点が高く,ほかの3条件間でも全体的に中国人,イギリス人,アメリカ人の順に高くなっていた。一方,独自作成項目のなかには,それとは明らかに異なる差もまた散見された(「集団の目標や利益を優先‐個人の目標や利益を優先」「協調的‐競争的」の各項目)。
考 察
 全体として,仮説はおおむね支持されたと考えられる一方で,それに反する結果も一部にみられた。
 中国人については,集団主義的・同調的とみなされている一方で,国際関係に関する報道から“自己中心的”で“争いを好む”とみなされている可能性が考えられよう。
 集団主義と個人主義のステレオタイプについて,日本とアメリカでは高野・纓坂(1997)の主張と同様に明確な差が示された。一方,それら以外のアジアとヨーロッパについては,単純な比較は必ずしも成り立たないということが示唆される結果であった。このことから,今後はアジアとヨーロッパといった区分に限らず,各国それぞれの人物像に対するステレオタイプをも加味して検討する必要があると考えられる。
主要な引用文献
高野陽太郎・纓坂英子 (1997). “日本人の集団主義”と“アメリカ人の個人主義”—通説の再検討—. 心理学研究, 68, 312-327.

詳細検索