発表

3C-008

虚偽検出における手がかりの探索 -真偽判断の手がかりを正しく適用しているのか-

[責任発表者] 滝口 雄太:1
[連名発表者] 尾見 康博:2
1:東洋大学, 2:山梨大学

目 的
 嘘を正確に見抜くことがかなり難しいということは,欺瞞研究で広く知られている(Bond & DePaulo, 2008)。その理由として,Vrij(2008a)は,人々が他者のメッセージを真実方向に偏って判断してしまう傾向があり,また,誤った手がかりをもとにして判断を行うことがあると指摘した。
木藤・児玉(2005)は,嘘の漏洩と非言語的手がかりとの関連を検討したところ,真偽判断の平均正解率は45.85%と低かった。その理由は,検出課題に使われた偽の動画の作り方にあったかもしれないと考察されている。つまり,実験者によって一部改ざんされた自己プロフィールとして刺激人物が語るというものであったため,嘘をつく際に一般的に用いられる非言語的手がかりが表出されなかったかもしれないということである。そこで,本研究では,嘘の内容も刺激人物に考えてもらい,できるだけ現実に近い形で嘘を表出してもらうこととする。そして,真偽判断時の手がかりと弁別結果との関係に焦点をあて,真偽判断時に実験参加者がどのような手がかりに着目するのか,そして,そのときの正解率はどの程度であるかを明らかにすることを目的とする。

方 法
刺激映像の作成
 2名の刺激人物(24歳男性,22歳女性)に尋ねる質問に関して,日常生活でありふれた8つの場面を作成した。嘘の種類を3種類(利己性に基づき,心理的・物理的理由による回避を目的とした嘘,利他性に基づき,心理的・物理的理由による回避を目的とした嘘,社会的な嘘)に分け,それぞれ2つずつの6場面用意し,質問を読み上げる前に,「これからお聞きする質問に関しては,普段自分がするであろう,言うであろう返答とは別なことを,あるいは反対のことを答えてください」と教示を行った上で,刺激人物に返答を求めた。真実条件は2場面用意し,質問を実験者が読み上げた後,質問に対して自由に返答してもらった。
実験手続き
 実験参加者は,大学生36名(男性14名,女性22名)であった。実験参加者は刺激映像を見た後,動画に映っている人物の返答が嘘であるか本当であるかの判断を報告した。それと同時に,なぜそのような判断をしたのか,また,どういったところを手がかりとしたのかの説明が求められた。

結 果
 576(8場面×刺激人物2名×参加者36名)の回答にあらわれた,判断の手がかりに関する発話を55のカテゴリーに分類した。次に,刺激映像の真偽を正確に判断できていたかどうかの正解率,手がかりの利用されやすさを算出した。最も多く利用された手がかりは,1.72回の「その人の人柄に当てはめる」であった。特に,嘘場面において,実験参加者が頻繁に用いた手がかりの上位5つは,「その人の人柄にあてはめる」「話が分かりづらい,理解できない」「きちんと考えている様子がする」「話をしているときに視線が泳ぐ」「質問を自分の立場で考えてしまう」であり,これらの手がかりの平均利用回数と正解率はTable1の通りであった。話が理解できない,視線が泳ぐといった手がかりは,嘘場面での利用数が多く,正解率も高い一方で,真実場面で手がかりとして利用された場合には正解率は低くなっていた。また,人柄に合わせること,思考の様子,自分への置き換えに関する手がかりは,真実を正しく判断できる一方で,嘘の刺激を正しく判断する役に立っていなかった。

考 察
本実験のメッセージの受け手は,木藤・児玉(2003)の実験結果と比較すると,実験参加者が判断する刺激に関して,刺激の長さや内容が異なるために,より言語的な手がかりを報告する割合が多かったと考えられる。しかし,刺激人物の個人的な癖との弁別ができなかった点は共通していた。最も利用回数の高かった「人柄に当てはめる」という手がかりや「質問を自分に当てはめる」という手がかりのように,言語的・非言語的に区分できない,ヒューリスティックな手がかりに着目すると,受け手は嘘を見抜けなくなりがちであることが明らかになった。また,真実場面での正解率の低さから,送り手の立場に立つと,視線が泳いだり,分かりにくい話し方をすると,嘘をついていないにもかかわらず嘘だと疑われてしまう可能性が高まると考えられる。

引用文献
木藤恒夫・児玉千絵(2003). 嘘と本当を見分けられるか 久留米大学心理学研究 2, 37-48.
Vrij, A. (2008a). Detecting lies and deceit: Pitfalls and opportunities (2nd ed.). Chichester, UK: John Wiley & Sons.
Bond, C. F., & DePaulo, B. M.(2008). Individual Differnces in Judging Deception: Accuracy and Bias Psychological, Bulletin, 134, 4, 477-492.


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