発表

3C-001

Highly sensitive personにおけるライフスキルと抑うつ傾向の関連−非Highly sensitive personとの比較の観点から−

[責任発表者] 矢野 康介:1
[連名発表者] 大石 和男#:1
1:立教大学

目 的
Highly sensitive person(以下,HSP)とは,生得的に刺激を感じる閾値が低く,感受性が高い人々のことである(Aron, 1996)。身体の内外における種々の刺激に対して敏感に反応するというHSPの特徴は,強みにもなり得る反面(Aron, 1996),ストレスや抑うつ傾向と正の関連のあることが指摘されている(Benham, 2006;Liss, Timmel, Baxley, & Killingsworth, 2005)。
一方,ライフスキルは日常生活で生じる問題や要求に建設的に対処するために必要な心理社会的能力であり(World Health Organi­zation, 1994 川畑・高石・西岡・石川・JKYB研究会訳 1997),高いライフスキルを有する者は精神的健康を維持しやすいことが報告されている(e.g., 嘉瀬・飯村・坂内・大石,2016)。この点を踏まえると,抑うつ傾向が高まりやすいHSPにおいても,ライフスキルを高めることでそのリスクを低減できることが推察される。
したがって,本研究ではHSPにおけるライフスキルと抑うつ傾向との関連性を検討し,HSPにおける抑うつ傾向の低減に向けた示唆を得ることを目的とした。
 
方 法
本研究の調査対象者は,研究の趣旨を理解し,協力の同意が得られた大学生377名(男性140名,女性237名;平均年齢19.5±1.1歳)であった。調査項目は,以下の3項目である。すなわち,本研究におけるHSP群を特定するための1) HSPS-J19(髙橋,2016;α=.85),ライフスキルを測定するための2) LSSAA(嘉瀬ほか,2016),抑うつ傾向の程度を評価する3) 日本版CES-D(島・鹿野・北村・浅井,1985;α=.83)である。なおLSSAAは,【1】論理的思考や想像力を用いて問題を効果的に解決するためのスキルである「意思決定」(α=.78),【2】他者の言動から気持ちを想像し,共感を示す「対人関係スキル」(α=.77),【3】自分の考えを効果的かつ積極的に他者へ伝える「効果的コミュニケーションスキル」(α=.64),【4】自分自身の情動を制御する「情動への対処」(α=.73)といった4つの下位スキルから構成されている。
本研究の分析手順は,まず1) 先行研究(Aron & Aron, 1997;Liss et al., 2005)に倣い,HSPS-J19の合計点における上位25%をHSP群(n=90),その他を非HSP群(n=287)とした。次に,2) 各群における抑うつ傾向と各ライフスキルの平均値差を検定するために,Welchのt検定を実施した。最後に,3) 各群においてLSSAAの下位4スキルを説明変数,CES-Dの得点を目的変数としたロバスト回帰分析を実施した。

結 果
まず,HSP群は非HSP群よりも抑うつ傾向が有意に高く,「効果的コミュニケーションスキル」と「情動への対処」が有意に低いことが示された。さらに,HSP群においては,「情動への対処」のみが抑うつ傾向に対して負の関連を持つ(β=-.28,p<.05)のに対し,非HSP群では,「対人関係スキル」と「情動への対処」が抑うつ傾向に対して負の関連を持つことが示された(順にβ=-.13,p<.05;β=-.32,p<.01)。
 
考 察
本研究の結果から,HSPにおいては「情動への対処」の向上を目的とした取り組みを行うことで抑うつ傾向を低減できる可能性が示唆された。
今後は自由記述調査や半構造化面接などの質的調査を実施し,HSPと非HSPが実際の生活場面で用いている,不安や怒りといった情動への対処方法を詳細に把握することなどが求められる。
 
引用文献
Aron, E. N. (1996). The Highly Sensitive Person. New York: Broadway Brooks.
Aron, E. N. & Aron, A. (1997). Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality. Journal of Personality and Social Psychology, 73, 345-368.
Benham, G. (2006). The Highly Sensitive Person. Personality and Individual Differences, 40, 1433-1440.
嘉瀬貴祥・飯村周平・坂内くらら・大石和男(2016).青年・成人用ライフスキル尺度(LSSAA)の作成 心理学研究,87,546-555.
Liss, M., Timmel, L., Baxley, K., & Killingsworth, P. (2005). Sensory processing sensitivity and its relation to parental bonding, anxiety, and depression. Personality and Individual Differences, 39, 1429-1439.
島 悟・鹿野達男・北村俊則・浅井昌弘(1985).新しい抑うつ性自己評価尺度について 精神医学,27,717-723.
髙橋亜希(2016).Highly Sensitive Person Scale 日本版(HSPS-J19)の作成 感情心理学研究,23,68-77.
World Health Organization (1994). Life skills education for children and adolescents in schools. World Health Organization. Retrieved from http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/63552/1/WHO_MNH_PSF_93.7A_Rev.2.pdf

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