発表

3B-095

子どもの頃に過ごした住まいと思春期問題との関連−思春期問題の経験者と未経験者それぞれの語りから−

[責任発表者] 西館 有沙:1
[連名発表者] 水野 智美:2, [連名発表者] 徳田 克己:2
1:富山大学, 2:筑波大学

目 的
 思春期に子どもが経験する精神的な危機やそれによって現れる行動上の問題(思春期問題)と住環境との関連を明らかにすることを目的として、大学生を対象にした質問紙調査と成人者を対象にしたヒアリング調査を行った。本稿では、思春期問題を経験した成人者と経験していない成人者それぞれに対するヒアリング調査の結果を報告する。
方 法
 2017年1月から3月にかけて、思春期問題を経験した6名(経験者)と、経験していない11名(未経験者)を対象とし、半構造化による面接を行った。対象者の全員に親ときょうだいがいた。経験者6名には思春期に、携帯電話への依存傾向や自傷行為、帰宅時間の遅延が認められた。なお、本研究は富山大学倫理審査委員会の承認を経て実施された(人28-20)。
結 果
1)経験者が小学生の頃に過ごした住まい
 小学生の頃の住まいは、マンション・アパート等が4名、平屋の一戸建てが1名、社宅が1名であった。子ども部屋があった者は6名中3名であり、いずれもきょうだいとの共用であった。子ども部屋がなかった3名は、居間もしくは隣接する部屋で親やきょうだいと過ごしていた。子ども部屋があった3名も、親や祖父母とともに居間でテレビを見るなどして過ごすケースが多かった。
回答者AとBは「両親が厳しかった」「常に親に監視されていた」と述べており、小学生の頃から家庭内において強いストレスを感じることがしばしばあったと推測される。
2)経験者が中学生以降に過ごした住まい
 回答者Aは小学校高学年の頃に社宅から一戸建てに引っ越しており、それ以降は専用の子ども部屋をもっていた。子ども部屋、居間、ダイニングはそれぞれ異なる階にあり、親はダイニングでテレビを見て過ごし、子どもたちは居間でテレビを見るか、自分の部屋で勉強をするなどして過ごした。そのため、親と話す機会が引っ越す前より減ったという。
 回答者Bは中学に上がる頃に、一戸建てからアパートに引っ越した。アパートでは、居間の隣にきょうだいと共用の子ども部屋をもったが、自分の部屋にいても襖の向こうに親の存在を感じることがストレスであり、この頃から自傷が始まったと述べた。
 回答者Cは、小学校高学年の頃に親が再婚し、マンションから別のマンションへ引っ越している。子ども部屋はきょうだいとの共用であったが、仕切りを設けて個の空間を作っていた。回答者Cは、親の再婚相手との折り合いが悪く、家にいる時は、ほとんどの時間を子ども部屋で過ごしたという。
 回答者D、E、Fは引っ越しの経験はない。回答者DとFは住宅事情から家族と同じ空間で過ごさざるを得なかったが、そのことに強いストレスは感じなかったという。ただし、2名には思春期に、携帯電話への依存傾向が認められた。
3)未経験者が小学生の頃に過ごした住まい
 小学生の頃の住まいは、一戸建てが6名(6名とも2階建ての住宅)、マンション・アパート等が5名であった。また、マンション・アパート等に住んでいた5名のうち2名は、小学校中学年の頃に一戸建てに引っ越した。
子ども部屋があった者は11名中10名であり、このうち自分専用が4名、きょうだいとの共用が6名であった。しかし、全員が多くの時間を居間で過ごしていたと述べた。この理由としては、居間にはテレビがあったこと、快適に過ごすための環境が整っていたことこと、他の家族メンバーが居間にそろっていたことなどが挙げられた。
4)未経験者が中学生以降に過ごした住まい
未経験者の中に、中学生以降に引っ越しをした者はいなかった。中学生になると、小学生の頃には子ども部屋がなかった1名を含め、全員が子ども部屋をもっていた。
中学生の頃に、親と居間で過ごすことが多かった者は11名中6名、親のいる居間と子ども部屋のどちらかで過ごしていた者が3名、親とは異なる空間で過ごしていた者が1名、塾で帰宅が遅くなるために家で過ごす時間があまりなかった者が1名であった。
玄関を入って、居間やダイニングなどを通らずに子ども部屋まで行けたという者は11名中8名であった。しかし、この8名は居間や親のいる部屋に立ち寄ることが多く、家族メンバーの誰にも会わずに自分の部屋にこもるということがなかった。この理由として、自分の所在を親に告げる習慣があったこと、部屋にこもれば家族メンバーの誰かが自分の異変に気づくことが挙げられた。
考 察
思春期問題の経験者、未経験者ともに、小学生の頃は子ども部屋があっても居間で過ごすケースが多かった。ただし、未経験者は「母がおしゃべり好き」「毎日が賑やか」「弟がよく話しかけてきた」など、親やきょうだいとの交流について語ることが多かったが、経験者からは会話の多さをうかがわせるようなエピソードがあまり出なかった。回答者Aのように、メンバーが別々に過ごせる住まいでの生活は、家族間の交流をさらに減らしてしまう可能性がある。また、経験者の中には、親からの過度の監視や、親の再婚相手との不仲などを経験した者がいた。家庭内に持続する強いストレスがあると、子どもにとって安心できる場所が子ども部屋しかないという事態を生みかねない。この状態が、自室への引きこもりや自傷、家出などの危険性を高めると推察される。

付記:本研究はLIXIL住生活財団の助成を受けて行われた。

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