発表

3B-088

SDQの評定者間差異に関する検討~児童・父親・母親・担任教師の比較~

[責任発表者] 岩田 昇:1
[連名発表者] 大竹 康平#:1, [連名発表者] 佐伯 いずみ#:2
1:広島国際大学, 2:広島県/広島市スクールカウンセラー

目 的
近年,ADHDなどの子どもの行動上の問題は広く認知され,予防対処の重要性から早期に問題保有の可能性を捉え,適切な対応を執ることが必要であると考えられてきた。このような目的で使用できるツールにSDQ (Goodman,1997)がある。SDQは3歳から16歳くらいまでの子どもの内在化・外在化問題を測定するための国際標準ツールで,「問題行動」「多動・不注意」「情緒不安定」「仲間関係問題」「向社会的行動」について,各5項目で測定する5下位尺度計25項目で構成されている。親・教師用SDQにはImpact scaleという,症状による学習や学校等社会生活への影響評価の尺度も追加されており,SDQ尺度得点と組合せて「行為障害」「多動性障害」「情緒障害」の暫定的診断を行うためのアルゴリズムも発表されている。
10歳未満の子どもの問題,特に外在化問題に対しては,親(主に母親)・教師による評価に基づく研究報告が一般的である。しかし,この両者の評定が完全に一致することは考えにくく,評定者の性別と被評定者(子ども)の性別との組合せによっても不一致の程度が異なる可能性がある。それ以上の年齢層になれば,子どもの自己評定を用いている研究も増えるが,3者の評定の整合性については議論の余地がある。
SDQでもこの3評定者のそれぞれの評定値およびそれを用いた研究報告は発表されているが,この3者間のギャップについて十分に検討されているとは言い難い。そこで本研究では,一般公立小学校児童およびその保護者(父・母)・担任教師から独立に得たSDQ評定データを用い,子どもの内在化・外在化問題の評価における,子ども・父親・母親・教師の評定差異について検討した。

方 法
(1) 調査協力者
2016年9月下旬~10月上旬,広島県内4地域8公立小学校5・6年生およびその保護者・担任教師に調査を行い,児童541名(男子283・女子258)に関する回答を得た。
(2) 調査手続き
a 児童調査:担任教師より調査票を配布し,クラス内で記入後,個別の封筒に入れ回収した。
b 保護者調査:各児童が父親・母親用調査票・封筒を自宅に持ち帰り,父親・母親は個別に記入・封印し,児童が学校に持参した。この方法により,各々の回答内容の機密保護を図った。なお,一部の小学校を除き,保護者の協力に対してクオカードによる謝礼を用意した。
c 教師調査:担任クラスの各児童について教師用SDQへの記入を求めた。多くの小学校で短縮版が用いられた。
(3) 使用尺度
SDQおよび学校・家庭生活に関する包括的調査票。保護者にはSDQ・家族機能調査票,教師にはSDQのみ使用。
(4) 統計解析
児童・父親・母親・教師評定のSDQ下位尺度得点を対応ある分散分析にて比較した。評定者間有意差を認めた尺度では,個々の項目評定値の差異を検討した。なお,教師への調査に短縮版SDQを用いた小学校が多く,問題行動,多動・不注意,情緒不安定の3尺度・項目を検討対象とした。

結 果
分散分析を行なった結果,問題行動では評定者による主効果がみられ,教師評定値が他より低値であった。本人・父・母間には有意差を認めなかった。項目では「かんしゃく」や「うそ・ごまかし」などで,担任教師が過小評価していた。
多動・不注意では,子どもの性別と評定者による交互作用が認められ,男子に対しては父親評定が母親・教師評定より高く,女子では教師評定が他より著しく低値であった。本人と父・母間には有意差を認めなかった。項目で見ると「考えて行動する(逆転)」「集中できない」などで教師が著しい低値を示した。
情緒不安定でも子どもの性別と評定者による交互作用が認められたが,上の2尺度と大きく異なるのは,本人と父・母間に有意差が見られることであった。「初めてのことへの不安」「落ち込み・涙ぐむ」「心配事・不安」などで特に本人と父母間で差が認められた。教師評定はすべての項目で本人評定と有意差を示し,特に女子への評定で差が顕著であった。
問題行動,多動・不注意,情緒不安定の多くの項目で,本人より父母および担任教師が過少評定していた。同様の解析により,担任教師は父・母より児童の問題行動,多動・不注意,情緒不安定を過少評価していた。
父母の評定は,担任教師よりも本人評定との差異が少ないものの,情緒不安定では本人評定と有意差を認め,多動・不注意では,母親の方が子どもの状態を過少に評定する傾向がみられた。

考 察
SDQなどの内在化・外在化問題の評価尺度は,本人評定のみならず,親や担任教師の評定を用いることも多い。外在化問題については,観察が比較的容易に行えると考えられるが,内在化問題に関してはどうだろうか? 評定者間の差異はどのように発現するのであろうか? 本検討はこの課題に回答を得ようとするものであり,我々が知る限り,本人・父・母・担任教師の評定値を比べた詳細な報告はこれまで見当たらない。
外在化問題に関する評定は,本人と父母間では差異を認めないものの,担任教師との差を認め,内在化問題では,本人とその他の評定者との間に有意差を認め,いずれも他の評定者が低く評定していた
[備考]本研究は日本学術振興会科学研究費補助に基づいた。

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