発表

3B-061

多様に見えるドレスの色の認知 他者の意見、経験、文化差が与える影響

[責任発表者] 川﨑 弥生:1,2
[連名発表者] 池田 和浩:3, [連名発表者] 大久保 街亜:1, [連名発表者] Bodil S. A. Karlsson#:4, [連名発表者] Carl Martin Allwood#:4
1:専修大学, 2:日本学術振興会, 3:尚絅学院大学, 4:University of Gothenburg

目 的
人によって「青と黒」に見えたり、「白と金」に見えたりするドレス(Fig.1)の知覚について色知覚の個人差の観点から研究が行われている(e.g., Gegenfurther, Bloj & Toscani, 2015)。Karlsson and Allwood(2016)は、スウェーデン人を対象に、このドレスの色が何色に見えるかに加え、どの色が正解と思うかという信念について検討した。その際に、「青と黒」「白と金」「その他」に加えて「正しい答えはない」という選択肢が回答のため用意された。答えが複数あると考えられる問いに対する正解についての信念を問うと、悲観的な人に比べて楽観的な人は多様性を考慮しがちであることが分かっている(Scharot & Garett, 2016)。このことから、Karlsson and Allwood (2016) は、楽観性の高い人は正解についての信念として、自分の考えや知覚ではなく「正しい答えはない」という選択肢を選ぶと予測した。その結果、調査までにこのドレスの写真を見た経験がない人の方が、そして、楽観的な人の方が、「正しい答えはない」を正解についての信念として答えることが分かった。
本研究では日本人を対象に文化差を考慮に入れてこの現象を検討する。日本人はフランス人に比べて自分の意見ではなく他者のアドバイスを考慮に入れがちなことが分かっている(Mercier, Yama, Kawasaki, Adachi, & Van der Henst, 2012; see also, Yates, Ji, Oka, Lee, Shinotsuka, & Sieck, 2010)。そのため、本研究の調査対象者はこのドレスの写真を以前に見たことがあっても、「正しい答えはない」という選択肢を多く選ぶことが予測される。さらに、以前にドレスを見たことがあり、ドレスの色の見え方が変わった人にその具体的な理由を聞くことで、他者の意見によって見え方や正解についての信念が変わるのかについても検討する。
方 法
参加者:日本人大学生231名が調査に参加した。そのうち男性123名、女性106名、その他が2名であった。
質問紙と回答方法:質問紙はドレスを見た経験についての質問(このドレスの本来の色は何色であると思うか?、何が「正しい」答えか?、このドレスの見え方が変わった場合は、何によるのか?など)と楽観性尺度から構成された。調査参加者は、PCあるいはスマートフォンから回答した。
結 果 と 考 察
 実際に知覚した色と正解についての信念を、このドレスを初めて見る人と、見たことのある人に分けて示した(Fig.2)。見たことがある人も初めて見る人と同様に、「正しい答えはない」と回答する率が高かった。この結果は他者のアドバイスを考慮に入れがちな日本人の特性を考慮した本研究の予測と一致する。ただし、正しい答えについての信念と実際に知覚した色の組み合わせでは、楽観性尺度の得点に有意な差は見られなかった。
 最後に、ドレスの見え方が変わったことがあるかどうかとその場合何によって変わったのかをFig.3に示した。ドレスの色の見え方が変わった人の半数以上の理由は他の人の意見によることが分かった。この結果も他者の意見の影響が大きいことを示している。これらの結果は、ドレスの色の知覚や正解への信念に他人が及ぼす影響が日本では顕著であり、文化差があることが示唆された。

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