発表

3B-035

定時制高校生に対する学級規模のソーシャルスキルトレーニングによる抑うつ予防効果の検討

[責任発表者] 吉良 悠吾:1,2
[連名発表者] 河野 里沙#:2, [連名発表者] 重松 潤#:1, [連名発表者] 水﨑 優希:3,4, [連名発表者] 清水 陽香:1,4, [連名発表者] 神原 広平:1,4, [連名発表者] 井上 紗央里#:5, [連名発表者] 尾形 明子:1
1:広島大学, 2:向洋こどもクリニック, 3:関西学院大学, 4:日本学術振興会, 5:呉医療センター中国がんセンター

目 的
 我が国の高校生では,30.0~32.9%がカットオフ値を超える高い抑うつ(落ちこみ気分・興味の減退など)を有していることが示されている(山口他, 2009)。中でも,定時制高校に所属する青年は,不登校やいじめといった対人的問題を経験した青年が多く在籍しているため(島根, 2009),抑うつを抱えるリスクが高いと推察される。定時制高校生の抑うつリスクを検討したKambara et al.(2015)では,全日制の高校生よりも定時制の高校生は抑うつが高い傾向にあり,他者と適切に関わる能力であるソーシャルスキルが低いことが示されている。ソーシャルスキルの高さは抑うつの低さと関連することから(今津, 2005),ソーシャルスキルの向上を目指した訓練(以下,SST)を行うことは,定時制高校生の抑うつ予防に効果的であると考えられる。これまで,高校生に対する学級規模のSSTが実施され,その効果が示されているが (原田, 2014),抑うつ予防効果は検討されておらず,SSTがより有効であると考えられる定時制高校生を対象とした介入もなされていない。そこで本研究では,定時制高校生に対してSSTを実施し,その効果を検討することを目的とする。
方 法
対象者 定時制A高校の全ての介入に参加した1年生47名を介入群,定時制B高校の1年生24名を比較群とした。
介入内容 先行研究で行われた学級規模でのSST(石川他, 2010など)を参考に,「あたたかい言葉かけ」,「上手な頼み方」,「上手な断り方」からなる介入プログラムを作成し,授業時間を用いて計3回行った(週1回,45分)。
効果測定尺度 (1)抑うつ:CES-D(島他, 1985;20項目4件法), (2)ソーシャルスキル:ソーシャルスキル自己評定尺度短縮版(吉良他, 投稿中;20項目4件法),(3)対人関係へのネガティブな考え方:認知の歪み尺度(岡安, 2009;16項目4件法),を用いた。
手続き 介入群は,6月に質問紙を配布し(プレ),3週にわたって介入を実施した後,7月(ポスト)と10月(フォローアップ)に再度質問紙を配布した。比較群は,6月(プレ)と10月(フォロー)の時点で質問紙を配布した。
倫理的配慮 本介入は事前に学校長から介入と質問紙調査を行うことの同意を得ており,生徒には質問紙に回答する際に紙面にて説明を行い,回答が成績評価と関連せず,途中で回答をやめても構わないことを明記した。
結 果
 介入による個人の変化を測定するために,介入群において,時間を独立変数,各変数を従属変数とする階層線形モデルによる検討を行ったところ,時間による有意な変化は認められなかった。しかし,介入前の抑うつの高さによって変化の軌跡は異なると考えられるため,介入前の抑うつの平均値によって対象者を抑うつ高群と低群の2群に分割し,時間と抑うつ高低群の2要因を含めたモデルについて検討した。その結果,抑うつにおいて,2要因を含めたモデルが,時間のみを含めたモデルよりも適合度が高く(時間のみ:AIC=906.63,時間と群:AIC=841.63),交互作用が有意傾向であり(F(24.69,1)=3.98, p=.06),抑うつ高群ではプレからひと月ごとに-.89の変化傾向が認られた(t(24.72)=1.90, p=.07)。
 次に,介入群と比較群のプレとフォロー時点での得点の差を検討するために,時期と群の2要因混合分散分析を行った。その結果,ソーシャルスキルの総得点と,ソーシャルスキルの下位因子である「関係開始」において有意な交互作用が認められた(F(63,1)=5.45, p<.05; F(65,1)=5.01, p<.05)。単純主効果検定の結果,比較群においてのみ,プレからフォローにかけて得点の低下が見られた(p<.05)。また,抑うつにおいては,上記の抑うつ高群と比較群において交互作用が有意であり(F(34,1)=4.53, p<.05),抑うつ高群において有意な低下が認められた(p<.05)。さらに,ソーシャルスキルの下位因子と対人関係へのネガティブな考えの変化量を独立変数,抑うつの変化量を従属変数とする重回帰分析を,介入群と比較群のそれぞれで行った結果,介入群でのみ有意な関連が認められ(R2=.58, F(28,7)=7.77, p<.05),対人関係へのネガティブな考え方の低下と「関係開始」の上昇が,抑うつの低下と有意に関連していた(β=.77, p<.01; β=-.36, p<.05)。
考 察
 本結果から,SSTを実施することでソーシャルスキルの高さが維持され,結果として,抑うつの高かった生徒は抑うつが低下し,抑うつの低かった生徒はその状態が維持されたと言える。また,介入群でのみ対人関係へのネガティブな考えの改善と関係性を作るスキルである「関係開始」の向上が抑うつの低減と関連していたことから,SSTを実施することによって他者と関係性を築くスキルが高まることや,スキルの向上に基づいて対人関係への考え方が変容することが,抑うつ予防に有効であることが示唆された。

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