発表

3B-027

高次生活機能における抑うつ傾向高齢者と健常高齢者との比較—鹿児島県西之表市における「おきがる健康チェック会」から—

[責任発表者] 岡村 祐一:1
[連名発表者] 津田 彰:1, [連名発表者] 矢田 幸博#:2, [連名発表者] 橋本 正嗣:1, [連名発表者] 廣川 聖子:3, [連名発表者] 嶋田 純也#
1:久留米大学, 2:筑波大学, 3:岡山県立大学

目 的
 わが国の高齢化率がこれまでにないスピードで進んでおり,現役世代からの健康づくりが重要と言われている。鹿児島県西之表市では,住民の健康チェックのために「おきがる健康チェック会」を実施している。高齢化率も25年後の日本の将来を示しており,わが国の今後の健康を考える上で,参考となるだろう。
高齢者は,老化により身体機能や精神機能,心理社会的機能が低下することが知られている。特に高齢者における抑うつは,うつ病へ進行するリスクが高くなり,生活の質や日常生活動作(activities of daily living:ADL)が低下すると報告されている(松林ら,2009;Matsuda et al.,2008など)。高齢者の抑うつは老年期精神疾患の中で極めて発症頻度が高く(大内ら,2010),日常生活における様々な活動が消極的になる。基本的なADLが自身で保つことができる一方で,高次生活機能は困難を示し(Fujiwara et al.,2008),生活の質が低下することが報告されている。しかしながら,抑うつ傾向者は健常高齢者に比べ高次生活機能が低下しているのか明らかになっていない。
本研究は,抑うつ傾向の有無によって高次生活機能が異なるのか明らかにする。
方 法
調査対象者は,鹿児島県西之表市在住で,おきがる健康チェック会に参加された高齢者276名(男性63名,女性213名,平均年齢76.5±6.4歳)を分析対象とした。調査期間は,2017年1-5月である。
使用尺度は,老研式活動能力指標(IADL)(古谷野ら 1987)を用いた。IADL(13項目)は,高次の生活能力を評価する多次元尺度であり,手段的自立,知的能動性,社会的役割の3つの下位尺度から構成されている。また,より活動的な生活自立を測定可能なJST版活動能力指標(鈴木,2013)を用いた。4つの下位尺度により構成され,新機器利用,情報収集,生活マネジメント,社会参加を測定可能である。IADL,JST版活動能力指標ともに質問に対して,はい・いいえの2択で回答する。IADLとJST版活動能力指標を統合することで,一元的に高次生活機能を評価できる。
高齢者の抑うつ状態の評価のために,Geriatric Depression Scale 5(GDS-5)(鳥羽ら,2003)を用いた。抑うつのカットオフ値は2点以上で,抑うつ傾向と定義される。質問項目は,Googleフォームで作成し,タブレット(Diginnos DG-D10IW3S)を用いて,対面式で聞き取りを行いながら回答を行った。
結果と考察
抑うつ傾向者は19名(出現率7.4%)であった。抑うつ傾向の有無によって,高次生活機能が異なるのか調べるためにt検定と効果量(r)分析を行った(table1)。
 その結果,抑うつ傾向者は,社会的役割や社会参加といった社会的側面が有意に低下していた。このことから,友人や地域の人との交流が減少していることが示唆された。社会活動性が高いことが,高齢者の心身機能に好影響を及ぼすことが報告されており(小川ら,1993;安梅,2000など),抑うつ症状を併せてアセスメントする必要がある。
また,手段的自立が有意に低下していた。外出や買い物,食事の準備が難しいことが示唆された。これらの行動ができなくなると,基本的な生活レベルを保つことができず,最悪孤独死などにつながるリスクが高まると考えられる。
以上のことから,これまでできていた生活機能が困難になったりできなくなったりする場合は,生活水準が低下しているため注意が必要である。特に高次生活機能における社会的側面の低下を予防するための施策が求められており,早急な課題であると言える。本研究では,横断的研究であったため,抑うつによって高次生活機能が低下しているか明らかにできなかった。そのため,今後追跡を行い,抑うつ症状によって,高次生活機能が低下するのか明らかにしていきたい。

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