発表

3B-013

認知症の普及啓発活動の効果測定 -“視点取得(自分が認知症になったとしたら)”にもとづく顕在的イメージ測定尺度を用いた検討-

[責任発表者] 遠藤 忠:1
[連名発表者] 谷田 林士:2, [連名発表者] 岡 隆:3, [連名発表者] 村山 憲男:4, [連名発表者] 蝦名 直美:3, [連名発表者] 下垣 光:5, [連名発表者] 小野寺 敦志:6, [連名発表者] 長嶋 紀一:3
1:長野大学, 2:大正大学, 3:日本大学, 4:北里大学, 5:日本社会事業大学, 6:国際医療福祉大学

目 的
 認知症の普及啓発を促進させることは,認知症になっても住み慣れた地域において継続的に生活していけることを至上目標として喫緊の課題といえる。普及啓発活動の成果を検証するために,「認知症に対する態度尺度」を用いることは重要である。しかしながら,現状において認知症に対する態度尺度に関する研究は極めて少ないことがあげられ(金・黒田,2011),また顕在的態度尺度には社会的望ましさの影響を排除できないといった課題を有する(栗田・楠見,2014)。そこで前報では,この課題を最小限に抑制することを目的として「自分が認知症になったら」という視点取得にもとづく顕在的イメージ測定尺度の開発について報告した(遠藤・谷田・村山・岡・下垣・佐々木・蝦名・小野寺・長嶋,2016)。
本報告では,認知症の普及啓発活動に対する認知や参加および実践の効果について,前報の顕在的イメージ測定尺度を用いて検証することを目的とした。
方 法
 調査協力者 長野県に所在する福祉系事業所(9事業所)の従事者232名(男性77名,女性155名)であった。平均年齢は全体45.4歳(SD=13.7),男性43.6歳(SD=13.8),女性46.3歳(SD=13.6)であった。福祉職の平均経験期間は81.9か月(SD=81.1)であった。
調査項目 年齢,性別等の基本属性に加えて,(1) 普及啓発活動(表1参照)に対する認知や参加および実践の有無について回答を求めた。(2) 視点取得にもとづく顕在的イメージ測定尺度。本尺度は2因子(不安感,無力感)9項目(不安感の項目例:怖くなる,無力感の項目例:自分のやりたいことができなくなる)から構成され,回答方法は「ご自分が認知症になったら(軽度または重度のいずれか:認知症高齢者の日常生活自立度判定基準“ローマ数字2a”または“ローマ数字3a”に該当)」と想定させ視点取得をもたせたうえで,各項目に対し“そう思う”~“そう思わない”の5件法で回答を求めた。下位尺度の得点範囲は不安感4~20点,無力感5~25点であり,高得点な方がより肯定的であることを示す。本調査データにおいても前報同様に2因子構造と内的整合性および基準関連妥当性が確認された。(3) 金・黒田(2011)の態度尺度(今回も基準関連妥当性を検討するために用いた。)
手 続 き 各事業所で実施した研修会において,実施前または後に,各参加者に2種類(軽度または重度を想定させる)の調査票いずれか一方をランダムに配布し,回答後厳封して回収した。調査期間は2015年9月~12月。
分析方法 (1) 分析対象者の基本属性等や各尺度得点について記述統計を行った。(2) 認知症の重症度想定(軽度・重度)と各々の普及啓発活動への参加・実践の有無を独立変数,視点取得にもとづく顕在的イメージ測定尺度の下位尺度得点を従属変数とする2×2の分散分析を行った。
倫理的配慮 「長野大学研究倫理規程」に基づき,調査票は無記名とし,本調査以外の目的で使用しないことを明記した。回答は電子情報化し,厳重に管理することも明記した。回答者個人の結果についてはプライバシー保護のため,事業所にフィードバックをしないことを説明し同意を得た。
結 果 と 考 察
 1. 顕在的イメージ測定尺度の結果 認知症の軽度想定において無力感得点16.8点(SD=4.1),不安感得点7.9点(SD=3.9),認知症の重度想定において無力感得点12.8点(SD=4.4),不安感得点6.7点(SD=3.3)であった。
 2. 分散分析の結果(表1) 認知症の普及啓発活動のうち,「認知症に関する啓発活動に対する認知」では“あり”が“なし”に比べ,不安感得点および無力感得点が有意に高く,より肯定的であることが示唆された。また不安感得点において,想定させた重症度と「認知症についての自己学習」経験に有意な交互作用が認められ,単純主効果の検定を行った結果,軽度群において“あり”は“なし”に比べて有意に得点が低かった。このことから自己学習が不安感を増幅させた可能性が示唆され,自己学習のあり方について精査する必要があると考えられる。また無力感得点において,想定させた重症度と「認知症になった場合について友人・知人との話し合い」経験に有意な交互作用が認められ,単純主効果の検定を行った結果,重度群において“あり”は“なし”に比べて有意に得点が高かった。このことから友人・知人等の「他者と認知症に関する話し合いを持つこと」が,特に重度を想定した場合の自身の無力感を緩和する可能性が考えられ,普及啓発活動内容への導入の有効性が示唆された。

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