発表

3B-002

ポジティブな事柄への反応スタイルに関する調査

[責任発表者] 磯和 壮太朗:1
[連名発表者] 三宮 真智子:1
1:大阪大学

目 的
 ネガティブな気分や出来事に対してどのように反応するかは,抑うつの重要な予測因であり(反応スタイル理論:Noren-Hoeksema, 1991),これまで数多くの研究が行われて来ている。その一方で,ポジティブな気分や出来事に対する反応スタイルについては,これまでほとんど注意を払われてこなかった(Segerstrom, Stanton, Alden, & Shortridge, 2003)。
 この指摘を受けて,Feldman, Joormann,& Johnson(2008)は,ポジティブな気分や出来事に対してどのように反応するかを測定するResponse to Positive Affect(RPA)Questionnaireを開発している。この尺度は「減衰」「情動焦点型」ポジティブな反すう,「自己焦点型」ポジティブな反すうの3因子からなる。このうち「減衰」は,抑うつ的反すうを考慮した上でも抑うつを有意に予測していた。また,「自己焦点型」は,β=.19と弱いながらも躁を有意に予測していた。
 ポジティブな事柄への反応スタイルを研究することは,上述のような気分障害への理解を深めるだけでなく,健康や幸福促進の知見を得るうえでも有益である可能性がある。
 しかしながら,RPAの項目は西欧文化に特化しており,本邦にはなじまない可能性がある。また,本邦においてはポジティブな気分や出来事への反応スタイルの研究はほとんどなく,ポジティブな気分や出来事に人々がどのような反応を示すのかについて明らかになっていない。
 そこで本研究では,ポジティブな事柄に対してどのような反応を示すのかについて,反応内容の収集と整理を行う。

方 法
 被調査者 西日本の4年制大学生 103名
 分析対象者
  質的検討:調査に同意した102名
  (男性:30名,女性:72名,平均19.35(SD=1.16)歳)
  量的検討:調査に同意し,回答に欠損値のなかった90名
  (男性:26名,女性:64名,平均19.37(SD=1.18)歳)
 調査時期 2016年7月中旬〜8月初頭,及び12月初頭
 調査内容
0.フェイスシート:調査への同意,年齢,性別,学部,学年。
1.この1週間の間にあった,もしくは思い浮かんだ「いいこと」についての自由記述(1分間)
2.「いいこと」があったとき,「いいこと」が思い浮かんだときにどのように考えるか・行動するかについての自由記述
3.RPA(Feldman et al., 2008)の邦訳版(筆者らが邦訳)17項目・4件法と,それらの項目が「いいこと」があった時や思い浮かべた時に取る行動の網羅感に関する項目(1項目・2件法)
4.The Center of Epidemiological Studies Depression Scale(CES—D)の邦訳版(島・鹿野・北村・浅井,1985)
 倫理審査 所属機関の研究倫理審査を受けている。
結 果
 この1週間にあったポジティブな事柄(「いいこと」の量)については,のべ245件,平均2.34件(102名のデータ。うち,0件は5名)の回答があった。また,ポジティブな事柄への反応については,391件の回答(うち有効回答379件・除外12件)の回答があった。これを,第一著者を含む2名の大学院生によって整理した結果,1.「自動的反応」・2.「享受」・3.「分析」・4.「反すう」・5.「減衰」・6.「表出」・7.「運への帰属」・8.「継続の希求」・9.「未来への期待」・10.「行動の拡張」の10のカテゴリに分類された。これと反応スタイル理論の知見を合わせて,ポジティブな事柄とネガティブな事柄への反応についての仮説モデルを生成した(ポスター参照。)
 なお,RPAの邦訳版と「いいこと」の量,抑うつについて,基礎統計量の算出と相関分析を行った(Table 1)。また,RPAの網羅感は,52%の者が「網羅されている」と回答した。

考 察
 多くの学生は,すぐに思い出せる「いいこと」を保有していることが明らかになった。「減衰」と「自己焦点型」の尺度得点はいずれも床効果に近い低い値を示しており,本邦の学生はほとんどしない可能性が示唆された。
 本邦におけるポジティブな事柄への反応は10のカテゴリに分類される可能性が示唆された。

引用文献
Feldman, G. C., Joormann, J., & Johnson, S. L. (2008). Responses to positive affect: A self-report measure of rumination and dampening. Cognitive Therapy and Research, 32(4), 507.
Nolen-Hoeksema, S. (1991). Responses to depression and their effects on the duration of depressive episodes. Journal of abnormal psychology, 100(4), 569.
Segerstrom, S. C., Stanton, A. L., Alden, L. E., & Shortridge, B. E. (2003). A multidimensional structure for repetitive thought: what's on your mind, and how, and how much?. Journal of personality and social psychology, 85(5), 909.
島悟・鹿野達男・ 北村俊則・浅井昌弘 (1985). 新しい抑うつ性自己評価尺度について 精神医学, 27(6), 717-723.

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