発表

3A-081

有料老人ホーム入居者における中途覚醒とQOLとの関連性

[責任発表者] 橋本 正嗣:1
[連名発表者] 津田 彰:1, [連名発表者] 張 淑珍#:1, [連名発表者] 岡村 祐一:1, [連名発表者] 谷 佳成恵:1, [連名発表者] 米田 健一郎:1, [連名発表者] 加藤 孝:1, [連名発表者] 大杉 紘徳#:2, [連名発表者] 村田 伸:3, [連名発表者] 矢田 幸博#:4
1:久留米大学, 2:城西国際大学, 3:京都橘大学, 4:筑波大学

目 的
 睡眠は,脳や身体機能を健常に保つために必要不可欠であり,生活の質(Quality of Life ,QOL)を向上させるための基本的役割を担っている。
脳機能の加齢による変化は睡眠・覚醒に影響を与え,QOLに大きな影響を与えている(清水,2005)。また,高齢者のQOLは睡眠時間という量的な因子よりも質的な因子である主観的睡眠感の影響を強く受けることが報告され(白岩他,2013),中途覚醒の回数によって体の痛みや抑うつが異なることを明らかにしている(行岡他,2009)。
高齢期の施設入居は最もストレスフルな出来事でもあること(George,1980)を考慮すると,自分の意思決定で準備された入居であっても,新しい環境への入居は心理的不安を伴うことが予測される。高齢化率の増加に伴い,有料老人ホーム入居者数が増加していることから,有料老人ホーム入居者のQOL の維持向上をはかることが急務な課題となっている。 
しかし,これまで有料老人ホーム入居者を対象にした睡眠や精神機能の状態を明らかにした研究は,ほとんど行われていない。また,高齢者になると中途覚醒の回数が増加し,中途覚醒の回数によっては抑うつ状態に陥るにもかかわらず,中途覚醒の回数によってQOLを明らかにした研究は筆者が知る限りほとんどない。そこで本研究では,有料老人ホーム入居者の中途覚醒回数の多さによってQOLがどのように異なるのか,その関連性について検討した。
方 法
対象者:福岡市にあるN有料老人ホーム利用高齢者のうち,2015年4月,5月,8月,11月に実施した計4回の測定会のいずれかに参加した高齢者101名(男性31名,女性70名)を対象とする。平均年齢は76.7±9.3歳であった。
質問紙:年齢や性別などの情報を収集した後,主観的中途覚醒回数を行岡他(2009)をもとに評価した。中途覚醒の回数については,質問前の過去1ヶ月の平均状態を述べてもらった。QOLの評価にはMOS 8-Item Short-Form Health Survey (SF-8)を用いた。身体機能,日常身体的役割機能,体の痛み,全体的健康観,活力,社会生活機能,日常精神的役割,心の健康の8項目の下位尺度がある。また,身体的健康を評価する身体的サマリースコア(Physical Component Summary:PCS)と精神的健康を評価する精神的サマリースコア(Mental Component Summary:MCS)がある。SF-8は福原・鈴鴨(2005)により信頼性・妥当性が確認されている。
結 果
 中途覚醒回数とQOLの相関分析の結果,心の健康,MCSに有意に負の相関が認められた(p<.05)。年齢を共変量とした偏相関分析の結果,上に付随して有意に全体的健康感,活力,社会生活機能に負の相関が認められた(p<.05)。中途覚醒回数を回数によって,中途覚醒無(28名),1回(34名),2回(27名),3回以上(12名)に分類した。分散分析の結果,中途覚醒無の入居者は,中途覚醒3回以上の入居者と比較して有意に,社会生活機能(η2=.09),心の健康(η2=.10),MCS(η2=.09)が高かった(p<.05)。
図1に示す。
図1.中途覚醒回数とMCSとの関連

考 察
本研究では,有料老人ホーム入居者の主観的な中途覚醒とQOLとの関連を明らかにした。中途覚醒回数無,1回の社会生活機能,心の健康,MCSが中途覚醒3回以上に比べ有意に良好であった。年齢を共変量とした偏相関分析でも社会生活機能,心の健康,MCS,に負の相関が認められたことから,主観的な中途覚醒回数の多さの自覚は年齢にかかわらず,社会生活機能,心の健康,MCSの低下に関連することが示唆された。睡眠障害は社会生活機能を低下させること,主観的睡眠はQOLと関連があることが分かっている。これら先行研究において睡眠とQOLの関連が示されており,本研究でも同様に有意な関連がみられた。設備が整った有料老人ホームであっても,睡眠の質が重要であることが推察された。また,有料人ホーム入居中の高齢者では,中途覚醒回数の多さの自覚が身体的健康感よりも社会生活機能,精神的健康感の低下に関連することが示唆された。高齢者では,睡眠障害とうつ病との関連も示されており(田中他,2012),良好な睡眠の獲得がQOLの改善へつながる。

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