発表

3A-074

成人中・後期における死に対する態度と心理的well-being (2) 3年間の縦断的変化における関連

[責任発表者] 丹下 智香子:1
[連名発表者] 西田 裕紀子:1, [連名発表者] 富田 真紀子:1, [連名発表者] 大塚 礼#:1, [連名発表者] 安藤 富士子:1,2, [連名発表者] 下方 浩史:1,3
1:国立長寿医療研究センター, 2:愛知淑徳大学, 3:名古屋学芸大学

目 的
 成人中・後期において、死の主題に取り組むことは重要な発達課題の一つとなる。しかしながら我が国で死の主題の様相に関して実証した研究は少ない。本研究は約3年間の縦断的データを用いて、加齢において発達課題に適応するための心理的資源となることが示唆されている心理的well-being(Ryff et al., 2016)の変化と、死に対する態度の変化との関連について解明することを目的とした。
方 法
分析対象 「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の第7次調査(7th;2010.7-2012.7)・第8次調査(8th;2013.10-2016.2)に参加し、両回とも下記2尺度に回答した1848名(男性933名、女性915名。7th参加時で40-89歳、平均59.9±11.9歳)を分析対象とした。
尺度 (1)死に対する態度尺度(ATDS-A;丹下ら, 2013):「死に対する恐怖」(ATDS-A1)、「死後の生活の存在への信念」(ATDS-A2)、「生を全うさせる意志」(ATDS-A3)、「人生に対して死が持つ意味」(ATDS-A4)、「身体と精神の死」(ATDS-A5)の5下位尺度から成る。(2)心理的well-being尺度(PWB;西田, 2000):Ryff(1989)の概念に基づく尺度で、「人格的成長」、「人生における目的」、「自律性」、「自己受容」、「環境制御力」、「積極的な他者関係」の6次元から成る。
解析 死に対する態度と心理的well-beingの縦断的変化の関連を検討するため、潜在変化モデルを用いた解析を行った(下図参照)。まず測定時期ごとに、死に対する態度は項目得点から上記5側面をそれぞれ潜在変数として構成した。心理的well-beingは上記の6下位尺度得点(当該項目得点の合計点)を観測変数として、一つの潜在変数を構成した。そして死に対する態度5側面と心理的well-beingの各「レベル」(ベースライン)と「変化」を潜在変数として想定し、これらの相関係数を算出した。解析にはMplus ver. 7.4を用いた。
結 果
 結果を表に示す。「変化」同士の関連に注目すると、心理的well-beingの変化は、死に対する態度の中では「生を全うさせる意志」の変化と正方向の関連を示した。また、死に対する態度尺度内で、「死に対する恐怖」、「死後の生活の存在への信念」、「人生に対して死が持つ意味」の変化は相互的に正方向の関連、「死に対する恐怖」と「身体と精神の死」の変化は負方向で関連を示した。
考 察
3年間という比較的短期間での追跡データを扱った今回の結果からは、「心理的well-being」の感覚が強くなることが、死に対する態度の中でも特に「最後まで生き抜くという意志の強まり」という、生に重点を置いた側面の変化と連動することが示唆された。横断的研究においては、心理的well-beingと、死と生の両者に対する肯定的な態度の関連が報告されていることから(丹下ら, 2017)、「死に対する恐怖」などの死に焦点づけた側面は、より長期的な発達の中で心理的well-beingと連動する可能性も考えられよう。
また死に対する態度内で、死への恐怖が強まった場合、死後存在への民俗宗教的な信念や、死の有意味性の認識といった、死に関する認知の変化という対処を行う可能性が示唆された。今後、因果の方向性を特定する研究も必要となろう。
引用文献
西田 (2000). 成人女性の多様なライフスタイルと心理的well-beingに関する研究 教育心理学研究,48,433-443.
Ryff (1989).Happiness is everything, or is it? Explorations on the meaning of psychological well-being. Journal of Personality and Social Psychology,57,1069-1081.
Ryff, et al. (2016). Purposeful Engagement, Healthy Aging, and the Brain. Current Behavioral Neuroscience Reports, 3, 318-327.
丹下ら (2013).中高年者に適用可能な死に対する態度尺度(ATDS-A)の構成および信頼性・妥当性の検討 日本老年医学会雑誌,50,88-95.
丹下ら (2017).成人中・後期における死に対する態度と心理的well-being 日本発達心理学会第28回大会.

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