発表

3A-055

模写の正確性を高める升目の効果

[責任発表者] 佐藤 暢哉:1
[連名発表者] 藤山 北斗:1
1:関西学院大学

目 的
 模写の正確性を高めるための方法の1つに、描く対象と自分が描く紙の両方に、升目の線を引くというものがある(Edwards, 1979)(以下、升目の効果)。本実験の目的は、この升目の効果に関する実験を行うことによって、模写の正確性を高める要因について検討することである。まず実験1では、升目が有ることで模写の正確性が高くなるかどうかを確認する。実験2, 3では、見本を囲う外枠の大きさを変化させること、見本となる絵を升目によって分割することが、模写の正確性にどのような影響を与えるかを検討する。見本とこれから描く紙の両方に升目の線が引かれている時は、その線を基準として描く対象との距離を測ると考えられる。注意した箇所から周辺になるにつれて、情報処理の効率が低下するという注意の勾配モデル (Laberge, 1986) から、升目の線と描く対象との距離は近いほど情報処理の効率が高くなるため、模写の正確性が高くなると予測した。

方 法
実験参加者 実験1は10名、実験2は10名、実験3は13名であった。
刺激 実験1では、対象が描かれた紙と被験者が描く紙の両方に升目の線がある条件と、両方に升目が無い条件を設定した。升目数は4マスであった (Fig. 1左)。また実験2では対象を囲う四角形が大きい条件と、小さい条件を設定した(Fig. 2中央)。被験者が描く紙にも同じ大きさの四角形が描かれていた。実験3では升目の条件と四角形の条件を設定した。両条件の囲う四角形の大きさは同じであるが、升目の条件は四角形の中に十字線が引かれていた (Fig. 3右)。描く対象には全実験にて同じ猫のイラストを使用した。
手続き 手続きは全ての実験で同じであった。模写課題の前に、いくつかの禁止行為と許可された行為を被験者に教示した。模写は1回15分で行い、間に5分休憩を挟んだ。また、全く同じ大きさ、形のものを同じ位置に描くこと、15 分間でなるべく全てを描き切ることを教示した。採点は、見


Figure 1. 全実験の参加者の描く対象と条件(左が実験1、中央が実験2、右が実験3を示している)
本となる絵の輪郭に40箇所の点を打ち、被験者が描いた絵の輪郭の点との距離を測定した。それぞれの点における測定値の合計を誤差として算出した。

結 果 と 考 察
 全実験の結果を、Figure 2に示した。実験3では1名の誤差が外れ値 (±2SD以上) となり、1名が絵を描き切れなかったため、採用しなかった。実験ごとにt検定を行った結果、全実験で有意な差が確認された (実験1, t (9) = 2.63, p <. 05, 実験2, t (9) = 6.63, p < .01, 実験3, t (10) = 2.75, p < .05)。
実験1の結果より、升目がある時に模写の正確性は高くなることが確認された。また実験2では、四角形より外側に描くことは誤りであると被験者は容易に理解できる。そのため囲う四角形が小さい条件では、描く絵の全体の大きさが見本よりも大きくなりにくく、そのことが結果として回答となる点からの距離が近くなり、模写の正確性を高めたと考えられる。実験3においても、升目によって描く対象を分割することで模写の正確性を高めることができたと考えられる。さらに実験2, 3において、条件によって描く対象と升目の線との距離が変化していることが分かる。つまり、距離が長くなるほど視覚的な情報処理の効率が低下し、それによって模写の正確性が低くなったと考えられる。このことは勾配モデルと対応している。以上から模写の正確性を高める要因は、「全体の大きさ」「分割」「距離」であると考えられる。









Figure 2. 全実験における条件別の平均誤差(左が実験1、中央が実験2、右が実験3を示している)

引 用 文 献
Edwards, B. (1979). Drawing on the right of the brain. JP Tarcher, Los Angeles.
Laberge, D., & Brown, V. (1986). Variation in size of the visual field in which targets are presented: An attentional range effect. Perception and Psychophysics, 40, 188-200.

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