発表

3A-039

陰影のあるテクスチャ画像の回転と質感の知覚の変化──陰影の方向と凹凸パタンの知覚の変化──

[責任発表者] 佐々木 康成:1
[連名発表者] 坂東 敏博#:2
1:金沢星稜大学, 2:同志社大学

目 的
 物体の表面のざらつきや凹凸のパタンは,実際に触って感じるだけでなく,陰影を手がかりとして,視覚を介した刺激からも感じとることができる.一方で,その陰影をもとに知覚するとき,照明の当たり方の違い,つまり陰影の方向によって,その対象物の凹凸の知覚は変化する(Ramachandran, 1988).同じように,テクスチャ画像の陰影パタンとその質感の評価においても,照明によって形作られる陰影のパタンと方向が大きな役割を果たすことがある(佐々木・坂東, 2015).すなわち,人が知覚する物体の表面の質感は,その凹凸のパタンと照明の方向との関係によって様々に変化すると言える.そこで,陰影のあるテクスチャ画像を様々な角度で回転移動させて提示し,そのテクスチャから知覚される凹凸のパタンがどのように変化するかについて実験的に調べた.
方 法
参加者
 19 - 20歳の女子短期大学生の12名が実験に参加した.
画像刺激
 本研究では,陰影のある三次元テクスチャを陰影テクスチャと呼ぶ.陰影テクスチャは,三次元コンピュータグラフィクスのPOV-Ray(http://www.povray.org/)を用いたり,デジタルカメラで撮影した実際のテクスチャをグレースケールにしたりして作成した.表面の凹凸と上方約45゜からの照明によって形作られた陰影のあるテクスチャであり,二次元画像でありながら,三次元的なテクスチャとして知覚できることから,視覚を介して触覚的な質感が感じられる刺激であると言える.これらの陰影テクスチャを1024 × 1024 [pixel]で7種用意し,円形にトリミングした上で,各陰影テクスチャについて0゜から15゜ずつ345゜まで回転移動させた24枚の画像刺激を用いた.
装置と手続き
 実験参加者への刺激提示には,21.5型カラー液晶モニタEV2116W(EIZO製)を装置として用いた.画面の大きさは47.6 × 26.8 [cm],画素数は1920 × 1080 [pixel],パネル解像度は102 [ppi]であった.画像刺激は,実験参加者の前方約60 cmの位置に装置を置いて,ピクセル等倍で提示した.提示にはPsychoPy(http://www.psychopy.org/)で開発した心理実験用システムを用いた.
 実験参加者には,7種の陰影テクスチャを1種ずつ評価してもらった.各テクスチャの評価を行う直前には,0゜(正立)と180゜(倒立)の画像を左右に並べて提示し,その知覚される質感や凹凸パタンの違いを意識化して口述させた.画像刺激は,1枚を1試行として,0 - 345゜の24枚からなるブロック内で疑似ランダムで提示し,4ブロック96試行行った.1試行は,画像刺激の提示とその評価に対するキー押し反応からなり,当該テクスチャの正立と倒立の知覚のされ方のどちらに見えるかを判断させ,キーボードの上下矢印キーへの反応数を記録した.試行間間隔は0.5 sであった.
結 果
 本実験で用いた7種の陰影テクスチャの一つについて,参加者の知覚した凹凸パタンの質感の違いを図1に示した(ただし,正立と倒立の質感の違いを判断できなかった2名分は省いた).上方(0゜)と下方(180゜)それぞれの方向からの照明に対応した画像刺激を中心とした反応の分布が得られた.また,この傾向は,他の6種の陰影テクスチャにおいても同様であったが,反応の境界となる角度は全7種で大きくばらついた.

図1 画像刺激の一つに対する反応数の平均.

考 察
 陰影のパタンの知覚があいまいとなる角度の周辺を堺にして,カテゴリカルに反応する傾向が見られた.これは,生態学的に妥当な上方からの照明方向を仮定しながら陰影を知覚して凹凸のパタンを認知するしくみを示唆するものである.これらの傾向は,他の6種の陰影テクスチャにおいても同様であった.一方,陰影テクスチャの正立と倒立の画像から知覚される凹凸パタンの違いを判別できない画像刺激があることを報告した参加者もいた.また,陰影だけを手がかりにした凹凸パタンの質感の違いは,参加者間だけでなく参加者内でも特定の陰影テクスチャを見続けているときにも生じることが実験中に生じることがあった.このような頑健とは言えない凹凸パタンの知覚がどのように行われているのか,また,そもそも陰影の生態学的に妥当な知覚が困難な陰影テクスチャの画像特徴量にはどのようなものがあるのかなど,今後の詳細な分析が必要である.

 本研究の一部は,JSPS科研費25350032の助成を受けた.

引用文献
佐々木康成・坂東敏博 (2015). 陰影のあるテクスチャ画像の音韻による表現と感性評価. 第80回形の科学会シンポジウム 形の科学会誌, 30, 151-152.
Ramachandran, V. S. (1988). Perception of shape from shading. Nature, 331, 163–166.

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