発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-154

女性へのアファーマティブ・アクションは本当に社会正義か? 市場信頼尺度、政治的態度、およびワイナー原因帰属理論から検討する

[責任発表者] 小野寺 哲夫:1
1:立正大学

目 的
 内閣府男女共同参画局においては、「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置:ポジティブ・アクションとも呼ばれる)を、一般的には、社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対して、一定の範囲で特別の機会を提供すること等により、実質的な機会均等を実現することを目的として講じる暫定的な措置をいう(平成17年10月)」と定義されている。具体的には、1.「女性のみ」を対象とした優遇措置、2.男性と比較して女性を有利に取り扱う措置、とある。このように、いかなる理由があれ、「女性優遇をしてもいい」「女性優遇をしなさい」というメッセージを国家の下部機関が流していることを、国民はどのように考えているのだろうか?
 本研究では、女性に対するアファーマティブ・アクション(以下、AAと略す)について、日本国民はどのように考えているのかについて、ワイナーの帰属理論(1986)の恣意性(arbitrariness)次元に基づいて検討することが目的である。
 ワイナーは、1993年に「政治的イデオロギーと貧困について」の研究の発表以降、原因帰属過程に確実な影響を与えることが明らかになった政治的態度変数を帰属研究に正式に導入した。米国では、保守とリベラルであるが、本研究では、保守と左翼(革新)という分類で検討した。
 さらに、本研究では、自由主義経済学者のフリードリッヒ・フォン・ハイエクと同様、経済を「自由市場」を信頼して任せるのが一番良いと考える度合を測定する目的で開発された「市場信頼尺度」も検討した。一般に、保守は、自由市場を信頼し、小さな政府を支持する傾向があり、左翼(革新)は、市場を信頼せず、経済は国家が積極的に監視・管理し、介入するべきと考え、大きな国家=福祉国家=社会民主主義を支持する傾向がある。
方 法
調査対象者:大学2年生以上の男女173名(M=20.8歳、SD=1.24)。
質問紙法(リカート5件法:79項目)。フェイスシート、政治的態度尺度(保守・左翼)(小野寺、2014)、BIDR-J:自己欺瞞因子短縮版(谷、2008)、市場信頼尺度(小野寺、2014)、女性のAAに対する帰属評価項目(恣意性、公平感、納得性、賛成度、社会正義、推進すべき度合、社会的有益性の評価について7件法)を尋ねた。
手続き:AAに関しては、ワイナー帰属研究の手続きに基づき、日本の女性が就職試験において合格基準に達していなくても合格させているという女性優遇政策を行っている民間企業の事例を300字程度の物語にまとめて提示し、帰属評価してもらった。なお、調査対象者に十分な説明、倫理委員会における承認を得て行われた。
結 果
左翼的政治態度の高低2群に分け、AAに対する帰属評価項目について対応のないt検定を行った結果、全ての項目において有意差か有意傾向が認められた。左翼的政治態度の高群は低群と比較して、AAの恣意性を有意に低く評価し(t=3.045,
df=171,p=.003)、AAに対する公平感、納得性、賛成度、社会正義の感覚、推進すべき度合については有意に高く、AAの社会的有益性の評価については有意に高い傾向が認められた。
 保守的政治態度の高低2群間においても同様の分析を行った結果、保守的政治態度の高群は低群と比較して、AAの恣意性を有意に高く評価し、AAに対する賛成度、社会正義の感覚、推進すべき度合については有意に低く、AAの社会的有益性の評価については有意に低い傾向が認められた。以上の結果から、左翼的政治態度と保守的政治態度では、AAに対する恣意性の認知(帰属)の仕方から賛成度、社会正義、推進すべきか否かの評価が、先行研究同様正反対であることが示された。
 市場信頼尺度の高低2群間においても同様の分析を行った結果、全ての項目において有意差が認められ、市場信頼尺度の高群は低群と比較して、AAの恣意性を有意に高く評価し、AAに対する公平感、納得性、賛成度、社会正義の感覚、推進すべき度合、社会的有益性の評価については有意に低かった。
 AAの恣意性の認知(帰属)反応に基づき、対応のないt検定で検討したところ、全ての帰属項目において有意差が認められ、「AAは恣意的な政策である」と認知(帰属)されるほど、AAは公平でないと感じられ、納得も賛成もされず、社会正義に適わないと感じられ、推進すべきでないと判断され、社会的にも有益でないと評価されることが示された。
 最後に、ワイナー帰属理論の帰属→感情→行動の時系列的連鎖に照らして検討するために、ステップワイズ重回帰分析を行った結果、恣意性の認知(帰属)へは、市場信頼尺度(β=.452)と自己欺瞞因子(β=-.217)の2つの変数の影響が認められた(R2=.192)。公平感に対しても同様の分析を行ったところ、恣意性の認知(β=-.471)、市場信頼尺度(β=-.195)、左翼的政治態度(β=.183)の3つの変数の影響が認められた(R2=.407)。社会正義についても同様の分析を行ったところ、公平感(β=.619)と恣意性の認知(β=-.143)の2つの変数が影響を与えていた(R2=.506)。
考 察
AAについて、左翼(革新)は恣意性を低く評価し、公平的と感じ、社会正義にも適うと評価したが、保守は全てにおいて逆に評価した。そしてAAを社会正義と感じるか否かは、恣意性の認知(帰属)の仕方に規定される可能性が示唆された。

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