発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-153

日本型家族志向性尺度の作成

[責任発表者] 土肥 伊都子:1
1:神戸松蔭女子学院大学

目 的
 社会において女性・男性に期待された性格特性を個人が取り入れて形成される自己概念が、女性性・男性性である。これは、日常の対人行動の様式において何に価値を置くかなど、文化的要因によっても規定されると考えられる。特に日本人は関係性高揚動機(遠藤,1997)が高く、内集団の成員間の人間関係や役割意識を重要なものと考える(Yuki,2003)。そこで本研究では、人間関係の中から我が国に特有の家族関係を取り上げ、それに関する志向性を実証的に把握するために、日本型家族志向性尺度を開発し、これを第1の目的とする。第2の目的として、性別、年代、未既婚、同居の家族、夫婦の職業などと日本型家族志向性との関連について検討する。

方 法
 家族社会学の知見、および土肥(2003;2014)、伊藤・相良(2010)などの先行研究を参考に、現代日本の家族関係の志向性を表すと思われる項目を98項目考案した。さらに意味の重複や表現の明確さ、社会的望ましさの影響などを検討して、40項目の候補項目を選定した。
 次に、2014年7月、この候補項目と基本的属性、職業などについて、N調査会社の全国規模のモニター1,000名(20代から60代までの年代別×性別で各セル100名)にFAX調査を行った。教示は、「あなた自身が、次に示す夫婦の妻あるいは夫であると仮定して下さい。あなたは、その夫婦の形や生活について、どう思いますか。」とし、「よい」「まあよい」「あまりよくない」「よくない」の4件法(1〜4)で回答を求めた。高得点ほど、それらの志向性が高いことを示す。

結 果
 FAX調査の回答で得たデータについて因子分析(最尤法、プロマックス回転)し、スクリー・テストで3因子を抽出した。第1因子には、夫婦双方が個人として対等で自立的な関係を志向した項目が高く負荷したので、「自立的関係」とした。第2因子には、夫は仕事で妻は家庭といった固定した夫婦役割分担を志向する項目が高く負荷したので、「相互依存的関係」とした。第3因子には、夫婦が行動を共にせず関係も希薄だが生活のためにお互いが必要とする項目が高く負荷したので、「便宜的関係」とした。これらの因子に高く負荷し、かつ信頼性係数が高くなるよう項目群になるよう調整した結果、各因子6項目ずつの、計18項目を尺度項目とした。Table1はその18項目で因子数を3に指定して因子分析した結果である。
各下位尺度得点についての男女差をt検定した結果,自立的関係(t(998)=-4.59,p<.001)と便宜的関係(t (998)=-3.39, p <.01)は,女性の方が男性よりも有意に高く,相互依存的関係(t (998.8)=8.79, p <.001)は,男性の方が女性よりも高かった
 年代については、便宜的関係において主効果が認められた(女性F(4,495)=3.26,p<.05;男性F (4,495)=3.51,p>0.1)。男女とも40代で便宜的関係が最も高かったが、Tukey法による多重比較検定の結果,女性の40代が60代より有意に高く、男性は40代が20代、60代よりも有意に高かった。

考 察
 本研究では伝統的な夫婦の有り方である相互依存関係志向とともに、夫婦対等な自立的関係志向が因子抽出されたことから、日本でも家族の「個人化」が進行しつつあることが示唆された。便宜的関係の中に、形だけの夫婦でいることへの志向性は含まれず、さらに子ども中心の家族を志向する傾向も弱かったことから、いわゆる夫婦と子どもから成る標準的核家族というものが、規範として失われつつあるようである。
 下位尺度得点の男女差より、女性は夫と自立的関係でいることを希望するものの実現が難しいためか、便宜的関係も志向すること、そしてその傾向は40代で顕著であることから、その頃が女性のアイデンティティが揺れる時期なのであろう。 一方男性は従来のような相互依存的関係を志向し続けており、家族関係のとらえ方の男女間のずれの存在が明らかにされた。

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