発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-151

高校生の共食中の行動と心身の状況との関連

[責任発表者] 坂本 理香:1
1:敦賀気比高等学校

【目 的】
 家族との共食は家族の結束と安定性を高める効果を有し,青年期においては,逸脱行為の軽減,学校生活に対する適応につながる(M.Braun and B B Brown,2011白杉,2014)とされる。それは,家族との共食が社会化(適切なマナーと家庭の価値を学ぶ),つながり(日々の活動の話を分かち合う),計画(自分あるいは家族全員の将来の活動を話し合う)のための1つの文脈(M.Braun and B B Brown,2011白杉,2014)である所以であり,具体的には会話などのコミュニケーションを通してなされるものと考えられる。食事中のTV視聴や携帯電話の使用はそれを阻害し,共食の質を低下させている(足立,2012)とされる一方で,TVや携帯電話、パソコンなどを取り込んだ食卓が肯定される時代に突入したとする論(荒井,2007)も出現しており,その影響は実のところ明らかにされてはいない。よって本研究では,高校生を対象とし,共食と心身の状況との関連に3つの行動(会話,TV視聴,携帯電話の使用)による有意な差違があるかを検討することを目的とする。
【方 法】
1.調査の対象
 F県の私立高校1校に在籍する1年生213名(男子122名女子91名),2年生201名(男子125名,女子76名),3年生208名(男子120名,女子88名)のうち、欠席および 回答に不備のあった者を除いた586名(男子338名,女子248名)。なお,男子生徒のうち,寮生活の者が50名程度いるが,居住形態の確認は行っておらず,調査対象に寮生活の者も含まれる。
2.調査手続きと倫理的配慮
2010年5月/無記名式質問紙法/研究倫理の配慮:質問紙の冒頭に調査の目的と守秘義務の遵守について明記。名古屋大学大学院教育発達科学研究科研究倫理委員会の承認を得た。
3.調査(項目および集計と統計解析)
1)農林中央金庫(2006)東京近郊の高校生400人に聞く現代高校生の食生活〜家族で育む食〜(一部)2)青年用疲労自覚症状(小林・出村・佐藤,2001)3)日常生活主訴30項目(保健室利用者の主訴から作成)4)子ども用5領域自尊感情尺度・邦訳版(高山・佐藤正二・佐藤容子・前田,1992)6)親サポート尺度(服部・島田,2003)/SPSS Statistics19.0を使用した。
【結 果】
食事中にしていることのうち,「会話」「TVを見る」「携帯電話を使用する」についてそれぞれ「共食(朝食と夕食の共食頻度、共食の嗜好の合成変数)」との積による交互作用項を説明変数に投入した重回帰分析を行った。「共食」「会話」「TVをみる」「携帯電話を使用する」について中心化を行い,多重共線性の問題は回避された。「共食×TV」では交互作用効果は
認められなかった。男子の「共食×会話」から「親サポート感」に向かう負の標準偏回帰係数が有意であり,「共食×携帯電話」では女子の「疲労自覚症状」に向かう正の標準偏回帰係数が有意であった。そこで,男子の会話と女子の携帯電話使用についてそれぞれ高群(平均+1標準偏差)と低群(平均−1標準偏差)における「共食」と男子の「親サポート感」および「共食」と女子の「疲労自覚症状」の関連を検討する単純傾斜検定を行った。その結果,男子では,会話が少ない場合は,共食から親サポート感へ正の有意な偏回帰係数を示し、会話が多い場合は偏回帰係数は有意ではなかった。女子においては,携帯電話の使用が少ない場合に共食から疲労自覚症状への有意な負の偏回帰係数を示し,携帯電話の使用が多い場合は偏回帰係数は有意ではなかった。
【考 察】
男子では、家族そろっての食事機会が多いことや,家族がそろう食事の場を好ましく認知している場合は会話が少なくても,親に受け入れられているという認識は保たれるが,家族そろっての食事の機会が多くない場合は,会話の少なさが親サポート感の低さに影響すると考えられる。共食機会が少ない場合は,貴重な機会を逃さず,会話をしながら食事をすることが,親サポート感を高めると思われる。TV視聴がいずれの変数との関係性も低いという結果は,TVのついた共食の場が,心身の健康や食の認知に関して、負の影響を及ぼすものではないことを示す。近年、食事中の使用について問題となるのは携帯電話であり,女子の疲労自覚症状との関連が認められた。家族との共食が少ないことや,家族そろっての共食を好まない状況では,携帯電話の使用が少ない方が疲労自覚症状は高く,家族そろっての共食機会が多いことや,その状況を好む場合は,携帯電話の使用が少ない方が,疲労自覚症状が低いことから,家族と共に食事しているにもかかわらず携帯電話を使用することが,好ましくない状況であることが示された。
【引用文献】
足立己幸(2012).“だれかといっしょ”の共食はバランスのとれた食事のキーワード おとどけシステム食育推進協議会
荒井三津子,清水千晶,中矢雅明(2007).現代の食事作法−家庭の教育と新しい方向性−,北海道文教大学研究紀要,31,43〜53.
服部隆志,島田 修(2003).中学生における両親サポートとストレッサーに関する研究(1)〜親サポート尺度・ストレッサー尺度の作成〜, 川崎医療福祉学会誌,13,271-281.
小林秀紹,出村慎一,佐藤進(2001).青年を対象とした疲労自覚症状尺度の検討:自覚症状しらべとの関係,体育学研究,46,35〜46.
M.Braun and B B Brown(2011).Nutrition in Adolescence,Encyclopedia of Adolescence.白杉直子(訳)(2014).栄養 青年期発達百科事典  第1巻 発達の定型プロセス 丸善出版pp.32-43.

詳細検索
アプリバナー iPhone版,iPad版 Android版