発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-149

ポジティブイベントの継続的筆記による認知スタイルの変容

[責任発表者] 本多 麻子:1
1:東京成徳大学

目 的
日常生活で経験されるポジティブイベントはdaily upliftsと呼ばれている。拡張−形成理論(broaden-and-build theory)によると,ポジティブ感情は単に気分が良いだけではなく,心理的,身体的,社会的資源を拡張し,思考の幅を広げ,様々な考え方や行動に目を向けさせ,これまでになかったものを作り上げる(Fredrickson, 2001)。また,「ポジティビティ:ネガティビティ」には黄金比率(3:1)があり,ポジティビティはネガティビティの3倍を超えた場合に初めて人が繁栄するのに十分な量となる(Fredrickson, 2011)。本多(2014)は大学生を対象として,24時間以内(あるいはこの数日)にhappyだったできごとを週1回,15週間に渡って自由記述させることにより,大学生の日常的なポジティブイベントの構成要素と経時的変化を検討した。その結果,大学生の日常的なポジティブイベントは友人や家族などの人間関係に関連した内容と,食事や睡眠などの生理的欲求を満たす内容が中心であり,ほぼ一貫していた。本研究では本多(2014)と同様に24時間以内にhappyだったできごとを週1回,15週間に渡って自由記述させることにより,大学生の日常的なポジティブイベントの構成要素を検討し,継続的な筆記の実施前後における楽観性,悲観性,ポジティビティとネガティビティの割合(以下,ポジティビティ比とする)の変化を検討する。
方 法
調査時期 2014年4月9日から7月28日であった。
対象者 首都圏の大学生312名(男性178名,女性134名,平均19.4±1.4歳)に授業時間内に調査を行った。
質問紙 楽観・悲観性尺度(外山, 2013)とポジティビティのセルフテスト(Fredrickson, 2011)を用いた。
手続き 講義の最後に毎回配布するリアクションペーパーに「24時間以内(あるいはこの数日)でhappyだったできごと」について自由記述を求めた。1〜15回目の各講義で15回の調査を実施し,1, 15回目調査時に質問紙に記入を求めた。
分析方法 KHCoder(樋口, 2012)を用いて自由記述の計量テキスト分析を行った。全対象者のテキストデータについて,1〜15回の調査ごとにテキストマイニングを行い,共起関係からの探索として出現した語句のクラスター分析と共起ネットワークを求めた(樋口, 2012)。1回目と15回目の調査で行った質問紙から,楽観性得点,悲観性得点,ポジティビティ比の平均とSDを算出し,それぞれt検定を行った。各調査で抽出された語句の平均出現数を算出し,χ2検定を行った。
結 果
6回目調査の共起ネットワークを図1に示した。クラスター分析の結果から「友達」「久しぶり」「楽しい」「会う」がクラスターを形成した。「友達」「久しぶり」「遊ぶ」「行く」,「美味しい」「ご飯」「行く」の関連がそれぞれ強かった。質問紙について,15回目調査の楽観性得点は1回目調査よりも高い傾向があった(p< .10)。15回目調査の悲観性得点は1回目調査よりも低かった(p< .01)。各回で5回以上出現した15の語句についてχ2検定の結果,出現数の偏りは有意であり,「友達」の出現数が高かった(p< .01)。
図1 6回目調査の共起ネットワーク
考 察
日常的なポジティブイベントの継続的な筆記実施前と比べて,実施後に悲観性得点は低下し,楽観性得点は増加傾向であったことから,ポジティブイベントの継続的筆記は悲観性の低減と楽観性の増加という認知スタイルの変容をもたらした。これらの変容は心身の健康増進やパフォーマンス向上の点から望ましいものであるといえる。15回の調査を通して「友達」の出現数が最も多かった。本多(2014)と同様に,「友達」や「アルバイト」を中心とした人間関係に関連した内容と,食事や睡眠などの生理的欲求を満たす内容が大学生における日常的なポジティブイベントの主な構成要素であるといえる。
引用文献
Fredrickson, B. L. (2001). The Role of Positive Emotions in Positive Psychology: The Broaden-and-Build Theory of Positive Emotions. American Psychologist, 56, 218-226.
Fredrickson, B. L. (2011). Positivity. London : Oneworld.
樋口耕一 (2012). 社会調査における計量テキスト分析の手順と実際−アンケートの自由回答を中心に 石田基弘・金 明哲(編)コーパスとテキストマイニング 共立出版,pp. 119-128.
本多麻子 (2014). 大学生の日常的なポジティブイベントの構成要素と変容 日本心理学会第78回大会発表論文集 p. 1240.

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