発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-148

高年齢の建設作業者の危険認知特性

[責任発表者] 高橋 明子:1
[連名発表者] 高木 元也#:1
1:労働安全衛生総合研究所

目 的
建設業において,50歳以上の高年齢作業者は災害発生率が高いため(東京労働局労働基準部,2009),重点的な災害防止策を考える必要がある。作業者が作業現場の危険要因を認知する能力が低いと,労働災害に遭う確率が高まると考えられるが,高橋・高木・三品・島崎・石田(2013)では,高年齢作業者の危険認知能力が低い可能性が示唆された。高年齢作業の危険認知の特性が詳細にわかれば,有効な教育内容の立案が可能となるが,それらを検討した研究は見当たらない。そこで,本研究では,高年齢作業者と中年齢作業者の危険予知テストの結果を比較し,高年齢作業者の危険認知の特性を明らかにすることを目的とした。

方 法
実験参加者 大工職の高年齢作業者23名(62.1±3.6歳),中年齢作業者20名(42.8±2.5歳)。すべて男性。
刺激 作業場面の画像5場面からなる危険予知テストを作成した。テストに含めた危険要因は,低層住宅建築現場において労働災害の多い4作業(外部足場上の作業,脚立の作業,電動丸のこの作業,自動釘打ち機の作業)の不安全行動と不安全状態とし(高橋・高木・三品・島崎・石田,2013),各場面に3〜5箇所,合計20箇所設定した。
手続き 実験参加者にプロフィール(年齢,実務経験年数,職種,職位)を回答してもらった後,危険予知テストを実施した。危険予知テストは,一場面ずつ危険要因を尋ねた後,各危険要因のリスク,不安全行動の敢行率(危険要因が不安全行動の場合はその敢行率,不安全状態の場合はその状況での作業の敢行率)を尋ねた。さらに,回答しなかった危険要因について回答しなかった理由と,リスク,不安全行動の敢行率を尋ねた。最後に,上記4作業の作業頻度を聞いた。

結 果 と 考 察
 危険要因の平均正解数と危険要因を回答しなかった理由の平均回答数について,高年齢作業者と中年齢作業者とで比較した(図1)。その結果,高年齢作業者は,危険要因の正解数が中年齢作業者よりも有意に少なく,危険要因を回答しなかった理由のうち,「知らなかった」,「知っていたが気づかなかった」の回答数が中年齢作業者よりも有意に多かった。まず「知らなかった」の回答が多かったことから,高年齢作業者は中年齢作業者よりも危険要因に関する知識が不足していることが示唆された。また,「知っていたが気づかなかった」の回答が多かったのは,危険予知テストの各場面に複数の危険要因が含まれ複雑であったため,高齢者の視野周辺への注意配分が低下する特性(三浦,2005)が影響した可能性がある。本結果は危険予知テストの結果であるため,高年齢作業者が作業現場でも同じ特性を示すとはただちに言えない。しかし,高年齢作業者が危険要因へ注意を向ける訓練をすれば,危険予知テストの成績が上がり,作業現場でも早く危険要因を発見できるようになることが期待できるだろう。
 次に,危険要因のリスクについて,危険要因の項目ごとに「1.全く危なくない」から「5.非常に危ない」の5件法で評価を求めた。なお,危険要因を知らなかった場合はデータから除外した。その結果,20項目のうち1項目(釘打ち機使用中に壁の向こうに人がいる)のみ,高年齢作業者が中年齢作業者よりもリスクを有意に高く評価したが,19項目には有意差がなかった。このことから,危険要因の知識がある場合,年齢による主観的リスクにあまり差がないことが示唆された。
 また,普段の不安全行動の敢行率について,危険要因の項目ごとに「1.全くやらない」から「5.毎回やる」の5件法で評価を求めた。なお,「元々外部足場上での作業がない」など対象作業自体を普段やらないと回答した場合と,危険要因を知らなかった場合はデータから除外した。その結果,20項目のうち2項目(釘打ち機使用中に壁の向こうに人がいる,部材を手に持って電動丸のこを使用している)のみ,高年齢作業者が中年齢作業者よりも不安全行動の敢行率が有意に低かったが,18項目には有意差がなかった。このことから,危険要因の知識がある場合,年齢による不安全行動の敢行率にあまり差がないことが示された。
 以上から,高年齢作業者の特性として,知識不足や視覚的注意の低下が影響し,中年齢作業者よりも危険要因を発見できないことが示唆された。そのため,高年齢作業者には危険要因の知識を付与したり,危険要因へ効率的に注意を向けたりすることに重点を置いた教育訓練をする必要がある。

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