発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-147

就業環境と就業態度の要因が自発的職務改善に与える影響

[責任発表者] 浅井 千秋:1
1:東海大学

目的 Frese,Kring,Soose,& Zempel(1996)の個人的イニシアティヴや McAllister,Kamdar,Morrison,& Turban(2007)のテーキングチャージなど,従業員が職務上で自発的に行う組織目標と整合した達成や改善についていくつかの研究が行われてきたが,その規定因はあまり明確でない。本研究では,自主的目標と成果への努力(Q1 私は決められた仕事をするだけでなく自主的に目標や課題を設定して取り組んでいる。),業務に関する情報収集と自己関連づけ(Q2 私は自分の仕事の意義や組織目標との関連性をいつも意識しながら仕事をしている。),達成や改善に関する発想と提案(Q3 私は自分のアイデアをすすんで上司や同僚に提案している。)からなる自発的職務改善を取り上げ,その規定因を明らかにする。自発的職務改善に影響する就業態度として,情緒的組織コミットメント(Q8 私はこの会社のためにできるかぎり貢献したいと思う。),キャリア開発志向(Q9 私はキャリア目標をはっきりと持ちそれに近づこうと努力している。)を,就業環境として,上司エンパワーメント(Q12 私の上司は部下が自主的に問題を発見し解決策を考えることを尊重している。),上司の統制的管理(Q27 私の上司は、部下に対して明確な指示や命令を行っている。),組織エンパワーメント(Q19 私の会社では失敗を恐れずに積極的に行動することが重視されている。),キャリア開発支援(Q30 私の会社では、社員の能力レベルや職務のニーズに応じた教育訓練が受けられる。),業績主義評価(Q22 私の会社では個人の能力や仕事の成果が人事評価へ明確に反映する。)を取り上げた。就業環境の5要因には自発的職務改善に直接効果と2つの就業態度を通した間接効果があり,就業態度の2要因間には相互作用があるとの仮定に基づき,因果構造モデルを構成した。
方法 企業 5 社の正規従業員(企画・事務職,営業職,技術職/一般,係長,課長)に対して平成14年~15年に質問紙調査を実施,欠損値のない 372名を対象に分析を行った。8つの要因について質問項目を作成し(5段階尺度),因果構造モデルの妥当性を共分散構造分析によって検証した。
結果 5%水準で有意なパスからなる最終的な因果構造モデルと各要因間の因果係数を図に記す。キャリア開発支援と上司の統制的管理はどの就業態度にも有意なパスがなく,最終的なモデルから除外した。GFI=.89,AGFI=.86,RMSEA=.058,χ2=547.71(df=244,N=372, p<.01)で,ある程度適合度が得られた。
考察 自発的職務改善に対してキャリア開発志向からの強い影響があり,キャリア目標を持ち能力向上に努力する者ほど自発的に職務改善を行うことがわかる。情緒的組織コミットメントには直接効果がなかったが,キャリア開発志向を高めることを通して自発的職務改善を高めていた。上司エンパワーメントは自発的職務改善に若干の影響があり,上司が部下の革新的行動を促し自ら革新的行動を示すことが自発的職務改善を引き出していた。上司の統制的管理は自発的職務改善に影響を与えていなかった。組織エンパワーメントは,情緒的組織コミットメントに強い影響を与え,かつ上司エンパワーメントとの間に比較的強い相関(r=.61)があったことから,挑戦や革新が奨励され情報共有が行われる組織風土は,従業員の情緒的組織コミットメントを高めると共に,彼らの革新的行動を引き出す職場リーダーを生み出すことで自発的職務改善を高める重要な環境要因といえる。業績主義評価は,弱いが自発的職務改善に否定的な影響を与えていた。能力や業績に基づく評価・報酬は所与の職務への動機づけを高めるが,自発的改善を抑制する可能性もある。組織によるキャリア開発支援はキャリア開発志向を含め,いずれの就業態度にも影響がなかった。

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