発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-145

モノレール緊急停止時の適切な案内間隔の検討

[責任発表者] 高原 龍二:1
[連名発表者] 釘原 直樹:2
1:大阪経済大学, 2:大阪大学

目 的
 モノレール緊急停止時の案内方法に関する検討(高原, 2014)から,放送による案内と対面による案内では前者の方が案内者の社会的望ましさが高く認知されることが示された。実務の観点からは対面案内よりも放送案内の方が時間的なコストが節約できることになるため,効率的であるといえるが,その分の時間的な余裕をどう活用するかを検討する必要がある。そこで,本研究では,案内放送の時間間隔が乗客の不安や認知に与える影響を検討した。
 鉄道障害時の案内タイミングについては,駅での案内放送に関する研究(山内・村越・藤浪, 2009)から障害発生後10分程度という値が示されている。しかし,この値は乗客の期待を測定したものに過ぎず,実際に案内の間隔によって乗客の意識に差が見られるかは検討されていない。また,駅での案内放送と車内での案内放送では状況の違いも大きい。加えて,一般の鉄道と異なり,モノレールが走行中に緊急停止した場合は,扉を開けて退避することは不可能であることから,不安などのネガティヴな感情が発生することが予測され,案内の間隔によってこれらの感情がどのように変化するかを調べることは,実務にも有益な示唆をもたらすと考えられる。
方 法
参加者 大阪高速鉄道(株)および関連企業従業員19名(乗務に携わらない者),関西の私立大学学生20名を対象とした。
実験日時 2014年11月20日(木)18時00分〜20時30分に実験を実施した。
 手続き 参加者はモノレールの駅にて実験参加への同意書へのサインを行い,質問紙(A)に回答後,実験内で案内されることは本当に起こっていることだと思って一般の乗客のつもりで参加してもらうよう教示を受け,車両の窓が全て目張りされたモノレール車両内に誘導され,指定の座席についた。その際,参加者はランダムに2群に分けられ,同じモノレールの別車両にそれぞれ誘導された。
モノレールは通常の運行と同様に発車し,次駅に向かう案内を行いながら車庫に移動し,急ブレーキをかけて停車した。実際の災害場面に近づけるために,緊急地震速報の警報音,停車,緊急地震速報による停車放送,地震の発生(車外で待つ担当者らが車体を揺らす),車内燈の消灯の順に状況を展開させた。消灯の90秒後から案内放送を開始した。
 案内放送は,予め録音された3種類の状況説明から成っており,一方の車両では3分間隔で2回ずつ,他方の車両では6分間隔で1回ずつ流された(Table 1)。全ての案内放送が終了した後,放送で質問紙(B)への回答を求めた。回答時には,できるだけ状況を維持するために,最小限の電燈のみを点灯した。質問紙(B)への回答後,全ての電燈を点灯し,質問紙(C)への回答を求めた。その後,参加者は徒歩で駅へと誘導され,デブリーフィングを受けた。
尺度 質問紙Aでは特性不安(10項目選定),状態不安(10項目選定),一時的気分(徳田, 2007),質問紙Bでは状態不安,一時的気分,質問紙Cではデモグラフィック,案内の評価,案内者の印象,停車直後の状態不安(想起),停車直後の一時的気分(想起),車内環境の評価を測定した。また,各車両の参加者5名ずつに,光電式脈拍モニター(NISSEI HR-70)を装着させ,実験中の心拍を測定した。
結 果
 複数回測定した指標については案内間隔,時点を要因とした反復測定分散分析を,1回しか測定していない指標については案内間隔を要因とした分散分析を行った。状態不安は,乗車前に比べて停止直後(想起),案内後が有意に高い(ps < .05)ことが示されたが,案内間隔による差は確認されなかった。一時的気分の怒り,抑鬱,緊張,混乱は,乗車前に比べて停止直後(想起),案内後が有意に高く(ps < .05),混乱では停止直後(想起)に比べて案内後が高い(p < .05)ことも確認された。一時的気分の活気は乗車前に比べて停止直後(想起),案内後が有意に低く(p < .05),乗車前の段階で3分間隔案内の群が有意に高い(p < .05)ことが確認された。案内者の印象においても有意な差は確認されなかった。
 心拍数については,緊急停止時までの平均心拍を1とした各段階での平均心拍を求めたが,案内間隔による差は確認されなかった。また,1名を除いて緊急停止による心拍変動も確認されなかった。
考 察
案内間隔による影響は確認されなかった。本実験では,他の参加者との会話やスマートフォンなどの使用は控えるよう教示がなされており,実際の災害状況と異なり何もせずに待つことが求められるため,案内間隔は過大に評価されることが予測される。そのため,3分,6分間隔の比較結果をそのまま実務に応用することはできないと考えられるが,情報量が同じであれば,短い間隔で頻繁に案内する必要性があるとはいえないものと解釈できる。
 なお,乗車前の段階で活気に差が見られたことより,無作為割り当てが失敗している可能性が示唆されることや,実験操作の不安喚起効果に関して,心理尺度と心拍データの変動が食い違うことから,今後の課題として実験方法の改善が求められる。
引用文献
高原龍二 (2014). モノレール緊急停止時の案内方法による乗客の心理の違い—適切な案内方法の検討— 日本パーソナリティ心理学会 第23回大会 発表論文集, 91.
徳田完二 (2007). 筋弛緩法における気分変化 立命館人間科学研究, 13, 1-7.
山内香奈・村越暁子・藤浪浩平 (2009). 輸送障害時の旅客向け駅案内放送の改善に向けた検討 鉄道総研報告, 23, 53-58.

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