発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-143

保育系大学生の読書に関する分析 -2012年大学生読書調査結果から見出される読書の傾向について-

[責任発表者] 平山 祐一郎:1
1:東京家政大学

目 的
 平山(2015)は、2006年と2012年に大学生を対象とした調査を行った(前者は6大学1184名、後者11大学2169名)。そして、1)読書量の低下(不読者の増加)、2)4つの読書動機(娯楽休養・錬磨形成・言語技能・影響触発)、3)2つの読書時間帯(ゆとり時間・すき間時間)を主な結果として見出した。
 現在、保育現場では読み聞かせが盛んに行われている。その際、保育者自身の読書経験や読書傾向が、絵本の選択や読み方、保育への活かし方に影響していることが予想される。2012年調査の回答者の中に一定数の保育者養成課程にある大学生が確認できたため、保育系学生の読書について把握することを本研究の目的とする。
方 法
【調査時期】2012年6月 【調査対象】北海道・東北・関東・東海・関西・中国・沖縄の11大学2169名 【質問紙】回答者が数値を書き込む「数値記入項目」と数値を評定する「数値評定項目」からなる質問紙。 【調査手続き】質問紙の配付・実施・回収等は各大学の教員に依頼した。「このアンケートは『読書』に関するものです。教育や研究にとって非常に重要な調査です。回答結果は全て数値化され、統計的処理をしますので、回答者が特定されることはありません。また、この結果は学会発表や報告書、あるいは論文にて公表し、教育や研究に役立てる予定です。強制的な調査ではありません。ぜひ回答をしていただき、ご提出いただければ幸いです。」という教示を行った。また、「『読書』や『本』という場合、マンガや雑誌、教科書は除いて考えてください。」とした。
結 果
【分析対象】回収された質問紙のうち、欠損値を含むもの、回答指示にそっていないものを除くと、1822名であった。保育系学生は全て女子学生であったため、G1:「保育系(女子)」、G2:「非保育系(女子)」、G3「非保育系(男子)」の3群に分けた。それぞれ、290名、867名、665名となった。【従属変数】12の変数を検討した。平均値・標準偏差は表1に示した。【中央値の検定】数値記入項目(Q1-Q6)では、平均値に対して、標準偏差が大きいこと、また、3つの群の人数差が大きいことから、数値評定項目(D1-D4,J1,J2)も含めて、中央値検定を実施することで、群間の比較を行った。[Q1:1週間の読書日数] 中央値G1:0, G2:0, G3:0。 期待値に対して、「>中央値」(中央値より上の値を取る度数)はG1が少なく、G2が多かった。 [Q2:1日の読書時間(分)] 中央値G1:0, G2:0, G3:0。期待値に対して、>中央値はG1が少なく、G2が多かった。 [Q3:5月の読書冊数]中央値G1:1, G2:1, G3:1。期待値に対して、>中央値はG1が少なく、G2が多かった。 [Q4:1日の携帯電話使用時間(分)]中央値G1:120, G2:120, G3:90。期待値に対して、>中央値はG1が多く、G3が少なかった。 [Q5:1日のテレビ視聴時間(分)]中央値G1:60, G2:60, G3:60。期待値に対して、>中央値はG1が多く、G3が少なかった。 [Q6:1日のパソコン使用時間(分)]中央値G1:20, G2:30, G3:60。期待値に対して、>中央値はG1が少なく、G3が多かった。 [D1:「娯楽休養」読書動機得点]中央値G1:23, G2:24, G3:22。期待値に対して、>中央値はG2が多く、G3が少なかった。 [D2:「錬磨形成」読書動機得点]中央値G1:16, G2:17, G3:17。人数の偏りは有意でなかった。 [D3:「言語技能」読書動機得点]中央値G1:12, G2:12, G3:12。期待値に対して、>中央値はG2が多く、G3が少なかった。 [D4:「影響触発」読書動機得点]中央値G1:21.5, G2:19, G3:17。期待値に対して、>中央値はG1が多く、G3が少なかった。 [J1:「ゆとり時間」読書得点]中央値G1:24, G2:26, G3:23。期待値に対して、>中央値はG2が多く、G3が少なかった。 [J2:「すき間時間」読書得点]中央値G1:19, G2:20, G3:19。人数の偏りは有意でなかった。
考 察
携帯電話使用(Q4)とテレビ視聴(Q5)は、保育系学生(女子)が非保育系(男子)より多い傾向にあった。一方、パソコン使用時間(Q6)は逆の傾向であった。どのようなテレビ番組を見ているかを今回は分析していないが、将来保育者になるにあたって、子どもや保護者と共通の話題を持つ上では、この程度のテレビ視聴はあってよいだろう。やや、携帯電話の使用が多いようだが、これもコミュニケーションへの意欲とみなしてもよいレベルではないか。また、保育者になるための学習において、パソコンの利用が求められていないことが判る。
 ただし、Q1-Q3の結果から、保育系学生(女子)は非保育系学生(女子)に比べて、読書量がやや少ない。子どもと豊かな読書を共有するためにも、より本に親しむべきであろう。だが、「影響触発」読書動機(D4)が高いことは、本に関して、周囲に目が向いていることを示しており、適切な本の提供や読書情報の提示によって、読書の活性化が可能であろう。
引用文献
平山祐一郎 (2015). 大学生の読書の変化 -2006年調査と2012年調査の比較より- 読書科学,56(2),55-64.

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